第2回 旧JIL講演会
規制緩和と労働法制
~労働基準法改正を契機に新しい労働者像を求めて~
(1998年2月10日)

日本労働研究機構研究所長
上智大学法学部教授
花見 忠

目次

講師略歴

花見 忠(はなみ・ただし)

1930年2月15日、東京都生まれ。53年3月に東京大学法学部卒業。66年より上智大学法学部教授。79年から82年同法学部長。中央労働委員会公益委員(1992年~)、同会長代理(1996年~)、中央労働基準審議会会長(1988年~)などの要職をこなすかたわら、ハーバード大学、コロンビア大学の客員教授として海外でも活躍、現在に至る。専門は労働法・労働政策。著書多数。近著は「あなたの隣人 外国人労働者」(1994年)、「アメリカ日経企業と雇用平等」(1995年)など。

プロローグ

本日は、「規制緩和と労働法制」というタイトルでお話しさせていただきます。

今回の基準法改正は比較的大幅な改正で、私は長期にわたってその法案作業に携わってまいりました。審議会は白井泰四郎先生からバトンタッチされ、1989年から会長を務めてちょうど10年になります。最近の政府のルールでは4期で交代ということで、各期が少しずつ延び、ほぼ10年で4期終わるので、もう私はお役御免です。審議会の会長というのは労使の主張を調整してまとめる役であり、あまり自分の意見を言うことができません。審議会の中でも外でも、何か言うといろいろ差し支えがありますので、10年間かなり我慢してきてフラストレーションがたまっていました。解放されたので大いに言おうかなと思ったのですが、次期委員がまだ決まるまでは形式的にはまだ会長なんだそうで、会長が余計なことを言うなというふうに言われたりしていて、物議を醸す可能性もあるんですが。

日本の労働法制は本当に曲がり角に来ており、変化の中の対応という意味では大分ずれが生じているのではないかと、私は長い間考えてまいりました。それに対する我々の対応が十分ではないという状況から、労使双方に都合の悪いことでも、はっきり申し上げたほうがいいのではないかという感じで、お話をしていきたいと考えております。

法案の持つ意味

本日は資料の中のレジュメに沿って話を進めます。まず、今度、国会に出されるべき法案──私どもが要綱まで決めた法案(「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」)ですが、この法案の意味を少し歴史的に考えていきたいと思います。昨年、この改正問題がマスコミ、新聞紙上などに大きく取り上げられるようになってからの論調を拝見しておりますと、この点についての認識が、少なくとも私ども、あるいは私個人とはかなり違うという感じが強いので、まず、「改正の基本的な意味」ということを申し上げたいと思います。

何が今回の改正の一番大きな問題かと申しますと、まず、今申しましたように時代の変化に対応するということで、次のような前提が2つございます。1つは、基本的な考え方として頭に入れていただきたいのですが、資料1の「ワーキングスタイル」というタイトルの図をご覧ください。在来型の工場労働を中心にした労働のパターンと、ハイテクを中心にした新しいタイプの、現在の技術に適応した労働のあり方というものを、非常に単純化して対極に置くと、一方は他律的・画一的・定型的な仕事の仕方で、ルールは硬直的ということです。

これは、非常に単純に申し上げれば、テーラーシステムとかコンベアシステムとかいうような、工場労働の他律的・画一的で、労働時間でいうと在来型の労働時間制度──始業・終業を一斉に決めて休憩時間も一斉にとる、ベルが鳴ったら一斉に動き出して、ベルが鳴ったら終わりという、そういう仕事のやり方が一方である。それに対して、労働時間で言うと在来型に時間外・休日をプラスするというものから、変形労働時間、裁量労働制、フレックスという、非常にフレキシブルな労働時間制度。これは、ワーキングスタイルからいえば、自律的で、多様で創造的で弾力的な仕事のしかたであると。働く場、ワークサイトという点から言うと、工場・商店という在来型の仕事の場所から、オフィス・研究所・サテライト・テレワークというタイプになってくるわけであります。

個別紛争処理の必要性

これに対応する雇用のタイプとか、契約のタイプとか、政策視点ということについては後ほど触れたいと思います。ここで私が申し上げたいのは、今の労働基準法を中心にした労働法制──基準法を中心にした、いわゆる労働保護法、個別的労働関係法以外に集団的な労働関係法についても、我々は、現在の日本の法制度を根本的に考え直さなければいけないのではないかと考えております。そういう意味で、この表の一番下の政策視点というところをご覧いただきますと、在来型の雇用に対する政策はやはり雇用保障が中心で、労働者の生活が安定すること。そのために国が規制をし、最低労働条件を国が設定するというタイプ。紛争処理は、労働組合による集団的な紛争処理。ストライキを前提にした団体交渉で、協約で決定するという紛争処理が中心で、それを国がどの程度保証していくかという政策でありました。

それに対して、新しいタイプのワーキングスタイル、労働パターンに対応する政策というものは、労働者の移動の自由を確保し、スタビリティのかわりにオポチュニティ、機会があれば能力が十分に発揮できる、そういう人たちの機会をつくり出すという政策が必要であって、それは流行りの言葉で言えば「規制緩和」につながると、そういうことでありました。同時に、紛争処理で考えますと、集団的な紛争だけでは問題が処理できない。個別紛争処理というものは非常に重要になってくるので、それに対する対応というものは政策的にも必要だろうと考えます。

3つの雇用タイプをバランス良く

大体、大きな視点はこういうことですが、本日のお話は基準法中心でどのように対応するかを考えていきます。ここで大切なのは、現在の基準法はの左側に力点が置かれたものですが、それを、右側に力点を移していかなければいけない。しかし、左側を全く否定してしまうことはできないわけです。3番目の雇用のタイプというところをご覧ください。下の方は、雇用柔軟型、長期蓄積能力活用型、高度専門能力活用型と、3つに分解していくという日経連のパースペクティブですが、もう1つ、アメリカの前労働長官ロバート・ライシュが出しておりますのは、ルティンの生産・サービス、簡単に言えば、同じことの繰り返しを内容とする在来型の雇用。それと、創造的なインプット=シンボリックアナリストというものが右側に位置するわけで、これは、ワーキングスタイルから言うと自律的で多様で自主的な仕事のしかた、創造的な仕事のしかたということになるわけです。

これまで日本は、どちらかというと日経連の言う長期蓄積能力活用型と雇用柔軟型の組み合わせでやってきたのですが、日経連が言う高度専門能力活用型、ライシュの言う創造的なインプット、こういう雇用あるいは労働力というものが今後の産業の重要な担い手になってくるだろう。これにどう対応するかということが新しい政策視点であります。ところが、こちらの方だけオポチュニティをオープンにする、だから規制緩和を、というのは非常にバランスの悪い、極端に走る政策で、在来型のものも維持していかなければならない。その辺のバランスが非常に難しく、こういうことを言ったからといって問題が解決するわけではないんですが、考え方としては、こういう図式を頭に置きながらどこで調整していくかということです。それで、日本の現実の中で労働者の利益を守りながら、より活力のある機会を切り開いていくということを我々が考えていかなければならない。

