配布資料:第12回 旧JIL講演会
会社分割と労働者保護
~商法改正に伴う労働契約承継法を中心として~
(2000年7月11日)

資料1-1 商法等の一部を改正する法律案の概要

会社が、その組織の再編成を容易に行い得るようにするため、その営業を新たに設立する会社又は既存の会社に承継させるとともに、これらの会社の株式を分割をする会社又はその株主に割り当てる会社分割法制を整備するため、商法等の一部を改正する。

1 立法の目的

会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ、会社が経営の効率化を図り、その競争力を高めるため、その組織の再編成を柔軟に行い得るよう、その営業を新たに設立する会社又既存の会社に承継させる会社分割法制を導入する。

2 法律案の概要
  • Ⅰ 新設分割の制度の創設

    分割により設立した会社に、分割をする会社の営業を承継させる「新設分割」の制度を創設する。

  • Ⅱ 吸収分割の制度の創設

    既に存在する他の会社に、分割をする会社の営業を承継させる「吸収分割」の制度を創設する。

  • Ⅲ 分割により設立した会社又は既に存在する他の会社が分割に際して発行する株式等を分割する会社に割り当てる分割(分社型)及びこれを分割する会社の株主に割り当てる分割(分割型)の制度を創設する。
  • Ⅳ 分割の手続
    • ア 分割計画書(新設分割の場合)又は分割契約書(吸収分割の場合)の作成【記載事項:設立する会社等の定款の規定、分割に際して発行される株式の種類及び数並びにその割当に関する事項、設立する会社等が承継する権利義務に関する事項 等】
    • イ 分割計画書等の事前開示
    • ウ 分割計画書等の株主総会の特別決議による承認
    • エ 反対株主の株式買取請求権
    • オ 債権者保護手続
    • カ 分割の登記
    • キ 分割事項を記載した書面等の事後開示
  • Ⅴ 簡易な分割手続

    株主総会の特別決議を要しない簡易な分割の手続を整備する。

  • Ⅵ 簡易な分割手続

    分割により設立した会社等は、分割計画書等の定めるところにより、分割をした会社の権利義務を包括的に承継する。

  • Ⅶ 分割無効の訴え

    分割手続等に瑕疵があった場合等には、株主等は、分割無効の訴えを提起することができる。

資料1-2 商法等の一部を改正する法律案に対する修正案対照条文

資料2  会社分割の種類

資料3  新設分割手続の流れ

資料4 企業組織変更に係る労働関係法制等研究会報告について

労働省発表

平成12年2月10日(木)

担当
労政局労働法規課
  • 課長 坂田 稔
  • 課長補佐 久保 毅
    • 電話 3593-1211 内 5327
    • 夜間直通 3502-6679

― 会社分割における労働関係の承継法制立法化を提言 ―

労働省では、昨年12月から学識経験者からなる「企業組織変更に係る労働関係法制等研究会」(座長 菅野和夫東京大学法学部教授)を開催し、会社分割、合併及び営業譲渡における企業組織変更に伴う労働関係上の問題への対応について、専門的見地から検討を進めてきた。

本研究会においては、労使からの意見聴取を行ったほか、裁判例、外国法制等を踏まえて検討を行った結果、今般、別添のとおり報告が取りまとめられた(要点は別紙のとおり)。

本報告においては、会社分割については、円滑・容易な分割の必要性を尊重しつつ、分割の際の労働関係の承継に係る種々の問題点を解消するため立法措置を講ずることが必要であるとして、労働契約の承継において、一定範囲の労働者について異議申立を認める等の具体的措置内容を提言している。

