報告「高齢者雇用」
継続雇用等をめぐる高齢者就業の現状と課題

配付資料(PDF:129KB)

私どもの研究報告として、最初に、高齢者の就業問題についてご報告させていただきます。資料はお手元に配ってあるワード文章を見ていただければと思います。

このお手元の資料をめくっていただきまして、2ページ目、3ページ目に、研究の概要と報告書の構成が書いてございます。私どもは「人口減少下における全員参加型社会の在り方に関する調査研究」というプロジェクトの中で、特に高齢者について先行して研究を進めております。これは、高齢者はご案内のとおり、団塊の世代の方が2007年から60歳を迎えると。また2010年には65歳を迎える、さらに年金の支給開始年齢がどんどん引き上がっていっていると。こういった中で、一方で人口が減っている中で高齢者の方をいかに活用していくかと。幸い日本の場合、高齢者の方は非常に就業意欲も高いですし、高齢者の能力も、会社がいろいろと工夫すればまだまだ十分生かせるのではないかと。ですので、そのための高齢者が働けるような環境整備について喫緊の課題として研究を進めているということで、今回報告をさせていただきます。

3ページ目、報告書の概要でございますが、今回は継続雇用等をめぐるということで、企業調査を2008年に行いました。その結果を中心に報告させていただきます。ただ、この報告書の方は、3ページ目を見ていただくとわかるのですが、企業調査の分析のほかに、高齢者の個人調査、これは厚生労働省の調査を使いまして、就業企業や職業経歴、健康と就業といった分析も行っております。また、EU諸国の高齢者雇用の現状について展望しまして、そこから得られた資産というのも書き加えていると。そういう点では、報告書自体は盛りだくさんな内容になってございます。3ページ、4ページはその概要でございますが、これは後でまた改めてご紹介させていただきます。

その前に、まず5ページ目から、簡単に企業調査の分析結果の知見についてご紹介させていただきます。

まず最初は、やっぱり継続雇用とか、定年延長とか、そういった高齢者の雇用を確保していくと。その場合、やはり賃金制度とか、人事制度とか、そういったものが非常に影響してくるということで、1章や2章は、そういった賃金、人事制度がどう影響しているかを分析したものでございます。まず5ページ目でございますが、賃金カーブが年功的なカーブかどうかが影響しているかを分析してみました。この5ページ目の数表の網かけのところでございますが、賃金カーブというところが「−4.2」となってございますが、これは賃金カーブが急であると、そういった定年の上限年齢が低くなると。逆に言うと、賃金カーブを寝かしている場合は、定年上限が高くなっていると。つまり、会社としては、定年年齢の制度を上げる場合に、やはり賃金制度を見直して年功制を緩めているという結果がうかがえるということになってございます。これは、規模別にしたのは、その下にちょっと数字が書いてあるのですが、大企業、中小企業とも、やっぱりそういう傾向が見られるということがございます。

また、賃金制度以外にも幾つか特徴みたいなのがありまして、規模が大きい会社のほうが、定年年齢の制度的には上限を設定しているといったようなことがうかがえます。

その次のページ、6ページ目でございますが、今度は継続雇用制度を導入している場合に、やはり継続雇用の上限年齢を65歳とかに引き上げている場合についてはどういった特徴があるかについて見たものでございます。こちらは、その数表のところの賃金カーブというところを見ていただきますと、「−2」となってございます。こちらのほうの賃金カーブが高いと年齢が低くなると、賃金カーブを寝かしている場合にやっぱり上限年齢での継続雇用も上がると、そういう傾向になってございます。こちらについても、規模が大きい会社で継続雇用の上限年齢というのは割と高く設定しているといったような特徴がございます。

また、大卒の割合が高いと定年制も、継続雇用も、比較的上限年齢を高く設定していまして、比較的人的資本が豊富な場合は、制度的に年齢を上げて活用しようとしていることも示唆されるのではないかと、一応うかがえるカーブとなっています。