改正につながる流れ

私どもは、そういう流れの中で基準法の改正というものを考えてまいりました。基準審議会の中ではあまりそういう議論はできませんが、様々な機会に仲間の労働法学者あるいは労働経済学者がそういう議論をしてきたつもりです。

ところが、グランドフォーラムというか、非常に広いパースペクティブに立って、どのように具体的に基準法改正を詰めていくかという流れの中で、どういう作業をやってきたかと申しますと――特に今回の改正は労働時間関連が相当部分重要で、労働時間改正というのは図表にも示したように、ワーキングスタイルと非常に密接に関連しておりますが、労働時間法制を中心に考えた場合にもう一つ別の要素があるわけです。

基準法の改正はマイナーなものは非常に多かったのですが、最初の大改正は1987年(昭和62年)に成立した労働時間法制の第1次改正です。これが1988年に施行になり、ご承知のように、ここで40時間法制が原則として初めて設定されたわけです。私は1988年に基準審議会に入って会長になりましたが、1988年施行以降、ステップ・バイ・ステップの40時間制を拡大し、46時間から44時間に、産業別・規模別でステップ・バイ・ステップで少しずつ広げて、昨年4月1日に原則40時間の完全実施を達成したわけです。

日本は時短先進国

この中で、2つのことが重要だと思います。1つは、1987年の第1次改正から今日に至るまでの10年間に、日本の法制度は欧米先進国の中ではかなり進んだものになってしまった。この点の認識があまり明確でないのが、日本の一般世論を形成しているジャーナリズムの問題点ではないかと私は考えています。資料2の「主要国の時間外・休日規制」をご覧ください。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、日本と並べてあります。その四角の下に括弧で、フランス39時間、ドイツ8時間、イタリア8時間・48時間、日本8時間・40時間、と書いてあります。ご承知のとおり、アメリカ、イギリスは最長労働時間の上限規制がありません。法定労働時間がないんです。フランスは39時間。つまり、日本より短いのは、主要国ではフランスだけです。フランスは今、35時間にすると言って大騒ぎになっています。「進んでいる」という表現は適切ではないかもしれませんが、日本より進んでいると言えるのはフランスだけです。ドイツは1日8時間としか決めておりませんが、一方で週6日制が法定最低基準ですから、イタリアと共に1日8時間・週48時間です。労働時間は8時間とか週40何時間とか議論する時に、ジャーナリズムで混乱があるのではないかと思うのは、現実の労働時間、それぞれの国の現実の労働時間と法定労働時間の区別なしに議論するきらいがあるように思います。

法定労働時間と現実の労働時間

そもそも第1次改正の前に、48時間が長い、長いと大騒ぎをしていた時点で、ドイツとかイタリアとかヨーロッパの国々は48時間でした。アメリカ、イギリスでは上限規制がないということがあまり意識されていません。ですから、法律で最長労働時間を定めていることと現実の労働時間というのは、非常に大きなギャップがありました。現実の労働時間は、法律以外の要素に大きく左右されます。それは主として各国の労働組合の「時間」についての意識で、国民あるいは個々の労働者の「時間」や「働き方」に対する態度、意識。それから、国によっては宗教的な要素、教会の役割とか、いろいろなものがあります。そういうものが大変重要で、法律だけで問題は解決しない。法律で短い労働時間を定めれば労働時間が短くなるなら、誰も苦労しないわけです。ここに錯覚があるのではないか。

いずれにしろ、いつの間にか日本は、法制度ではかなりレベルが高いという状況になっています。40時間がステップ・バイ・ステップで拡大されてきたこの10年間の中で、日本の法制度はかなり厳格になってきたわけであります。

労働者性をどう見るか

ところが一方で、実は法制面でみると諸外国では例外がかなり広く、例えばアメリカの場合、全雇用労働者の20%ぐらいは時間規制からほぼ完全に外れています。ヨーロッパのその他の国々は非常にでこぼこがありますが、多かれ少なかれ例外がかなりあります(資料3資料4参照)。今や、日本の基準法のように、特例以外はほとんど例外がなくなって一律に40時間で規制する、という国はむしろ少ないわけです。そういう点からいうと、時間規制が厳格になり過ぎて、フレキシビリティが失われる可能性が出てきているということです。

そのことは、一方で労働基準法の適用対象というものをもう少し緻密に検討し直さなければならないということです。特に、これまで必ずしも基準法の対象にならなかったような、独立の自営労働者に基準法をどこまで適用したら良いかという、労働者性の問題があります。その絡みで、基準法の適用範囲をもう少し根本的に検討しないといけない。一律の規制でかなり高い労働時間レベルを法律で強制するということに、非常な問題が出てきたということで、時間法制を基本的に再検討しなければならない。それは、新しいワーキングスタイルにどう対応するかということとつながっており、そういう流れで今度の基準法の検討が行われてきました。この点が十分に理解されてこなかったと思われます。

作業は91年ごろから始まっていた

審議会を中心に、基準局の守備範囲でこの作業がどういうふうに行われてきたか。決して新聞紙上や一般に受け取られているように、政府の規制緩和政策を主要なテーマとして今度の改正が行われたのではない、ということをご理解いただくために申し上げます。中央労働基準審議会──労・使・公益の3者構成の審議会の、いわば基礎作業をするような労働基準法研究会という研究者中心の組織があります。実は1987年の労働時間法改正の時、私は基準法研究会の労働時間部会の座長を務めておりましたが、基準法研究会の作業をしながら、審議会に新しい政策を提示するというシステムになっていました。

この労働時間法の第1次改正以降、時間短縮を段階的に進めながら、私が座長を務めた労働時間部会以外に、1984年、85年ぐらいの段階で、就業規則等部会、契約法制部会と、2つの部会が作業をしていました。その後、労災補償の部会とか、いろいろな部会が基準法研究会に設けられました。そういう作業がずっと行われてきており、今回の基準法改正の幾つかの項目の中の相当部分は、平成3年ぐらいから活動していた労働基準法研究会の契約法制について検討する部会が1993年(平成5年)5月1日に出した報告書によって提起されました。それとは別に労働時間に関する研究会報告も出されていますが、1990年代に入って間もなくの91、92年ごろからこういう改正のための基礎作業に着手していました。

混乱を引き起こす2つの要因

ここでご理解いただきたいのは、先ほど申し上げた新しいタイプのワーキングスタイル、産業の変化に適応した新しい労働力の機会に対応するための法制度づくりの作業は、既に数年間にわたって行われてきていたということです。今回の改正にはプラス面とマイナス面があったんですが、私は、一般の受け取り方を大変混乱させた2つの要素があったと考えております。第1は規制緩和、第2は女子労働者の保護の廃止です。昨年、雇用機会均等法の強化と関連して、特に時間外・深夜に対する女子のみの規制が廃止されました。この2つの要素が、私どもの長い間の改正作業の流れの中で──こういうことを言うと特に女子の関係では怒られるかもしれませんが――正直言って攪乱要素、非常にディスタービングな要素になったと考えられるわけであります。