また、本報告においては、合併及び営業譲渡における労働関係の承継等については、特段の立法措置は不要であるとしている。

労働省としては、本報告を受けて、会社分割の際の労働関係上の問題に対応するため、商法等改正案と合わせ、所要の法案を今通常国会に提出する予定である。

(参考1)企業組織変更に係る労働関係法制等研究会

産業活力再生特別措置法案や民事再生法案における附帯決議等を踏まえ、昨年12月から計4回開催されたものである。

(参考2)会社分割法制

商法等の改正により、企業再編のための法整備の一環として創設されるものであり、営業の全部又は一部を新たに設立する会社等に承継させる法制度である。

資料4別紙 企業組織変更に係る労働関係法制等研究会報告の要点

1 会社分割法制

1 権利義務の承継の特徴

会社分割法制は、営業の全部又は一部を承継させる制度であり、対象となる権利義務の承継については、部分的包括承継という概念が導入されている。

2 労働関係の承継について

労働関係の権利義務についても、他の権利義務と同様、会社の意思のみにより承継される労働者の範囲を定めることができ、それが分割計画書等に記載された場合は分割会社から設立会社等に包括的に承継される。

3 労働関係の承継の問題点
Ⅰ 労働契約の承継について
  • イ 承継を望まない者が承継され、また、承継を望む者が承継されないことが一部の労働者に生ずる場合が想定されること
  • ロ 「承継営業を主たる職務とする労働者」のうち残留させる者及び「承継営業を従たる職務とする労働者」のうち承継させる者について、これまで従事してきた職務の全部又は大部分と切り離される可能性があること
  • ハ 使用者が労働契約を譲渡するに際して労働者の同意を必要とする民法第625条第1項が類推適用される可能性があり、関係者に混乱が生ずるおそれがあること
Ⅱ 労働協約の承継について

他の権利義務と同様に分割計画書等に記載することが可能かという点に疑義があり、分割計画書等への記載を可能と解した場合であっても、以下の問題点が生ずること

  • 組合員の労働契約が承継され、労働協約が承継されない場合があることにより、労使関係の中で労働者が獲得してきた権利を失い、労働者が不利益を被るおそれが大きいこと
  • 労働協約は、一つの営業に限らず複数の営業又は企業全体に適用されるものがあるが、当然承継されるとしたときは、労働協約が設立会社等に対してのみ適用され、分割会社においては、労働組合員が存在する場合であっても労働協約の適用がなくなるという不合理な結果となること
4 立法措置の要否

円滑・容易な会社分割の必要性等から、会社分割法制が導入されること等を尊重しつつ、労働者保護と労働関係承継のルールの明確化を図るため、以下の立法措置等を講ずることが適当。その際、同じく包括承継である合併との均衡を考慮することが必要。

  • Ⅰ 「承継営業を主たる職務とする労働者」のうち承継させる労働者については、従事していた職務と切り離される場合がほとんど想定されない。また、合併と同様に雇用及び労働条件の維持が図られる。また、会社分割の必要性を考慮し、かつ、民法第625条第1項の類推適用がないことを明確にするため、当然に承継されることとすることが適当。
  • Ⅱ 「承継営業を主たる職務とする労働者」のうち残留させる労働者及び「承継営業を従たる職務とする労働者」のうち承継させる労働者については、異議申立の機会を付与し、異議を述べたときは、それぞれ承継され又は承継されないとする効力を与えることとすることが適当。
  • Ⅲ 労働組合の組合員が承継された場合は、設立会社等と当該労働組合の間で同一の内容の労働協約が締結されたものとみなすこととすることが適当。 また、組合事務所の提供等債務的部分であって分担可能なものについては、分割会社と設立会社等の負担割合を定めることができることとすることが必要。
  • Ⅳ (1)、(2)の労働者及び労働組合に対して、分割前に分割に関する情報を書面で通知しなければならないものとすることが必要。
  • Ⅴ なお、これらの立法措置を講ずることと併せ、会社分割における労働関係の承継につき、分割に際して労使が留意すべき事項等について法律に基づく指針を策定することも必要。