このように、年功制を緩めて継続雇用とか、定年制の制度を上げていくと、年齢を上げていくということが、賃金制度の見直しも考えられるのですが、片方で、賃金カーブの設定というのは、高齢者の就業意欲とか、生活とか、いろんな側面がありますので、多面的に考えて決定しないと、なかなか一朝一夕にはいかない難しい面があると、そういったことが後ろのほうの分析でも出てきます。そういう点で、制度設計の運用の仕方とか、つくり方というのが非常に鍵ではないかということが、今回の研究からもうかがえております。

続きまして、7ページでございますが、こちらも60歳以降の継続雇用について、定年の上限年齢とか、あるいは60歳以降の継続雇用の比率を踏まえた賃金制度の話とか、あるいは、それ以外の雇用管理がどう影響しているかといったような点について分析をしています。ここに書いてございますが、ここでは賃金の年功度の関係とか、賃金の制度の場合とか、公的給付の利用の関係、あるいは会社の労働需要とか雇用管理、そういったものがどう影響しているのかを多面的に見ております。

先ほどちょっと年金の話を申しましたが、これから年金の支給開始年齢が引き上がっていくと、それに対して会社としてどのような対応を行う予定かというのを今回アンケート調査で聞いております。これは、60歳以上の従業員の公的給付の受給者有無及び支給額変更時の対応というものでございます。これを見て非常に興味深かったのが、支給額が変更になった場合、過半数の会社が賃金は特に変更しないと答えていることです。そういう点では、公的給付、ここでは在職老齢年金とか高年齢雇用継続給付について、制度変更があっても、会社としては特に対応しないということがうかがえると。ただ、一方で、わからないと回答している会社も3分の1ございまして、そうすると、ちょっとまだ十分検討が進んでいないという会社も結構あると。こういう現実的にどうなりますかという仮想の質問ということもありまして、そういう点で見ますと、必ずしも額面どおり全部受け取っていいかなと、ちょっと割り引かなきゃいけないかなという点もございます。ただ、この結果を見る限り、そんなに賃金制度自身を大きくいじくる形ではないなということがわかったということも、一つ発見でございます。

その下の表でございますが、こちらは61歳以上定年設定に関するということで、先ほどの1章と、若干ちょっと説明の方法が違っているところもございますが、61歳以上の定年を設けている会社というのはどんな特徴があるかと。ここで見ましても、賃金上昇倍率、これがマイナスになってございます。やはり賃金カーブを下げて定年年齢を引き上げているということが、この分析からも同じ結果が出てございます。

こちらのほうの分析として幾つか上がっているのは、正社員の人の55歳~59歳比率とか、高齢者の50代の方が比較的多くいる会社では、定年を上げているといったようなことがございます。もう片方で、この解釈が難しいのですが、労働組合があるという会社がマイナスになっていまして、この辺の解釈というか、これをどう考えるかというのは、今後の一つの課題ではないかと思っております。

ただ残念なことに、今回の調査で、その辺の詳しいことまで、企業の労務管理とかまで聞いていなかったので、一応分析からは、ちょっとこれ以上はわからないということがございます。

次の8ページでございますが、こちらのほうは、60歳以降の雇用継続が高いか低いかについて分析したものでございます。こちらのほうの分析で幾つか特徴がございますのは、一つは、賃金上昇倍率が高い、つまり、割と賃金が急になっている会社が、そのまま高齢者も多分定着するという希望が強いということが考えられまして、こちらもプラスになっていると。片方で、60歳前後で賃金が下がるという場合、この係数がマイナスです。「−3.4」となってございまして、要するに定年とか継続雇用が切りかわるとき、あまり賃金を下げ過ぎちゃうと、条件をあまり変え過ぎちゃうと、労働者のほうがかえって就業継続の希望がなくなってしまって、結果的に継続雇用の率が落ちてしまうと、そういう結果が出ております。これは同じような分析を、前の報告書でも労働者調査をやりまして、やっぱり同じような結論が出ておりまして、そういう点で、賃金制度の設計の仕方、あるいは定年前後での労働条件の変更の仕方ですね、この辺を工夫しないと、かえって制度変更してもうまくいかない可能性が強いと、そういうことがうかがえております。