女子労働の保護の方は、ある程度理論的に明快に区別して理解することが可能で、これを理解しないで騒いでいる人は故意なのかどうかわかりませんが、規制緩和については、新しい基準法の将来像という点からいうと、区別がしにくくなるような要素が多分にあったのではないかと考えます。規制緩和は、基本的に政府のイニシアチブで様々な規制を行うことにより産業の活力が阻害されるので、それを緩めましょうということです。先ほどの資料1で言えば右側の、自律的で多様で創造的で弾力的なワーキングライフを阻害するものが規制で、右側の要素を強めて機会を開くという観点から言えば、規制緩和は非常に望ましい。ですから、改正作業の中で、新しいニーズに対応するという政策から言うと規制緩和は大変結構だと、こういうことになりやすいわけです。

規制緩和計画の3つの目玉

政府の規制緩和推進計画は、何度か出て改訂されたりしていますが、今回の私どもの作業に一番大きなインパクトを与えたのは、97年3月(昨年3月)の閣議決定です。この中で、雇用契約期間の上限を延長すること、裁量労働の対象を拡大すること、変形労働時間法制の運用の弾力化、この3つが一番重要です。

重要性では少し劣りますが、大変細かいことまで規制緩和政策の中に出ており、割り増し手当の算定基準から住宅手当を除外するというようなことまで入っており――規制緩和にしては随分、政府が規制しているじゃないかという感じがしますが――私どもからすれば、閣議レベルでは労働行政に対してちょっと余計なことを言い過ぎではないかという感じすらするわけであります。

そして、当然、女子保護の撤廃です。それと、基準行政の分野から外れますが、派遣のネガティブリスト化、有料職業紹介の自由化。この2つは安定局の方で具体的な対応がなされ、あるいは、現在なされつつあるわけですが、そういう大きな変化の流れの中に政府の規制緩和が出てきたわけです。

労働側と公益側の認識のギャップ

どうも審議会における労側の受け止め方は、私どもよりはるかに、政府の規制緩和政策について「押しつけられた」という意識が強く、これを受け入れることによって労働側の主張が敗れた、という受け取り方をされています。私は、この点について少し公益と労働の間に認識のギャップがあったのではないかと思いますが、正直に言うと、私は政府の規制緩和推進計画に従って審議会が何かやらなきゃならないとはあまり考えていませんでした──確かにそう言われればそうで、あるいは労働省の事務当局はそういう意識だったかもしれませんが、これについては、日本労働研究機構の高梨会長も派遣と職業紹介を扱う中央職業安定審議会をやっておられますが、やはり審議会の意向を無視して閣議で勝手に決めるのはおかしいんじゃないかということを、しきりに大きな声で言っておられて、私も全く同感でした。ですから、政府の規制緩和政策を審議会がそのまま鵜呑みにして──あるいは、閣議決定だからやらなきゃいけないのかもしれませんが――という意識は、あまり私どもにはなかったのです。むしろ規制緩和というのは、新しい基準法の全体の構想から見れば攪乱要因だったと私は受け止めています。

自由化がすべてならば労働法は終わり

この2年ほど、いろいろなところで話したり書いたりしていますが、私ども、少なくとも労働法学者の認識は大変はっきりしています。労働法は、もともと1から10まですべて規制ですから、規制緩和を大々的にやって自由化がすべての価値だということになれば労働法はもう終わりで、労働省もいらなくなるということではないかと思います。もし規制緩和という観点でこの議論をするなら、拘束的で阻害的になった規制は、時代に合わなくなったということで廃止あるいは変更し、必要な規制は残す。それから、むしろ新しい規制というのはたくさん出てくるんじゃないかと思っております。

そこで、レジュメの2番目に書きましたが、資料5の建議内容をご覧ください。本日は資料が多くなるので、建議そのものは省き、ご説明のために法案要綱をつけてあります。法案要綱は、主として基準法そのものの改正に必要な点を中心に書かれており、この法案要綱だけをご覧になると、建議で提起した我々の改正提案の相当部分が落ちております。もっとも、今度の法案要綱はいろいろ議論がありましたので、その辺を明確にするために、法案要綱としては大変例外でありますが、注をたくさんつけました。つまり、これは法案要綱だけれども、法律の本文以外に政省令でやる部分、それから、通達でやる部分まで書かれている部分があります。しかし、それにも増して建議ではもっと多くの政策を提言しております。ここに並べたのは21ですが、その中で明確に規制緩和と言って良いものは5つです。これが、建議を出し法案要綱を決めた段階で議論になっている点ですが、実はこれは全体から見れば一部分であります。この4つの点、特に契約期間の上限、変形労働時間制の1年のもの、割り増し算定、裁量労働については後で詳しく申し上げます。

流動性のある労働力のための保護

それから時間外・上限規制は強化と書いておきましたが、先ほどから申し上げているように、女子労働の保護の廃止の結果としてこちらでやることになったわけです。女子保護の廃止という点からすると強化ではないと言われますが、廃止は、そう言ってはなんですが、婦人少年問題審議会でおやりになった尻ぬぐいみたいなもので、こちらとしてはむしろ強化した。時間外・上限規制は、基準審議会では強化した部分であります。

契約の上限と変形労働時間制、裁量労働、この3つに今の時間外・上限規制を加えた4つが「規制緩和だ、規制緩和だ」と言われ、労働者の方は規制を外して使用者に都合の良いようになったと言われておりますが、それはごく一部分です。建議をよくお読みいただくとわかるのですが、私はむしろ、規制を強化した中でかなり重要な部分があると考えております。

まず、先ほどから申し上げているようなワーキングパターンの変化、労働市場の変化、労働力の変化の中で、雇用が流動する。その流動する雇用は、資料1の図式で高度の専門能力のある人たち――この人たちはあまり保護は必要でないと考えられがちですが――その人たちの一部あるいは全部にも保護が必要である。しかし、より雇用柔軟型で流動化する人たちが増えてくるわけで、日経連の言う長期蓄積能力活用型、いわゆる日本の終身雇用ですね、安定雇用、これは縮小していくことは間違いないわけであります。

そうすると、いずれにしろ、どの程度保護が必要かは種類によって分かれますが、両極に分かれる流動性のある労働力は増えていくわけです。そういう人たちの転職──転職というのは自発的もあれば、非自発的もあるわけですが――転職を通じての保護というものが非常に重要になっていく。そのためには、労働条件の明示、退職事由の明示は非常に大切です。高梨会長は、これを中基審でやったので、パート労働法の改正でやることがなくなってしまったと言っておられまして、それほど重要な新しい規制であると言って良いかと思います。ですから、これは審議会では使用者側の抵抗がかなり強かった部分です。

その他規制を強化した点

時間外・上限規制の意味については後で申し上げます。時間外・上限規制は、非常に弱いと言われていますが、私は、これはかなり立ち入ったものだと考えております。この点で、一般の認識と私の認識は全く違います。この点は後で詳しく申し上げますが、私はこれは規制強化と考えています。それから年休も、雇い入れ2年半以降は1年ごとに2日ずつ急速に増やしていく。長期雇用が減っていくわけですから、年休をより増大させるという意味では、これも規制強化であります。

それから甚だ不十分ではありますが、紛争解決、それから労使協定。労使協定は、本日の講演の後半で一番強調しておきたい点ですが、これからの基準行政は、国が規範を設定して民間に遵守させる、労使に遵守させるという、そういう基準準拠型ではなくて、積極的に労使が参加するものでなければだめだと私は考えております。わかりやすく申し上げると、安全衛生──職場の安全、健康といった点では、1972年にイギリスでローベンス報告というのが出ていますが、安全行政の分野では監督して最終的には処罰するという従来のスタイルでは安全は必ずしも守れないという考え方が次第に強くなってきています。