2 合併

1 権利義務の承継の特徴

合併においては、すべての権利義務は包括的に承継される。

2 労働関係の承継について

労働関係のすべての権利義務も解散会社から新設会社等に包括的に承継される。

3 労働関係の承継の問題点

合併においては、労働契約及び労働協約はそのまま承継されるため、雇用継続の観点等からも、実質的にはほとんど不利益は生じない。

4 立法措置の要否

労働関係の権利義務は包括的に承継されることが明確であり、かつ、労働者に不利益が生ずる場合はほとんど想定されないため、立法措置は不要。

3 営業譲渡

1 権利義務の承継の特徴

営業譲渡においては、権利義務は個別に承継され、譲渡会社と譲受会社の合意に加え法律や契約に定められている手続を経た上で承継される。

2 労働関係の承継の概要

労働契約及び労働協約の承継についても、譲渡会社と譲受会社間の合意及び労働者又は労働組合の同意を必要とする。

3 労働関係の承継の問題点
  • Ⅰ 譲渡労働者の範囲は会社間の合意により画されるため、労働者によっては、承継されない不利益が生ずる場合が想定され、また、これらの労働者については、従事していた職務から切り離される場合が想定されること
  • Ⅱ 労働協約の承継が会社間の合意により決定されるため、労働協約が承継されないことが生ずること
4 立法措置の要否

以下を総合すると、現時点では立法措置は不要。

  • Ⅰ 労働関係の権利義務は個別に承継され、かつ、労働者の同意が必要。また、裁判例は個別に承継されるという基本ルールにのっとりつつ、事案の内容によって、具体的妥当な解決を図っている。したがって、労働関係における基本的ルールの明確化や個別事案の柔軟な解決という観点からは現時点における立法措置の必要性は認め難いこと
  • Ⅱ 労働協約の承継の有無について、労働者は、労働契約の承継の同意に際して考慮することが可能であり、さらに、労働協約の規範的部分に係る内容は、労働契約の内容として承継されるため、労働協約が承継されない不利益は小さく、立法による手当をする必要性は認め難いこと
  • Ⅲ 3の問題点に対応し、当然承継とする立法措置は以下の点で現時点においては疑問といわざるを得ない。
    • イ 営業譲渡における権利義務の承継は特定承継であることと相反し、また、この場合に労働者に拒否権を付与したとすれば、他の権利義務との均衡を失するばかりでなく、労働関係の取扱いにおいても一貫性を欠くこととなること
    • ロ 資本等の面でつながりのない会社に譲渡されることが相当あるため、営業譲渡契約の成立に重大な支障を及ぼし、かつ、使用者の採用の自由、営業譲渡後の企業活動の重大な制約となること

資料5-1 労働契約承継法案に対する衆院附帯決議 会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案に対する附帯決議

平成12年5月12日
衆議院労働委員会

政府は、本法律の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

  • 1 合併・営業譲渡をはじめ企業組織の再編に伴う労働者の保護に関する諸問題については、学識経験者を中心とする検討の場を設け、速やかに結論を得た後、立法上の措置を含めその対応の在り方について十分に検討を深めること。
  • 2 企業組織の再編のみを理由として労働者を解雇することができないとする確立した判例法理の周知徹底を図ること。
  • 3 企業組織の再編のみを理由とした解雇の未然防止に努めるとともに、解雇をめぐる個別の紛争が生じた場合においてその迅速な解決を促進するための制度の整備及び施策の充実を図ること。
  • 4 会社の分割に当たり、事業主が本法律の趣旨と内容を踏まえ、労働者との協議を行うことを促進するための施策を講ずること。
  • 5 会社の分割に伴い企業を移籍する労働者については、本人の意思が十分に尊重されるよう、民法等の趣旨を踏まえ、その周知徹底を図ること。
  • 6 会社の分割を理由とする一方的な労働条件の不利益変更はできないことを指針に明記するとともに、その周知徹底を図ること。
  • 7 本法第8条の指針の策定に当たっては、労使を含む検討の場を設け、その意見を踏まえて策定すること。

