現場報告①
「よりそいホットライン」の活動を通じて

講演者
遠藤 智子
一般社団法人社会的包摂サポートセンター事務局長
フォーラム名
第74回労働政策フォーラム「アンダークラス化する若年女性Part2~支援の現場から~」(2014年6月21日)

「よりそいホットライン」という厚生労働省と復興庁の補助金を受けた事業を2011年度から運営しています。「よりそいホットライン」にかかってくる電話の数は1日4万件ほどです。本日は、性暴力やDV(ドメスティックバイオレンス)など女性の相談、特に10代~20代の女性からの相談についてご紹介したいと思います。

「よりそいホットライン」の一番の特徴は、電話を聞くだけではないという点です。どのような相談でも受け入れるので、聞いた相談員が解決方法が分からない時がありますが、本人の同意があれば、こちらで調べて折り返し電話をします。

また「同行支援」という特徴もあげられます。生活困窮やDV被害の深刻な場合や自殺未遂など緊急対応を要する時は、たとえば東京で受けた電話相談が神奈川県で発生した事例であれば、神奈川県にある連携団体に連絡をとり現場に行っていただくとか、翌日に交番の前で会う、または市役所の前で会って食料を渡すとか、そうした緊急対応をすることもあります。

主に暴力に関する女性専門ラインへの架電件数は1日1,600件程度ですが、このうち10代~20代の若者からの相談は約2割です。相談内容は精神的DVがトップで、DVと性暴力被害の相談は全体の6割程度となっています。

2013年11月1日から30日までの654件について集計した結果を紹介します。年齢層は30代から40代が多く6割以上を占めています。相談内容は性暴力やDVで、性暴力については過去に受けた性虐待が解決できないという悩みが一番多くなっています。また仕事に就いている人は約3割ですが、その中の4割以上が非正規雇用で働いています。そして全体の4割ぐらいが精神的な疾病を抱えています。

相談先(過去・現在・未来)を尋ねていますが、未来の相談先=これから行くつもりという場所のトップが病院で、警察も多いです。

次に、子供に対する被害について紹介しますと、女性の専門ラインに寄せられる1日1,600件のうちの約6割がDV被害で、その6割ほどが子供に対する被害でした。児童相談所に保護されている子供たちの中で、性虐待の事案は大体年間3%ぐらいだったと思いますので、DV家庭の子供に対する性虐待というのは非常に多いのです。

2013年10月1日から12月31日までの3か月間、女性専門ラインに寄せられた相談のうち、10代~20代の若年女性の相談内容を集計した結果を紹介します。集計すると、10代は「DV被害」23.5%、「性暴力被害」41.5%なのに対し、20代は「DV被害」40.9%、「性暴力被害」29.9%と、10代が性暴力のターゲットに晒されていることがわかります。

若年女性に共通する特徴として、自分が悪いと思い込んでいることがあげられます。いま、インターネットでの出会いをキッカケとした性暴力被害や脅迫などが非常に増えています。内閣府による男女間暴力調査という3年毎の調査がありますが、日本国内の強かん発生率は8%前後で推移しています。つまり女学校であれば50人のクラスで4人くらいが被害に遭っているということになります。そして強かんの加害者が「知人」というケースが76.8%と、見知らぬ人の方が少ないのです。今回、ホットラインに寄せられた若年女性の相談の集計結果をみると、総数はとても少ないのですが、10代でもDVを受けていると認識している女性たちがいます。そしてDVの中でも10代は性暴力が多く、20代になると精神的な暴力が多くなっていきます。10代は避妊に協力しないケースが非常に多く、20代では、たとえば、同棲相手から「写真をばらまく」と言われるようなリベンジポルノが横行し、そのことで脅迫され悩んでいる人が多い。結婚しているか否かに関係なく、親密な関係、性的な関係にある相手からの暴力というのは非常に厄介で、女性たちには「自分が選んだ人だから」など自責の念があり、抜け出しにくくなっています。ですので、相談対応の時はまず、「それは暴力(DV)だから、あなたは悪くない」と説明することが多いです。

また10代と20代の違いは、10代の方が痴漢や性虐待、強制わいせつが多いという点です。性虐待の加害者で一番多いのは実父です。義父や母親の恋人、親戚の男性なども多い。ですので、彼女たちは相談にも行かないし、その後自分の中にあるものを消化しきれず自殺行動に走ったり、周囲から理解できないような行動をとったりして、なかなか支援の手が回らないという実態があります。

性虐待の後遺症はとても根深く、今まで口にできなかった、誰にも打ち明けられず助けてもらえなかったという人が多くいます。仮に児童相談所に一時的に保護されても「(親が)もうしないと言っているから」とか「おばあさんがいるから」との理由で家に帰されてしまうことも少なくありません。

家に帰っても話せる大人がいない、大人を信用できない子どもが多い。身の回りに話せる大人がいて「よし、来い」と言ってくれたら絶対に変わると思うのですが、家を出た後、薬物依存や売春的な行為に追い込まれてしまうケースも残念ながらあります。

このような多様な暴力被害は性搾取であると考えます。弱いと見たら性的にもすべてを搾取する。10代の子供たちの周りには、隙あらば搾取しようという卑劣な人間が本当に沢山います。彼女たちは正しい知識や情報を与えられないまま自分が悪いと思い込み、PTSDや鬱、リストカットや摂食障害など(周囲の大人たちには理解されない)さまざまな不調を来たし、将来に希望を持てない状態に陥ってしまう。就職して働いたり、他人と対等な関係性を築くといったことが非常に難しい現実があります。