過労死を基準法で防げるか

誤解を恐れずに言えば、「働き過ぎ」「過労死」が、非常に悲惨な日本の労働者の生活というイメージでとらえられています。ご承知のように、今、アメリカでも過労死という言葉が辞書にローマ字で載るようになったりしています。日本の「過労死」は世界に冠たるもので、ワーキング・トゥ・デスということですね。過労死という現象はもちろん非常に憂うべきもので撲滅しなきゃいけないのは言うまでもないですが、これは、国の責任なのか、使用者の責任だろうか、あるいは、国だけ、使用者だけの責任なんだろうかということを考えると、ちょっと違うのではないか。

最近、自殺された方に労災を適用するかどうかということが問題になりました。特に遺族に補償をするとか、障害を負われた方に年金で補償するとかいうようなことは、もちろん必要ですが、それは全くの事後処置です。悲惨な事態が起きたことに対する事後的な救済ですね。

労働時間の時間外・上限の規制のところでもう1回立ち戻って申し上げたいんですが、監督行政で使用者処罰というのは大変強い。だから処罰をしろという考え方が、一般、特にジャーナリズムには大変強くて、処罰をすれば強い法律であるという認識がありますが、私は非常に疑問に思います。使用者を処罰しても、労働者はちっとも浮かばれない。労働者の具体的な権利・利益の擁護にはならない。これは一罰百戒の意味があるわけで、1つの規制の方法ではありますが、処罰ですべて問題が解決するわけではなく、むしろ現場で災害が起きないようにする、あるいは、基準を労使が納得して守る。特に日本人のような働き過ぎになりやすい労働者──これは、時間外規制のところでもう1回繰り返して申し上げたいんですが、働き過ぎは、使用者の責任ももちろんですが、労働者の責任が相当あるのではないか。それを考慮に入れない基準行政というのはやや問題があるのではないか。

労使委員会の活用

そういう意味で、労使協定──後で詳しく申し上げますが、裁量労働制に労使委員会というのを入れたのですが、これも「生ぬるい。そんなもの役に立たない」というご議論があります。私は、現場の労働者、労働組合がこれを大いに活用して役に立つようにしていただければ、役に立つようになるのではないかと考えています。そういう意味で、基準遵守型の基準行政というのは、非常にネガティブ、パッシブなものであります。そうではなくて、もっと能動的、アクティブな基準行政というものが今後は必要なのではないか。特に、自主性のある労働者、自律的な労働者像というものを考えた場合には。能動的労使参加型の基準行政というのは、もちろん現場で安全教育を徹底することを前提に、そのために国が補助金を提供するとか、様々なノウハウを提供するとか、国のやることはたくさんあります。ですから、これは決して規制緩和ではなくて、労働者に自主性を発揮してもらいながら、有効・適切な職場の労働者の安全・健康を守っていく必要があろうと、こういうことであります。

以上が、今回の改正での、少なくとも私個人、あるいは、審議会の内外を問わずある程度私と同じような考え方をしている労働法学者の基本的な考えです。

時短促進へとつながる流れ

それでは、各論の最初の問題点として労働時間法制に移りたいと思います。レジュメでは4番目になります。ここでは、主として裁量労働制、変形労働時間制の手直し、それから、時間外・休日労働の上限規制の問題に触れたいと思います。

労働時間法制を考える場合、私の意見は少数意見かもしれません。おそらく、我が国では世間一般や本日ご参加の皆様からもあまり賛同を得られないのではないでしょうか。でも、私の周りの人は大体同じような考えだと思います。

先ほど申し上げましたが、1987年の、基準法の最初のメジャーな改正の時に、私は基準法研究会の労働時間部会をやっておりました。この87年改正の第1段階の基礎作業については、1984年に出した労働時間部会の中間報告に書かれています。当時、政府は、先進工業国のトップクラスの産業国として、日本の労働時間はあまりにも長過ぎる、もっと時間短縮をしなければならないと言っておりました。当時、2、200時間とかいうような年間総労働時間で、国際的に見ても突出して長かったわけです。アメリカやその他からの国際的な圧力もあり、日本の社会のあり方も大きく転換して、内需促進型、福祉強調という流れの中で80年代になってから考え方が大きく変わり、時間短縮促進のための政府の政策が非常に強く出てきた時点で、「基準法の改正をやるべきだ」という声があがり、そういう流れの中で私どもは研究会の作業をやってまいりました。

画期的だった週45時間制

当時、法定1日8時間、48時間だったのを、この中間報告では週45時間を提案したわけです。実は、45時間というのは我々にしてはかなり思い切った提案をしたつもりでありまして、今から考えると信じられないことですが「かなり難しいんじゃないか」という感じが強かったわけです。もちろん、当時の使用者側の考え方からいうと、「とんでもないこと」でした。その中で中間報告は、週48時間を45時間に、そして同時に、1日8時間を9時間に、という提案をしました。今考えると大変浅知恵で、1日9時間まで認めようというのは、5×9=45で、週休2日制を実現するのには一番都合が良いわけですね。今考えると大変恥ずかしいのですが、大真面目にこういう報告書を出しました。ところが、新聞、その他ジャーナリズムで徹底的に叩かれて、1日8時間を9時間に延長するとは何事だと、大変に評判が悪かった。

労働時間制度の弾力化とフレックスタイム

この時、研究会は10人ほどの研究者で箱根で合宿したりして作業していたんですが、私がひそかに考えていたのは、労働時間の弾力化ということです。労働時間はヨーロッパでだんだん短縮が進んできてほぼ40時間制と週休2日制が定着した70年代にはすでに労働時間制度そのものの弾力化という考え方が非常に強く出てきていた。ご承知のように、60年代にすでにメッサー・シュミットの研究所でフレックスが始まって、これが燎原の火のようにヨーロッパで広がったわけであります。

私は70年代の初めに、この研究会とは別ですが、日本労働研究機構の前身の日本労働協会の研究プロジェクトでヨーロッパに時間制度の調査に行きまして、1975年にフレックスタイムについての本を書いて出版したのですが、これが売れると思ったらあまり売れませんでした。これはちょっと早過ぎたわけで、当時、ルフトハンザとかの外資系企業、その他ごく少数の日本企業でフレックスを採用していましたが、世の中にあまり顧みられなかったわけです。

日本の労働時間短縮

私のその時の考え方は、労働時間短縮も非常に重要で日本はやっていかなければならないが、同時に労働時間の弾力化ということを考えていかなければいけない、というものです。この考え方、つまり週休2日制の実現のために1日9時間を認めて45時間でやろうという発想は、弾力化することによって時短を促進するというもので、その後、今日に至るまで流れを引いていると思いますが。非常に事業の繁閑があるような業種の場合には、1日の労働時間あるいは週の労働時間をインフレキシブルにリジッドに強制する厳格な時間法制は、必ずしも時短になじまない。時短のためには弾力化をやろうというものです。その結果、1987年の法改正でフレックスが初めて正式に登場し、それから変形労働時間制が従来のものにプラスして新しくできて、4週間のものを1カ月にするというような形の弾力化が第1次改正で成立し、その後、1年の変形労働時間制を認めるというように次第に拡大していったわけです。