資料5-2 労働契約承継法案に対する衆院附帯決議

会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案に対する附帯決議

平成12年5月23日
参議院労働・社会政策委員会

政府は、本法律の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

  • 1 合併・営業譲渡をはじめ企業組織の再編に伴う労働者の保護に関する諸問題については、学識経験者を中心とする検討の場を設け、速やかに結論を得た後、立法上の措置を含めその対応の在り方について十分に検討を加え適切な措置を講ずること。
  • 2 企業組織の再編のみを理由として労働者を解雇することができないとする確立した判例法理の周知徹底を図ること。
  • 3 企業組織の再編のみを理由とした解雇の未然防止に努めるとともに、解雇及び労働条件をめぐる個別の紛争が生じた場合において、その迅速な解決を促進するための新たな立法措置の検討を含め制度の整備及び施策の充実を図ること。
  • 4 会社の分割に当たり、事業主が本法律の趣旨と内容を踏まえ、労働者の理解と協力を得るための協議を行うよう必要な施策を講ずること。
  • 5 会社の分割に伴い企業を移籍する労働者については、本人の意思が十分に尊重されるよう、民法等の趣旨を踏まえ、その周知徹底を図ること。
  • 6 会社の分割を理由とする一方的な労働条件の不利益変更はできないことを指針に明記するとともに、その周知徹底を図ること。
  • 7 本法第8条の指針は、労働者保護に必要な事項を適切に規定するものとし、策定に当たっては、労使を含む検討の場を設け、その意見を踏まえて策定すること。
  • 8 承継される営業に主として従事する労働者と従として従事する労働者の範囲については、省令及び指針により、できる限り客観的な基準を設けること。
  • 9 営業譲渡・合併等に際して、労働契約の承継等に関して適用される現行法令や判例の周知徹底を図り、営業譲渡等の際の労使紛争の予防に努めること。
  • 10 債務の履行の見込みのない会社分割ができないとする分割制度の趣旨につき周知徹底を図ること。
  • 11 会社の分割に当たり、当該分割の対象となる労働者等へ書面により通知する際には、移籍する会社の業務や移籍後当該労働者が従事すべき業務等労働条件に関する事項について、具体的に書面に記載されるよう十分な措置を講ずること。
  • 12 会社分割に伴い、関連中小企業の営業及び労働者の雇用に不安が生じることのないよう、会社分割法制及び本法の趣旨につき周知徹底を図ること。

右決議する。

資料6 労働契約承継法の概要

会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(労働契約承継法)
(平成十二年法律第百三号)の概要(H12.5.31公布)

1 趣旨

商法等における会社分割制度の導入に伴い、分割をした会社の権利義務が分割によって設立する会社等に包括的に承継されることとなることを踏まえ、労働者保護の観点から、労働契約の承継等についての特例等を定める。

2 概要
(1) 労働者等への通知

会社(株式会社及び有限会社をいう。)は、その分割に当たり、関係労働者等に対し分割に関し通知することとする。

(2) 労働契約の承継
  • イ 分割により承継される営業に主として従事する労働者の労働契約が承継される場合は、当該労働者の同意は要しない。
  • ロ 分割により承継される営業に主として従事する労働者の労働契約が承継されない場合は、当該労働者は異議を申し出ることができる。異議を申し出たときは、その労働契約は設立会社等に承継される。
  • ハ 分割により承継される営業に従として従事する労働者の労働契約が承継される場合は、当該労働者は異議を申し出ることができる。異議を申し出たときは、その労働契約は設立会社等に承継されない。
(3) 労働協約の承継等

労働協約については、組合員の労働契約が設立会社等に承継される場合は、労使間で合意した部分(労働条件に関する部分を除く。)を除き、設立会社等と労働組合との間で同一の内容で締結されたものとみなす。

(4) 労働者の理解と協力

分割会社は、分割に当たり、労働大臣の定めるところにより、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとする。