また、60代前半の賃金格差、これもマイナスになっておりまして、賃金の処遇についても、能力とか、適性評価というのは当然必要だと思うのですが、あまり差をつけちゃうと、かえって労働意欲をそいでしまうという結果にもなっております。こちらの方も、また労働組合の存在というのがマイナスになっておりまして、この解釈がちょっと難しいかなと思っております。

あともう一つ、正社員の増加率というのはプラスで効いておりまして、労働需要が強い場合、会社としても継続雇用を進めるということがうかがえておりまして、やはり雇用情勢とか、マクロ全体的とか、そういったところが高齢者雇用にも影響が示唆されるという結果になっております。これは個人調査の分析でも、やはり失業率とか、求人倍率とか、マクロ経済変数が雇用者の就業率に影響しているという分析も、この報告書の別の箇所でもやっておりまして、そういう点では、やはり高齢者雇用を議論するとき、労働需要との関連でというのが現実問題として出てきていると。その辺を留意していく必要があるかと思います。そういったことが認められます。

あともう一つ、この推計式の(3)という方を見ていただきたいのですが、年金とかの制度設計の話で、高齢者の継続給付とか、在職老齢年金とか、あと企業年金と、この3つですね、今回の調査では、どれくらい会社として出しているかを聞いているのですが、企業年金だけマイナスになっているということがございまして、これはもう一つ発見でございまして、今まで年金とかを議論するとき、在職老齢年金とか、あるいは高齢者の継続給付とか、企業年金についてあまり注目していなかったのですが、企業年金が高齢者の雇用に与える影響というのは、これからもう少し研究していかなければいけないのではということがうかがえるところでございます。そういったことが、一応今回の研究で明らかになりました。

次の9ページでございますが、今までのは賃金制度、人事制度の60代のところにちょっと絞ったのですが、次の章では、そこのところについてもう少し包括的に、高齢者の雇用を進めるときにはどういった点が大事なのかを分析しております。ここでは60歳定年のある会社で、継続雇用制度があるという会社に絞って、そういった会社で高齢者の雇用が進んでいる会社というのはどんな特徴があるかを調べました。その場合、まず60歳の雇用、60歳になるまでにどれだけ実際に雇用が維持されているかと、これは雇用保障が強い企業と。あと実際に60歳以降の定年後の就業を希望する人がどれだけ多いかと、60歳定年以降の就業希望者が多い会社と、そのうち実際にどれだけ希望がかなっているかと、この辺について60歳雇用比率が高い会社とか、こういった会社をパターン分けしまして、各々の場合について特徴を見たものでございます。こちらの方でございますが、主な分析結果として雇用保障の強度と就業希望・就業実現の程度に関する結果というのがございますが、これを見ますと、60代までの雇用保障の強い会社の場合ですと、就業希望も高く、実際に継続雇用される割合も高い。つまり、60歳までちゃんと雇用保障できているというか、やっているような会社が、逆にそれだけ高齢者の活用をある程度進めているということが考えられまして、そういう会社では、実際に高齢者もそのまま継続雇用を希望しますし、またそういった方が実際に雇用される割合が高いと。いわばそういう点でいいますと、60歳までの雇用確保というか、60歳までどういう人たちがちゃんと継続雇用できるかと、そこのところをまず作っていくことが結構重要な問題になってくると、そういったことが示唆されるような結果になっております。

それは、下の雇用保障が強い場合というのがチャートになってございますけれど、雇用保障が強いということで、労働者のほうも、そのまま安心してその会社に勤めたいと。実際にそういう方を会社の方もある程度活用を進めており比較的雇用されやすいと、そういういい循環になっているのではといったことがうかがわれます。