労働省は、変形労働時間制を通じての弾力化はすべて時間短縮のため、ということで推進してきましたが、私は、先ほど来申し上げているワーキングスタイル、労働力の質的な変化が念頭にありました。新しいタイプの働き方は、基本的に弾力的な労働時間、時間配分の弾力化ということで、工場労働との顕著な違いはそのあたりにあるだろうと当時考えておりました。これが1つです。

基準法研究会では、1984年の中間報告ののちに、中間報告が評判が悪いので1985年に最終報告を出し、1日8時間、週45時間に直して提案し直したわけですが、これが白井泰四郎先生の方の中央労働基準審議会で一挙に40時間になりました。これは非常に大きな決断でした。この決断がどこで行われたか、自民党の方から出たアイデアらしいということであまりはっきりしませんが、ともかく、あっと驚くような、一挙に40時間という形で実現した。ただ、もちろん使用者側の抵抗が非常に強いので「ステップ・バイ・ステップで」ということでしたが、今日から考えると英断で実現したわけです。

時短を法律で進めたのは日本だけ

基準法研究会ののち、審議会をこの10年やってきた過程で私が一貫して感じていたのは、「時間短縮を法律でやる」という発想に対する違和感です。先ほど、資料2の「主要国の時間外・休日規制」をご覧いただきながら説明したように、時間短縮を法律でやった国はありません。最長労働時間40時間を法定で切っているのは、主要国ではフランスだけですが、フランスは全国主要労働協約で実現した時間を法律化するという慣行でやってきたので、法制度が現実を引っ張ってきたというわけではないのです。その証拠に、日本よりはるかに法律上の最長労働時間の長いドイツとかイタリアが、日本より200時間も300時間も年間総労働時間が短いわけです。ですから、時短を法律でやるというのは大変な例外です。法律で縛らないと短くならないというのは情けない話だ、と私は思っております。

1988年から審議会を担当して、業種と規模で四角のマスをつくり、1つずつ、ここは46時間、ここは44時間、ここは40時間というような作業を少しずつやって、ようやく昨年4月から特例以外は40時間という形にまで持っていったわけです。第2次改正の時、それから昨年の2年間の指導期間というのができた時も含めて、審議会が非常に荒れました。使用者側・中小企業代表の方々の抵抗は非常に強かった。これを無理やり押し切ったんですが、私の心の中では、相当強引なやり方だという考えが強かったわけです。だからといって逃げ腰だったわけではありませんが、基本的に疑問がある中で、なるべく弾力化の方向を強めていくべきだと考えておりました。ですから労働時間法制の弾力化というのは、少なくとも、政府が「規制緩和」を大声で言うようになった時点で初めて出てきた問題ではないのです。

新しいニーズに応じた労働時間制度の活用を

労働時間制度の弾力化を考える時、やはり、新しい産業のニーズ、新しいタイプの労働者のニーズに対応することが必要です。女子の時間外・休日労働などに係る女子保護規定の廃止に対して、日本の女子労働者の代表の方々が非常に抵抗されるわけですが、家庭生活を守るという点から言えば、フレックスタイム制度やその他の弾力的な制度をもっと活用して、家庭生活のニーズ、自己啓発のためのニーズと、ワーキングライフというものをマッチングさせるための努力が必要ではないかと私は考えています。残念ながら、弾力化は労働者の生活リズムを乱すというマイナス要素があり、それをどう調整するかというのは非常に難しい問題です。ですから、何でも野放しに弾力化を推し進めて「それが規制緩和だ」、という考え方には私は賛成しません。これが労働時間法制についての私の基本的な考え方です。

所定労働時間の短縮を法律でやるということは、日本の社会、日本人のワーキングパターンからして、やむを得ない次善の策を我々はとってきたわけですが、特に変形労働時間制は、その中で長期的な観点で休日の増加を図るものです。それから今申し上げたような意味で、事業の繁閑のあるところでは時短の呼び水として変形労働時間制を活用する、という方向で考えてまいりました。変形労働時間制はこれまで比較的活用度が低く、各種の変形労働時間制を合計すると、昭和63年から平成8年の間に、企業の割合では7%から40%に、労働者の割合では15%から44%に、というふうに、全体としてはかなり急激に増えています。この数年間、特に1年のものを認めた第2次改正以後ですが、1%に満たなかった1年のものが急激に増えてきて、平成8年では15%に達しました。

それにしては、フレックスの広まり方が非常に遅いというのが私の印象です。フレックスは、うまく活用して自主的・自律的な労働生活に対応するよう工夫すれば、女子労働者を含めた労働者の、家庭生活に対応した「新しいワーキングライフ」の最も有効な手段になるのではないかと思います。欧米では今や、オフィス労働はほとんど100%フレックスなのに、日本ではちっとも進まない。それはやはり、サラリーマンも含めて在来型の画一的な自律性のない仕事のしかたが影響しているのではないでしょうか。

裁量労働の範囲の考え方

この中で、変形労働時間制の1年のものについて活用しやすくする、それから、大変普及が遅れている裁量労働を拡大をしようというのが、今回の私どもの提案です。裁量労働の範囲について私どもがどういう提案をしたかと申しますと──現行の裁量労働は業務を限っており、最初に認めたのは、基準法第38条の2の4項で「命令で定める業務」です。資料6にあるように、新商品・新技術の研究開発・研究部門、情報処理システム、ジャーナリズムの取材・編集、デザイン──デザインは非常に広い意味のデザインで、様々なものが入っていますが――プロデューサー、ディレクターと、ある意味で新しい業務分野のプロフェッショナルを中心に、従来認めてきました。平成9年から拡大したものはコピーライター以外はすべて、いわゆる「士」職、資格を持ったプロフェッショナルということです。これは、大変狭い範囲でしか認められていない、と使用者側は主張してきました。このように狭い範囲に限定した理由は、労働側が乱用を恐れて抵抗が非常に強いために、限定のしかたが非常に難しく、資格を持っている場合は比較的はっきり区別ができるからです。そういうわけで資格を要する職を中心に限定してきました。今度の提案では、これを少しずつ拡大して、資料1のワーキングスタイルの表の右側の高度専門能力活用型については裁量労働をもっと認めていって良いのでは、ということを言っています。

企画、立案、調査、分析業務も対象に

この裁量労働制の部分についてですが、今回、私どもは建議で「本社及び事業場の本社に類する部門における企画、立案、調査、分析業務」という限定した範囲で認めることを提案しました。ところが、「本社」という言葉が法令用語としてはないんだそうで、法制局から異議が出て、法案では「本社」という言葉を落としたので、少しあいまいになったというようなご議論もありますが、実質は建議に書いたとおりです。本社あるいは本社以外のところでは、本社の機能に類する部門におけるこういう業務に限定する、ということであります。

