現場報告③
若年女性の就労体験カフェの活動を通じて

講演者
小園 弥生
男女共同参画センター横浜南管理事業課長
フォーラム名
第74回労働政策フォーラム「アンダークラス化する若年女性Part2~支援の現場から~」(2014年6月21日)

横浜市の男女共同参画センターで働いています。20年前は女性センターと呼ばれており、私はずっとそこで女性たちの場をつくる仕事をしてきました。

当初は主婦の再就職支援から始まり、次にDV被害女性や母子家庭の母の就労支援をするようになりました。2006年頃から横浜では、先駆的な若者支援が始まりましたが、女性は特有の問題で社会の中でみえづらく、彼女たちこそ本当に困っているのではないかと予見していたので、若年女性支援のプログラムを起ち上げました。

たとえば婦人科系の病気や不調、或いは母との確執など。家庭内では介護や小さいきょうだいの世話などもあります。私たちはよこはま若者サポートステーションと連携してきましたが、サポステでは私たちとの連携によって、女性が社会や家族の中で期待される、あるいは期待されない役割があり、それが、女性が働くということをすごく複雑にしていると気づいたそうです。

自助グループの支援などに取り組んできた男女共同参画センターでは、グループ型支援を得意としており、その中では、人が人の中で生きる力を取り戻していくということを大切にしてきました。女性だけの安心できるグループの中で、同じ悩みを持つ仲間に出会って、段階をゆっくり進んでいく。そういう場を開くことによって、個別相談を行っているサポートステーションとの連携で支援の方向性を互いに(支援者同士、機関同士)見出し、明確化してきたという実感があります。

このような支援を起ち上げるに当たり、まず根拠を持ちたいと思い、2008年度に若年女性の生活状況調査を行いました。当事者に尋ねる調査だったのですが、そこでは、いじめ、鬱、親の支配や過剰な期待、暴力など、重層的にいろいろな困難を経験している人が多いことがわかりました。

短期間の非正規雇用に就いたり辞めたりを繰り返している人が多く、結婚や将来の暮らし方がみえない、わからないという答えもすごく多かった。ただそのような状況でも、対人関係が苦手、怖いと言いながらも、何とかして働きたいと多くの女性が回答していました。そこを何とかして支援し、一緒にやっていきたいと思いました。

就労支援の流れですが、約1カ月かけてゆっくり通える講座(11日間)を年間2コース実施しています。その後、ボランティアで社会参加体験などをする場合もあります。

第2段階として私たちの現場で運営しているカフェでの就労体験を用意しています。受け入れにあたっては、若者サポートステーションなどの支援機関で個別サポートを受けることが必須条件です。その後は一般就労へと進むか、福祉制度を利用し障害者手帳を取得して障害者枠での就労などに進む人もいます。

この講座を「ガールズ編しごと準備講座~働きづらさに悩むあなたへ~」という名称で始めたのが2009年です。10時15分~正午までと、少しゆっくりした朝の時間に通います。定員20人で、15歳から39歳のシングルの女性、子供がいない人(シングルマザーの支援は別にありますので)、そして学校や職場などの所属がない人を対象にしました。特徴は、個別相談ではなくグループ型の講座を入り口としたこと。また頭で考えるのではなく、身体面からのアプローチ(心身のケアなど)を大切に、緊張をほぐして安心感と自己肯定を持てるような環境づくりをしたこと。そして社会には様々な資源やサポートがあることを知ってもらい、社会とつなげることです。

講座を繰り返し運営する中で、すぐに履歴書を書いてハローワークに行って一般就労へと進むのはなかなか難しいということが分かったので、就労体験の場をつくることにしました。たまたま空いたカフェコーナーを事業展開に使用するという横浜市の方針があり、就労体験のカフェをつくりました。「めぐカフェ」という名前にし、ブログを開設し、メニューを考え、準備しました。2010年11月の開店以来、地場野菜を使った体に優しいスープのランチを提供しています。月、火、水、木の週4日、営業しています。

対象は講座の修了者あるいは若者サポートステーションからの紹介を受けた女性で、主治医がいる人であれば主治医が了解していることが条件。一般客が来る下町の公共施設の中のカフェということで、雇用でなく見守りのある中間的就労という位置づけです。

体験の内容は2段階のステップに分かれており、一人ひとり困難な状況が違うので、最近は受け入れ人数に枠をもうけています。

「時間を守る・声を出す」などのソーシャルスキルトレーニングから入り、「人の中でチームで動く」という体験をして、「サービスを提供する側になる」ということを、くり返し伝えています。野菜の販売体験をしたり、カフェの実習をしたり、レポートを書いて発表するなどしています。

「めぐカフェ」就労体験者は昨年末までに61人になりました。平均年齢は26.3歳で、働いた経験がない人が14人(23%)、学校を中退した経験のある人も同数(23%)でした。就労体験の後、何らかの就労をした人(「めぐカフェ」でアルバイトになった人も含む)は44%になっています。

こうした就労支援の活動の中で、自立とは何だろうということを常に考えてきましたが、助けを求めることができればいいのではないか、と思っています。一人ひとりが使える資源をパッチワークのように組み合わせてサバイバルしていくことが自立なのではないか。安心できる場を提供し、少しずつ自信をつかんでもらって、自分で選べるような支援をしていきたいと思っています。

(※専用サイト「働きづらさに悩むガールズ応援サイト新しいウィンドウ」)