実際に、じゃあ、どういう会社の特性かというのを、次の10ページでございますが、こちらは関数で推計した結果で、これは推計結果で優位になっているものだけ、プラスマイナスということで、符合のところだけピックアップしてございます。就業希望が強いとか、60歳以上の雇用比率が高いとか、こういったようなところあたりを中心にご説明しますけれど、これの特徴は、就業希望が強いということと雇用保障が強いというのはある程度相関しております。

あと、この中で、先ほど継続雇用のときに、賃金カーブが急な場合は継続雇用の割合が高いと申しましたけれど、こちらでも50歳の賃金指数が高いという場合に雇用保障が強くて就業希望も強いといったようなことになってございます。

また片方で、右側のところに60歳以上の雇用が高いサンプル〔4〕とございますけれど、これは生活設計のセミナーとかをやっている会社が、こういう雇用が高いという結果も出ております。そういう点では、生涯をにらんで計画的なキャリア形成をやっている会社というのが高齢者雇用を現実に進めていると、そういう結果も出てございます。また65歳以上の雇用確保を行っているとか、55歳の中途採用を行っているとか、こういった会社でも雇用需要が高いということで、やっぱり高齢者の活用を図るとか、積極的に運用している会社というのは、現実として高齢者雇用を非常に盛んにやっているということがうかがえます。

あと、こちらの分析でも実はもう一つ、労働組合がある会社は就業希望がマイナスという結果が出ておりまして、これについても、やはり先ほどの分析と同じように果たして労働組合の本当の効果なのか、あるいは労働組合がたまたま何かほかの代理変数なのか、このあたりはちょっと今後の検討課題かなと考えております。

この分析から、先ほどちょっと申しましたけれど、雇用保障が強いとか、賃金が急減しているとか、セミナーをやっているとかいいますと、やはり60歳以降の雇用というのは、実は60歳より前から準備をしていると。そういった面では、60歳の雇用というのは、実は60歳より前の働き方や仕事の仕方の影響が結構大きいというところも、大事な話として指摘できるかと思います。そういう点で、制度設計を考えるときに、50代、40代を含めて長期的に考えてやっていかなきゃいけないと、いきなり60歳になってからというのでは非常に遅いということが大事な話かと思います。

続きまして、次の11ページでございますが、こちらの方は、賃金制度の関係で、公的給付の影響について分析したものです。ちょっと数字の表を全部つけていなかったのですが、在職老齢年金とか、高齢給付というのが、その分賃金補助金になっているのではないかと。それで、余計会社が、より高齢者の賃金を下げているとか、そういった議論もありまして、その辺について、果たしてマイナスの効果が大きいのかどうかを検証したものですが、これは実は前回の報告書で、労働者についても同じような賃金の関数の分析をしていまして、そちらの方の年金とか高齢給付の係数と比べますと、会社のほうの係数のほうが小さいということで、こういった制度が雇用抑制的にはなっていないと、むしろ雇用補助金の効果のほうが強いのではないかということが示唆されるという結果になってございます。

そういう点で、制度設計の話でいきますと、年金制度、数字が抑制的というのをだんだん改善してきていると。これは実は個人調査の分析でも、以前に比べて年金の就業抑制傾向が小さくなっているというような分析もございまして、その点では、就業中立的な制度設計がだんだんシフトしてきているといったことなども、これとはちょっと別ですけれど、うかがえる結果になっています。そういう点でも、ステージの改良が徐々に進んできていることも指摘しておきます。

続きまして次の12ページですが、こちらについては今回の調査の特徴の一つなのですが、現在、政府の方も60代前半の継続雇用ですね、65歳までの雇用確保というのを目標に置いているのですが、それ以降70歳まで働ける企業とかを含めて、60代後半についての雇用確保というのも今取り組みを進めているところでございます。ただ、実際に65歳より先の雇用確保をやっている会社というのはどうなっているか、今まであまり調べた例がございません。今回企業調査では、そういった会社の特徴についても調べてみました。ところが、まず12ページの上の図を見ていただきますと、実際のところ、現実問題として65歳より先の雇用確保を行っている会社というのはあまりないですね。実は6割ぐらいの会社が実施も検討もしていないというふうになってございます。実際に65歳先の雇用確保を行っている会社というのは4分の1程度でございます。今後検討するというのは1割ぐらいになってございまして、そういう点で、やはりこれに取り組んでいるところはまだ非常に先進的な一部の会社にとどまっているところでございます。