(5) 指針

労働大臣は、分割会社及び設立会社等が講ずべき労働契約の承継等に関する措置に関し、必要な指針を定めることができる。

3 施行期日

商法等の一部を改正する法律案の施行の日

資料7 労働契約承継法(条文)

会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成12年法律第103号)

(目的)

  • 第1条 この法律は、会社の分割が行われる場合における労働契約の承継等に関し商法(明治32年法律第48号)及び有限会社法(昭和13年法律第74号)の特例等を定めることにより、労働者の保護を図ることを目的とする。

(労働者等への通知)

  • 第2条 会社(株式会社及び有限会社をいう。以下同じ。)は、商法第2編第4章第6節ノ3及び有限会社法第6章の規定による新設分割又は吸収分割(以下「分割」という。)をするときは、次に掲げる労働者に対し、商法第374条第1項(有限会社法第63条ノ6第1項において準用する場合を含む。)の分割計画書又は商法第374条ノ17第1項(有限会社法第63条ノ9第1項において準用する場合を含む。)の分割契約書(以下「分割計画書等」という。)を承認する株主総会又は社員総会(以下「株主総会等」という。)の会日の2週間前までに、当該分割に関し、当該会社が当該労働者との間で締結している労働契約を当該分割によって設立し、又は営業を承継する会社(以下「設立会社等」という。)が承継する旨の当該分割計画書等中の記載の有無、第4条第1項に規定する期限日その他労働省令で定める事項を書面により通知しなければならない。
    • 当該会社が雇用する労働者であって、設立会社等に承継される営業に主として従事するものとして労働省令で定めるもの
    • 当該会社が雇用する労働者(前号に掲げる労働者を除く。)であって、当該分割計画書等にその者が当該会社との間で締結している労働契約を設立会社等が承継する旨の記載があるもの
  • 前項の分割をする会社(以下「分割会社」という。)は、労働組合法(昭和24年法律第174号)第2条の労働組合(以下単に「労働組合」という。)との間で労働協約を締結しているときは、当該労働組合に対し、分割計画書等を承認する株主総会等の会日の2週間前までに、当該分割に関し、当該労働協約を設立会社等が承継する旨の当該分割計画書等中の記載の有無その他労働省令で定める事項を書面により通知しなければならない。
  • 商法第374条ノ6第1項及び第374条ノ22第1項の場合における前2項の規定の適用については、第1項中「を承認する株主総会又は社員総会(以下「株主総会等」という。)の会日の2週間前までに」とあり、及び前項中「を承認する株主総会等の会日の2週間前までに」とあるのは、「が作成された日から起算して2週間以内に」とする。

(営業に主として従事する労働者に係る労働契約の承継)

  • 第3条 前条第1項第1号に掲げる労働者が分割会社との間で締結している労働契約であって、分割計画書等に設立会社等が承継する旨の記載があるものは、当該分割計画書等に係る分割の効力が生じた時に、当該設立会社等に承継されるものとする。
  • 第4条 第2条第1項第1号に掲げる労働者であって、分割計画書等にその者が分割会社との間で締結している労働契約を設立会社等が承継する旨の記載がないものは、同項の通知がされた日から分割会社が定める日(当該分割会社が作成した分割計画書等を承認する株主総会等の会日の2週間前の日から当該会日の前日までの日に限る。次項及び次条第1項において「期限日」という。)までの間に、当該分割会社に対し、当該労働契約が当該設立会社等に承継されないことについて、書面により、異議を申し出ることができる。
  • 分割会社は、期限日を定めるときは、前項の通知がされた日と期限日との間に少なくとも13日間を置かなければならない。
  • 商法第374条ノ6第1項及び第374条ノ22第1項の場合における第1項の規定の適用については、同項中「当該分割会社が作成した分割計画書等を承認する株主総会等の会日の2週間前の日から当該会日の前日までの日」とあるのは、「新設分割にあっては商法第374条第2項第8号に該当する日の前日までの日、吸収分割にあっては同法第374条ノ17第2項第9号に該当する日の前日までの日」とする。
  • 第1項に規定する労働者が同項の異議を申し出たときは、商法第374条ノ10第1項(有限会社法第63条ノ6第1項において準用する場合を含む。)又は商法第374条ノ26第1項(有限会社法第63条ノ9第1項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、当該労働者が分割会社との間で締結している労働契約は、分割計画書等に係る分割の効力が生じた時に、設立会社等に承継されるものとする。