これについては労使の考え方が真っ向から対立し、調整が大変でした。結局、具体的に現場で話し合って決めてもらうのが一番良いのではないかということで、労使委員会で細目を決めてやっていただくという方向を出しておきました。この考え方は、先ほど申し上げたように私どもが新しい基準行政の方向として考えている、「職場での能動的な、自主参加型の基準行政」というものへの一歩前進ではないかと考えております。

規制強化の項目の中で一番下に書いておいた労使協定については、労使協定締結の労働側の代表者の選出手続や、そういう人たちに対する不利益取り扱いの禁止を、政省令あるいは通達で定めるという提案を建議でいたしました。そういう方向を目指しております。

争点となった裁量労働制

そういうことで裁量労働制は随分議論し、次に申し上げる有期契約と同様に、労働側と公益あるいは事務当局との間で繰り返し辛抱強い議論が行われたのですが、最終的に労働側にはご理解いただくことができませんでした。その最大の理由は、「限定して認めると無限に拡大する」というご議論で、私は大変残念でした。有期契約も同様ですが、制度というのはすべて乱用の危険性があります。よって、新しい制度をつくる場合はなるべく乱用されないような手当てをするため、様々な工夫をする努力をしなければならないのは当然なのですが、「乱用の危険性があるからだめ」という硬直的な対応にはちょっと問題があるのではないか。これは、少し極端に言うと、「道交法違反が多いから車はやめちゃえ」というのと同じでしょう。それも1つの考え方ですが、ニーズがあり、モータリゼーションを止めるわけにはいかないですから、やはり「道交法をどうやって守ってもらうか」という点で工夫すべきだろう。ニーズがあるのに、乱用の危険があるから認めないという対応は、現実的でないのではないかと私は考えます。

使用者側は逆に、なるべく拡大しよう、という姿勢です。欧米、特にアメリカでは、我々が考えているような裁量労働制が必要なところというのは大体、時間規制が外れている部分なんですね。つまり、プロフェッショナルとか管理監督者などは、先ほど申し上げたように労働者全体の約20%のものは外れているのが普通です。日本は、一方でかなりリジッドな労働時間制度の水準が上がってしまったわけですから、そこを基準法の適用範囲で手当てをするか、裁量労働制などで手当てをするか、どちらかということになります。使用者側の言うように野放しで拡大するわけにはいかないわけで――使用者側も「絶対すべて野放し」ということを言っているわけではありませんが――相当限定し、しかも現場のご理解を得て実行するというのは、私どもが非常に苦心した提案だということであります。

欧州では臨時雇いは全くの例外

次に、これと並んで大変議論になったのが有期契約であります。日本では、基準法で期間の定めをする場合は最長1年、例外は、一定の事業の完了に必要な場合に「完了までの期間」という例外しかないわけです。ここでも、イギリスとアメリカは全く制限がありません。ヨーロッパはかなり厳格にテンポラリーワークを規制しています。日本で言う派遣と臨時すべて含めてヨーロッパでは一時厳しい規制が行われて、ドイツやフランスでは基本的に「臨時というものは全く例外」という考え方が大変強かったのです。

例えばドイツでは、60歳未満の場合は最長2年で、2年以上のものは認めないんです。60歳以上は制限がなくなるのですが。そもそも臨時については、正当な理由がないと期間の定めのあるものは認めないという、非常にリジッドな法律です。フランスは「法律で認めるものだけ」というポジティブリストみたいなもので、これはアップレンティス(徒弟)、派遣、セールスマンとか季節労働とか一時的な事業。それから正規の労働者が一時的に不在の間の代替要員――というように非常に限定した政策をとっています。

私は、ヨーロッパのように「臨時は全くの例外」という非常に限定的な制度も、政策としては1つのチョイスだと思います。しかしこれは、ご承知のように、ヨーロッパの労働市場がフレキシビリティを失った最大の問題でありまして、ヨーロッパ諸国の規制緩和の最大の対象です。極端に言うと、70年代以降ヨーロッパ大陸では、一方で解雇を非常に厳しく制限し、大変大幅な解雇予告期間あるいは予告手当をつけた国々が続々と増えたわけです。これがヨーロッパ経済の活力を著しく失わせたという考え方──客観的にそうかどうかは問題ですが――そういう考え方はかなり強く、労働市場のフレキシビリティという点でアメリカと比べてヨーロッパが劣ったとされる最大の原因です。

では日本ではどうするか

日本は、一方で終身雇用という形で安定雇用を相当の部分について保持しながら、有期雇用契約については1年以内とかなりリジッドに制限していますが、実際には反復更新することにより、解雇や雇い止めなどが生じた時の、その労働者の保護は裁判所が判断をする、という形になっています。この裁判所の判断が、どっちが鶏か卵かわかりませんが、企業の解雇をなるべく回避するという慣行とあいまって、雇用安定を支えています。裁判所の判例が、終身雇用の労働者について適用する解雇制限の法理を、不安定雇用にも準用するという形をとることによって、雇用安定を達成しながら解雇の効力について具体的な判断をする。企業が判例の考え方を尊重しながら、あるいは逆に、判例は企業――特に大企業の慣行を尊重しながら、雇用のフレキシビリティを失わせない範囲で雇用の安定を維持してきたという点で、雇用の安定が失われた欧米に比べると──ヨーロッパはフレキシビリティが失われ、アメリカはフレキシビリティがあるという違いはありますが――これまで日本はかなり中庸を得た、バランスのとれた政策をとってきたと言えると思います。

では不安定雇用をなくすために、従来の1年以内という制度をヨーロッパ的な「臨時は全く例外」という制度に変えるのでなければ、どうするか。基準法研究会の労働契約の部会では、5年に延長しようという提案をしておりました。これは、1年以内ではあまりに短いので、「5年以上のものは5年に定めたものになる」という民法の雇用契約の考え方にちなんで5年という期間を提案したわけです。現行の基準法では1年以内のもの以外は「事業の終了まで」ということですが、この「事業」は――解釈が妥当かどうか実は問題があるのですが――事業場ということになっておりまして、例えば建設現場などで2年なら2年、3年なら3年のプロジェクトでその事業場がなくなるという場合は良いけれど、ある事業場の中の1つのプロジェクトという意味では、1年以上は認められないというのが現在の公定解釈です。そうなると、新しい業務について2年、3年を認める必要性がどうしても出てくるだろうということです。その結果、私どもの建議では、新商品の開発、新規事業、海外事業などに必要な有期のプロジェクト、それからもう1つは、定年退職等の高年齢者、こういったものに限って上限を3年に延長するという提案をいたしました。

上限を延長しても対象は限定されている

ところが、基準審議会の中でもそうですが、特にジャーナリズムでこの提案に対して非常に反対の議論が強く、風当たりが強かった。これには2つ誤解がございます。法案要綱の一の(一)をご覧いただくとわかりますが、「新製品、新技術開発・研究に必要な専門的知識、技術、経験で、労働大臣が定める基準に該当する高度なものと認められるものを有する労働者」と、かなり高度なものに限定して考えています。なおかつ、そういう労働者が「不足している」事業場で、そういう労働者を「新たに」確保するために締結する労働契約であると。その次のところも、「事業の新しい開始とか転換、拡大、縮小、廃止のための業務で完了が予定されていて、高度な分野で労働者が不足している事業について、労働者を新たに確保する」、こういうふうに非常に限定して書かれています。ですから一般に批判をしておられる方は、この限定を無視しているか、またはよく読まないで反対していらっしゃるんじゃないかと思います。あるいは、「それは信じられない。実際には必ず拡大する」という、裁量労働について先ほど申し上げたのと同じ考え方でしょうか。しかし決して、安定雇用に代替するものとして不安定雇用を導入する、ということではありません。いわんや、一部、女性の方々が非常に危惧をされているような、女子の若年定年制とかいうようなことが、これで可能になるということは全くないわけです。