では、そういう取り組みを進めている会社について、どういった理由で進めているかを見ましたのが、65歳より先の雇用確保措置を進める理由でございます。これを見ますと、多いのが高齢者でも十分に働くことができるとか、戦力となる高齢者を積極的に活用する必要があると。いわば、優秀な、有能な高齢者がいまして、その人が使えるからということが大きいので活用しており、実際に65歳より先の高齢者がいますよと、そういうふうな形での活用が進んでいるというのが現実でございます。そういう点でいいますと、無理やりやっているというよりも、要するに戦力化を図っているので、自然と65歳より先でも高齢者を使っているという会社が現状だというところでございます。

片方で、65歳より先は検討も実施もしていないと、これは6割強ございまして、こういった会社というのは、逆に何でやっていないかというと、やっぱり一番大きいのは、65歳以上の雇用は差し迫った課題ではない、とにかく65歳までの雇用確保を図るのがまず大命題でして、それより先のところはまだ手が回らないという会社が一番多くなってございます。その次に多いのが、高齢者の体力・能力に差があるとか、そういった意味で不安があり一律にそれは難しいと。やはり65歳より先になってきますと、高齢者というのはだんだん能力面とか、体力面とか、ばらつきが出てきますので、それへの対応をどう図っていくかと、この辺がまだネックになっているというのが課題として挙げられるということがございます。

その関連でいいますと、次の13ページでございますが、今申しましたように、じゃあ65歳より先の雇用確保を行うにはどういった取り組みが必要なのかと。これを見ますと、傾向として二極化みたいなことがございまして、特に必要な取り組みはないという会社が3割と一番多くなってございます。また無回答という会社も4分の1ぐらいあります。そういう点でいいますと、先ほどの実際にやっているような会社、検討している会社を見ますと、既に高齢者がいて活用しているからそれ以上必要なことをしなくても済んでいるというケースも結構多いと。片方で、取り組みとして必要になってくるのが、継続雇用者の処遇の改訂とか、新たな勤務シフトの導入とか、60代前半と後半では雇用者の状況も違ってくるので、そうすると、やっぱり60代後半になりますと、新しい仕組みをずっと考えていかなきゃいけないと、その辺の対応が必要だということがうかがわれるところでございます。

最初のところから見ましても、65歳より先の雇用確保というのは、やっている会社はすでに戦力を図っているというか、必要な取り組みが少ない、ないというのが多いというのは、結果にも関連していると思うのですが、現実問題、定年制とか継続雇用制度の仕組みを考えたときに、じゃあ、65歳以上定年をしているとか65歳より先の継続雇用をしているとか、そういった会社が65歳の雇用確保が多いかというと、必ずしもそうではなくて、一番多いのが65歳より先の雇用確保措置を実施している企業でいいますと、一番右端に継続雇用の上限年齢が65歳以下の会社417社とございます。つまり、65歳より先の雇用確保措置を行っているのが893社あって417社、4割強が現実問題としては、継続雇用制度としては65歳より下回っていると。つまり、定年制とか継続雇用制度を言わないでやっていると。これが現状でございまして、次に多いのが継続雇用制度で対応していると。継続雇用の上限年齢なしが274社とか、継続雇用の上限年齢65歳以上が91社となってございます。一番多いのは、やっぱりフレキシブルに対応しているということがございまして、実はこれは、その下の今後65歳以上の雇用確保を検討する会社でも、やはり一番多い回答が、定年とか継続雇用によらないで、会社の実情に応じて働く仕組みで対応するとなってございます。先ほどの高齢者が戦力になっているから使っているというのは、これなどを分析しますと、現状の場合、高齢者に戦力とできる優秀な方がいらっしゃるので、その方をそのまま使うと。そうすると、それに応じて仕組みをつくっていくのだけれど、だが、それ以上定年とか、継続雇用の大きな見直しまではあまりまだしていないと、そういったことがうかがえると思います。今まではそれでいいかもしれませんが、今後はそれだけで済むのかどうかというのは、ちょっとこれからの課題ではないかと思っております。