(その他の労働者に係る労働契約の承継)

  • 第5条 第2条第1項第2号に掲げる労働者は、同項の通知がされた日から期限日までの間に、分割会社に対し、当該労働者が当該分割会社との間で締結している労働契約が設立会社等に承継されることについて、書面により、異議を申し出ることができる。
  • 前条第2項及び第3項の規定は、前項の場合について準用する。
  • 第1項に規定する労働者が同項の異議を申し出たときは、商法第374条ノ10第1項(有限会社法第63条ノ6第1項において準用する場合を含む。)又は商法第374条ノ26第1項(有限会社法第63条ノ9第1項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、当該労働者が分割会社との間で締結している労働契約は、設立会社等に承継されないものとする。

(労働協約の承継等)

  • 第6条 分割会社は、分割計画書等に、当該分割会社と労働組合との間で締結されている労働協約のうち設立会社等が承継する部分を記載することができる。
  • 分割会社と労働組合との間で締結されている労働協約に、労働組合法第16条の基準以外の部分が定められている場合において、当該部分の全部又は一部について当該分割会社と当該労働組合との間で分割計画書等の記載に従い当該設立会社等に承継させる旨の合意があったときは、当該合意に係る部分は、商法第374条ノ10第1項(有限会社法第63条ノ6第1項において準用する場合を含む。)又は商法第374条ノ26第1項(有限会社法第63条ノ9第1項において準用する場合を含む。)の規定により、分割計画書等の記載に従い、当該分割の効力が生じた時に、当該設立会社等に承継されるものとする。
  • 前項に定めるもののほか、分割会社と労働組合との間で締結されている労働協約については、当該労働組合の組合員である労働者と当該分割会社との間で締結されている労働契約が設立会社等に承継されるときは、商法第374条ノ10第1項(有限会社法第63条ノ6第1項において準用する場合を含む。)又は商法第374条ノ26第1項(有限会社法第63条ノ9第1項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、当該分割の効力が生じた時に、当該設立会社等と当該労働組合との間で当該労働協約(前項に規定する合意に係る部分を除く。)と同一の内容の労働協約が締結されたものとみなす。

(労働者の理解と協力)

  • 第7条 分割会社は、当該分割に当たり、労働大臣の定めるところにより、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとする。

(指針)

  • 第8条 労働大臣は、この法律に定めるもののほか、分割会社及び設立会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置に関し、その適切な実施を図るために必要な指針を定めることができる。

附則

(施行期日)

  • 第1条 この法律は、商法等の一部を改正する法律(平成12年法律第90号)の施行の日から施行する。ただし、次条の規定は、公布の日から施行する。

(中央省庁等改革関係法施行法の一部改正)

  • 第2条 中央省庁等改革関係法施行法(平成11年法律第160号)の一部を次のように改正する。
    • 第613条の次に次の一条を加える。
      (会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律の一部改正)
      • 第613条の2 会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成12年法律第103号)の一部を次のように改正する。

        本則中「労働省令」を「厚生労働省令」に、「労働大臣」を「厚生労働大臣」に改める。

資料8 会社分割の具体例について

ケース

  • 鉄道部門とバス部門を経営している会社がバス部門(太線部分)を分割する。
  • 労働者についてはバス部門の大部分と総務部門の一部

(下図では①、③の部分)を移籍する。

具体例
  • ①の労働者…本人の同意なく移籍される。
  • ②の労働者…残留に当たり、異議申立の機会を与える。
  • ③の労働者…移籍に当たり、異議申立の機会を与える。