非常に限定をして、かつ、乱用できないように、これに基づいた法律の条文をかなり限定的に書く。しかも政省令でもっと細かく書くし、通達、指針でも限定するということであります。審議会のレベルでいえば、そういう具体的な措置については審議会でまた改めて議論することになるわけで、そういう工夫をすることが必要でしょう。

そして何よりも、今の1年を、2年とか3年にしたら雇用が不安定になるというふうに言われるわけですが、しからば、2年、3年にすることによって、少なくとも雇用機会は増える部分があるわけですね。その部分は、もしも法律を改正せずに相変わらず1年に限定して非常にリジッドに規制をしておけば正規雇用が増えるかというと、そんなことは全然ないわけであります。もう少し長期的に見た場合には、先ほどのような意味で労働力の分解が進む中で現在の経済の状況から考えると、事態はそんなに甘くないわけです。雇用の維持は大変重要で、もちろん、第1の目標であろうかと思います。しかし、それは正規の安定雇用を何が何でも維持するのが可能ならば良いわけですが、そういう事態ではないのではないか。国際競争の中で日本経済の将来を考えていくと、もう少し弾力的な雇用機会が認められるような法制度が必要であろう。そして、乱用できないようにしていく必要があろうかと思います。

時間外労働適性化指針の法的根拠を

最後にもう1つの大きな論点、時間外・上限規制についてですが、法案要綱の七です。時間外上限規制は、非常に弱い弱いと言われますが、我々の提案は、男女共通でこれまで一般に行ってきた時間延長のための適正化指針──年間360時間というものですが――この適正化指針は、実は従来は法的根拠なしにやってきていたので、今回法律上の根拠を明確に定めましょう、ということです。これは非常に大きなことで、女子保護規定の廃止に伴い、昨年夏の国会で「男女共通の時間外・上限規制をすべきである」という附帯決議がついたわけであります。これに基づき、今回この提案をいたしました。あくまで適正化基準ですから、法律根拠を書いたにしても、使用者がこれを守らずに時間外協定を届け出てきた場合には、監督署は適正化基準に従って時間を短くするよう指導しますが、その指導に従わないで使用者側が労働者側からの協定をとって届け出をしてきた場合──例えば郵送されてきた、あるいは、強引に置いて行ってしまった場合には、届け出があったということにならざるを得ないわけです。ですから、時間外・上限を法律で決めるということとは違うわけで、そういう意味では、弱いことは間違いない。ゆえに、弱い、弱いというご批判があるわけです。

時間外労働を法律で縛ることについて

ところが、資料2の「主要国の時間外・休日規制」をご覧いただけばおわかりのように、かなり規制が厳しいフランスやドイツでも1日10時間という規制で、協約でやればこの範囲で例外が認められるわけであります。日本では、労側や婦人団体から「労使協定についても上限規制を法律でやれ」というご主張が一部にありますが、そんなに強く規制している国はヨーロッパ大陸以外に集中しています。これと並んで、割り増し手当で時間外休日労働を抑制するという方法がありますが、この点での労働側の提案は、時間外50%、休日100%というご提案でした。これは、先ほどから申し上げている「法律で時間短縮を推進する」、「法律によって長時間労働を防ごう」という発想の典型です。

そもそも、適正化指針、いわゆる「目安」に頼らなくても自主的に「協定を結ばない」ということを労働者が主張すれば簡単な話で、時間外・休日労働を強制できないように、現在の労働基準法第36条で労働者は十分保護されています。しかし現実には現場で拒否できないという場面があるなど大変難しいので、ある程度、適正化指針という形で行政指導でやる必要があろうと考えるわけです。しかし、これよりさらに立ち入って法律が面倒を見るというのは、やはり邪道なのではないか。基準行政というものの本質から考えて、国がそこまで面倒を見るのは、現在の基準法の方向としては行き過ぎなのではないか。そういうところからは、日本の長時間労働はなかなか払拭されない。法律でいくら縛っても抜け穴ができて、「ヤミ残業」、「サービス残業」は実態として存在する。これは、短期労働、不安定雇用についても同じような問題がありますが、「自由で自主的な生活」を選択するならば、「会社人間で猛烈社員で会社の言うなりに他律的な労働に従事する」という生活よりは、より豊かでない生活を選択することがあり得るわけで、どちらをとるかということではないか。もちろん、これはバランスの問題ですが。

国家に依存し過ぎればいずれツケが回ってくる

それから女子労働保護の関係では、いわゆる激変緩和です。平成11年から女子労働保護が廃止されるので、その後の経過措置として――法案の一四「附則」のところの(二)からになります――この適正化指針の中で家庭責任のある女子については、建議には当面3年という考え方で出していますが、変化の衝撃を緩和するための手だてを講じました。適正化指針を法律で書き込むということをした結果、ある意味では大変皮肉な結末になったんです。法案の七の(二)、「使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、労使協定で延長する労働時間を定めるに当たり、当該労使協定が(一)の基準に適合したものとなるようにしなければならないものとすること」と、これに従った条文を入れることになるわけです。つまり、労使協定に対する適正化指針、残業の目安に法的根拠を与えるということになると、使用者に行政指導で守ってもらうということです。これは若干ラフに言えば、努力義務を使用者に負わせるわけです。ところが、協定で時間外・休日労働が初めて認められるわけですから、協定は使用者だけでは決めることができない。労働者あるいは労働組合がある場合は労働組合にも、この目安を守ってもらうという努力義務が課せられるということです。

これについて、労働側からは「なぜ基準法で労働側が義務を負うのか」という異論が出ましたが、私に言わせれば、あまりに国家の規制に依存すると、逆にこういうはね返りが来る、ということです。そういう意味でこの条文は非常に象徴的です。つまり、今後の基準行政は、やはり労使双方が努力して能動的、自主的に守っていかなければ実現しないものであると。そうでなければ、国が労使の意思を無視して最長上限を決めることになる。世界的に見ると、労使が合意し、特に労働協約で決めている場合には国家規制は排除される国が多いのです。もちろん、その背景には、労働組合が労働者に不利なことはやらないということがあるのですが、事実、少なくともヨーロッパの労働組合はそう簡単に長時間労働を認めません。

日本の労働組合の組織率は、アメリカ、フランスに次いで急激に低下してきて、このままいくとさらに低下するのではないか。私は、労働組合が弱くなれば労使関係はうまくいかず、産業も衰退すると思っております。労働組合がここで頑張らなければ、おそらく労働者を守るための他の組織が出てくるはずで、そういうことを考えながら今後、労使関係法についても、現在の労働組合を中心とした、特に紛争処理制度、不当労働行為制度、労働争議の調整という労働委員会制度中心の制度では対応できない事態になりつつあるのではないか。あくまで、最初に申し上げたような意味で、自主性のある自律的な創造的な労働者の利益が守られ、必要な法を──単に理論的に強い法律、ではなくて、実際に機能する法律というものを我々は考えていかなければならないのではないかと考えております。