あと、次の14ページは、じゃあ、片方で、継続雇用でやっている場合の会社ですと、65歳の雇用を確保している会社はどのような仕組みが特徴かというのを見ました。そうしますと、この65歳以下を上限としない継続雇用をやっている会社の場合は、再雇用と勤務延長制度を比較的導入していると。また希望者全員という仕組みが比較的多いと。また、継続雇用の基準としまして、現職を継続するというのを重視してやっていることがうかがえます。

また15ページでございますけれど、継続雇用後の雇用形態を見ましても、契約社員というのが一番多いのですが、正社員も比較的比率が高いということで、正社員、非正社員含めていろいろと活用している会社が多くなっているという結果が出ております。ですので、現状の分析としましては、戦力になる候補者を使っているという理由で、65歳より先の雇用確保を図っている会社が非常に多いというところでございます。

続きまして16ページでございますが、これは、継続雇用について会社側から見たときどんなメリットがあるのかについて考察したものでございます。60代前半の雇用確保措置というのは、定年制の延長とか、定年制の廃止とか、継続雇用制度と、3つの中から選ぶことになっているのですが、圧倒的に多いのは継続雇用制度が多いと。この継続雇用制度を使っている背景としまして、会社としましては、全員じゃなくある程度選別することによって生産性が低下するリスクを落とすとか、また、継続雇用でその後賃金制度をチャラにするということがあって人件費の増加のリスクを避けるとか、あるいは定年制ですと人事制度の変更のリスクが小さいと、こういった側面があって、会社としてはメリットがあるという現状ではないかということを示唆しております。

また、実際会社の業績、売り上げが悪い会社とかいい会社に関係なく継続雇用制は進んでいるのですが、この図の右側を見ていただきますと、一つの発見としまして、正社員の採用とか、新卒とか中途採用が難しいということで60歳を超えた正社員を雇用していると挙げた会社というのは、やはり売り上げが減ったという割合が高いと。そういう点では、先ほど継続雇用のところで労働需要が強いと継続雇用率も高いと申しましたけれど、ちょっとこれ逆なのですが、こちらのほうは、コスト削減として継続雇用を使っているという側面もあると。ただ、これをやり過ぎちゃうと新卒とか若い人の採用が進まなくなってしまうという問題点がございます。

あと、ここではシミュレーション的な議論をしているのですが、先ほど企業年金が継続雇用に影響しているのではと申し上げましたが、退職給付制度の場合、今確定給付が結構、かなり債務の問題がありまして、その分の影響が非常に大きく寄せるということがこの分析からも実は出ておりまして、そういう点で、企業年金を設定するかどうかということと継続雇用を進めるかというのは二者択一になってしまう可能性があると。そういう点で、企業年金がどう影響するかというのは、今後のやっぱり課題じゃないかということを示唆しております。

以上のような分析の話を受けまして、3ページ目に戻っていただきまして、今回の報告書として幾つか整理しております。まず1つ目が、高齢者の雇用を考えるときに、やはり賃金・人事制度をどうつくっていくかが重要でございますが、その場合、先ほど申しましたように、会社側の事情だけじゃなくて、高齢者の就業ニーズなどを踏まえながら、両面をはかりながら進めていく必要があると。そういう点で、非常にバランスをとった制度をつくっていくことが求められると。

あと、実際に高齢者の雇用が進んでいるとか、進めている会社は、高齢者がやっぱりそれだけ能力があると、それだけ活用しているという側面がやはりありますので、そういう点で能力向上を図るとか、戦力化を図るような仕組みをつくっていくと、また、それに対しての支援をしていくといったことが重要になってくると。その際に、職業能力というのは仕事の経験から出てくるものなので、やっぱり60歳の前から仕事のキャリアの積み方というのを考えていかなきゃいけないと。