その他の課題

最後に、中基審で論点としてあげられていながら今回の改正案に盛り込むことができなかった点がいくつかあります。われわれが考えておりました中で、例えば解雇法制の見直しです。先ほど申し上げたように、日本は主として判例でやってきたわけですが、これをもう少し法制度化することの是非も、もっと議論をしなければならなかったと考えています。

それから就業規則制度は、今回の審議の中では、例えば現在は10人未満の事業所については適用がないのを、5人までに拡大するという考え方もあり得たわけですが、就業規則に依存して労働条件を規制するやり方は古いのではないか。やはり労使協定というものを考えていく必要があると考えます。解雇の問題とか労使協定の問題などは使用者の抵抗が非常に強いところなので、労働組合がもっと腰を据えて頑張らないといけないでしょう。

もう1つは、これについては私は圧倒的少数でありますが、人種差別、年齢差別、障害者差別について基準法でもっとはっきり規定をし、有効な措置を講ずるべきだと考えています。これも、審議会の議事録の中に問題点として残しておきました。私以外に言う人がいないので、これは絶対書いておけということで頑張って残してありますが、そういう問題について、弱者救済という観点からいって、資料1の左側の方の労働力に対する手当てが不足している部分が相当あるわけです。そのあたりを今後やっていく必要があろうかと思います。

散漫ではございますが、私がこの10年近く考えてきたことを、今度の改正法案の論点に沿って申し上げさせていただきました。

資料2 主要国の時間外・休日規制
アメリカ 上限規制なし 割増 50%
(週40時間超え)
イギリス 上限規制なし
割増(協約)
  • 平日 50%
  • 土日100%
フランス(39h)
48時間(絶対的上限)
1日
10時間(労使協定で12時間まで)
年間
130時間(協約で例外可)
休日
  • 1週6労働日を超えること禁止
  • 週休は継続24時間以上
(適用除外あり)
  • 週8時間まで25%
  • 8時間超 50%
ドイツ(8h) 1日10時間まで年60日(協約で例外可)
(例外 手待時間、緊急・非常、建設・組み立て、継続的交替制)
法制限なし
イタリア(8h48h) 規制なし 割増10%
±15%失業救済金庫へ
日本(8h40h) 協定によれば制限なし
  • 時間外 25%
  • 休日 35%
資料3 主要先進国の労働時間制度 (1)
アメリカ イギリス フランス ドイツ イタリア EC指令(注)
根拠法 公正労働基準法 労働法典第2巻 労働時間法の統一及び弾力化のための法律 工業的または商業的経営における工員及び職員についての労働時間の制限に関する法律
法定労働時間 1週40時間(割増賃金の計算基礎として) 法令上の規定なし 1週39時間 1日8時間 1日8時間または1週48時間 1週の労働時間については、法律、規則もしくは労働協定等による
法定労働時間の特例
  • 石油製品の卸または大量販売の地方的独立企業(年間売上100万ドル未満等)
    1日12時間、1週56時間の特例
  • 消防活動を行う労働者、法律執行活動(矯正施設を含む)に従事する労働者
    4週で216時間
  • 小売またはサービス業について、その労働者の通常賃金率が最低賃金率の1.5倍以上で、かつ賃金に占める歩合給の割合が5割以上の場合には、週40時間を超える労働について割増賃金の支払いを要しない。
  • 換算制度(一定の業種について39時間を超える労働時間を命令において定め、これを39時間とみなす制度)
    • (1)守衛及び監視業 54時間
    • (2)ホテル、カフェ、レストラン
      • 調理人 44時間
      • その他 49時間
  • 労働協約または労働協約に基く事業所協定により、
    • (1)労働時間のうち通常かつ著しい範囲で手待ち時間がある場合 1日10時間
    • (2)他の変形期間の設定
    • (3)変形制を用いずに年に最高60日を限度に1日10時間
  • 農業労働者及び季節的労働者については、1日10時間、1週60時間
資料4 主要先進国の労働時間制度 (2)
アメリカ イギリス フランス ドイツ イタリア EC指令(注)
適用関係
  • 公正労働基準法が適用
    • (1)すべての病院、学校
    • (2)すべての公的機関
    • (3)(1)、(2)以外で、通商に関連する被用者を2人以上雇用し、かつ年間の売上・取引総額が50万ドル以上の企業
  • 労働時間法制に係る適用除外
    • 管理監督者
    • 専門職
    • 外勤セールスマン
    • 季節的な娯楽・レクリエーション事業の労働者
    • 農業・水産業
    • アナウンサー、ニュース編集者等
    • 住み込みの家事サービスに従事する者
    • タクシー運転者
    • 映画館に従事する者
    • 小規模地方新聞(発行部数4000未満)、電話交換手(電話機750台以下)
    • 8人以下の林業労働者
  • 労働時間法制の適用除外
    • 商業代理人
    • 家事使用人
    • 住み込み不動産管理人
    • 取締役
    • 幹部職員(法律上定義規定は存在しない)
    • 家内労働者
    • 坑内労働者
  • 労働時間法制の適用除外
    • 事業所組織法5条3項の幹部職員及び主任医師
    • 公務に従事する労働者で人事について独立の権限を有する者
    • 住み込みの家事労働者
    • 聖職者(他の法律の適用)
    • 年少者
    • 船員
    • 製パン業、製菓業
  • 労働時間法制の適用除外
    • 家事労働者
    • 管理者
    • 外勤セールスマン
    • 監視・断続・待機労働(管理人、警備員、電話交換手等)
    • 船員
    • 公務員

空路、鉄道、道路、海上、内水及び湖沼における輸送、漁業、その他の海上労働及び訓練中の医師の業務

(注) EC指令……労働時間の設定の局面に関する1993年11月23日の理事会指令
(この指令は、労働時間を設定する場合に安全及び健康のために必要とされる最低限の要件について定めるものである。(第1条))  
なお、加盟国は、この指令の具体化に必要な法律上及び行政上の規定を整備するため、1996年11月23日まで猶予期間を与えられているが、加盟国がこの期間内に指令の実施体制を整えない場合には、EC委員会はEC設立条約により指令違反として是正手続きをとることができる。
資料5 建議内容(平成9年12月)

※ △は緩和でも強化でもないもの。

契約期間の上限
解雇予告の見直し
労働条件明示
退職事由明示
変形労働時間制 1年
1ヶ月
一斉休憩
時間外・上限規制
激変緩和
代償休日
割増率
割増算定(住宅手当除外)
深夜業
裁量労働
裁量労働の要件・手続
年休
特例
その他 法適用
就業規則
紛争解決
労使協定
資料6 裁量労働の範囲(現行)
新商品・新技術の研究開発、研究業務
情報処理システムの分析・設計
新聞・出版の取材・編集
デザイナー
プロデューサー・ディレクター
(平成9年より)
コピーライター、公認会計士、弁護士、
一級建築士、不動産鑑定士、弁理士