実際一番下の○でございますけれど、60歳より先の雇用を進めている会社というのは、やっぱり高齢者をある程度活用していると、活用しているから就業率も高いし、雇用保障も強いとか、賃金も高くなっていると、そういった循環になっているのではということがうかがわれます。

あと、次の4ページ目でございますが、先ほど生活設計とかセミナーをやっている会社で実際に高齢者雇用が進んでいるといったようなことがございますし、やはり長期的な視点に立って人事管理とか人材育成を図っていくということが求められてくるのだと。

あと、定年とか年金等、制度的なものがやはり高齢者の就業決定にいろいろと影響してくると。会社調査だけじゃなくて個人調査の分析からいいまして、定年とか、継続雇用とか、両方の影響が強く、見ていかないといけなくなっております。もう一つ企業年金についても、今まではあまり議論がなかったのですが、企業年金の動向も重要になってくるということがうかがわれます。

それと、ちょっと今回の個人調査の分析から、大事な点としまして一つ挙がってきたのが、やはり健康と高齢者就業というのは密接に関係しているということがございます。その健康というのは精神的な健康ですね、これも重要だということが今回の分析では明らかになりました。これは50代の前半の方についての分析で明らかに出たのですが、ストレスとか精神的な問題というのはやっぱりこちらも重要だと。そういう点では、メンタルな話も含めて、健康問題というのは高齢者就業にとってやっぱり大事な問題になってくると。健康対策と高齢者就業対策というのがセットになってくるということがうかがえます。

あと、現状の高齢者の継続雇用の課題としまして、現在希望者全員というのは少なくて、基準に合致したものというのが非常に多いと。また、処遇とかを見ますと、仕事の内容とか勤務場所というのは、60歳前と60歳後というのは同じところが多いのですが、賃金が大分下がっちゃうとか、企業の格付が外れちゃうとか、あるいは契約期間は1年間が多いとか、そういう点で条件に違いが出ておりまして、その辺は、やはりうまく事業者のニーズもありながら会社としても活用できるように考えていかないといけないということが課題として挙げられるかと思います。

また、65歳から先の雇用というのは、やはり高齢者はどうしてもニーズも含めていろいろ多様化してきますので、それに対応できるように、会社の方も仕組みを考えていく必要があると、そういったことがうかがえます。

先ほどちょっと組合の分析の話をしたのですが、今回の案件調査は、実は会社の労務戦略というか、労使の議論とか、あまりちょっと入れていなかったので、本来そういったところにどう取り組んでいくかが現実に高齢者雇用を進めるには大事なのですが、これについては今ヒアリングなどをやっておりまして、そちらのほうでさらに分析したいと考えております。

また、高齢者の就業ニーズの把握が重要でございまして、これについては、昨今個人調査を行いまして、概要だけ発表しまして今その分析を行っているところでございます。

あと、行政の方の課題としましては、今後雇用確保措置をどういうふうにつくっていくんだと、先ほど申し上げた団塊の世代の方の移行の話とか、年金制度の動向を踏まえますと、その辺の制度設計とかを含めてどのような対応策を図っていくかが重要になってくるかと。

あと、高齢者の場合、会社の訓練とか能力開発が少ないということがございます。そうしますと、法的支援というのが大事になってくるのではないかと。それから、今申し上げた健康対策問題も重要になってくると。

あと、ヨーロッパ諸国の経験からしますと、労働者の職業能力とか、労働の環境、就業の質を高めると、この対策をセットでやっていると。また、社会保障対策とか労働対策とか、これもセットでやっていると。そういった点にあっては、個々の政策をバラバラでなくて連携をとってやっていくことがより求められてくるかと思います。

最後に、マクロ経済の状況も結構影響するので、そういう点でのマクロ経済政策というのが大事になってくるといったようなことが、今回の報告書から、分析から、ある程度示唆されるのではないかと整理しております。

以上で、簡単ですが報告を終わらせていただきます。

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