職業相談に役立つツール開発を目指して

JILPT研究員 榧野 潤

私たちは、プロジェクト研究「ホワイトカラーを中心とした中高年離職者の再就職支援に関する研究」の一環として、再就職のためのカウンセリング技法研究を進めています。

そのなかで、職業相談の過程や特徴を客観化するためのツールとして、職業相談・職業紹介逐語記録作成・解析システムを開発しています。

このシステム開発のねらいは3つあります。

1.逐語記録の作成が容易になる

逐語記録とは、職業相談におけるやりとりやその内容を検討するため、求職者と職業相談担当者の発言を紙面に記録したものです。

その作成は、発言の内容を入力したり、発言に一つずつ番号を振ったり、罫線を引いて表を作成するなど、かなり大変な作業です。

その負担がかなり軽減します。一定の様式に従って、発言の内容を入力するだけで、あとは自動的に発言に番号を振ったり、罫線を引き表を作成してくれます。

2.職業相談の経験を共有できる

職業相談の過程や特徴を客観化することにより、より多くの職業相談の経験を共有できるようになります。

たとえば、このシステムを使って、さまざまな職業相談の内容や発言のタイミングを数量化し、データとして蓄積します。そうすると、性別や年齢層などによって、職業相談のやりとりがどのように変わるかがわかります。

もし職業相談後、求職者が再就職できたかどうかというデータがあれば、再就職支援に有効な職業相談のやりとりもわかるでしょう。

3.職業相談担当者の癖がわかる

職業相談は言葉のキャッチボールのようなものです。

いろんな人とキャッチボールをしているうちに、自分自身の球の投げ方や球筋の傾向がわかってきます。

これと同じようにこのシステムを使って、一人の職業相談担当者が自分自身の職業相談事例を複数集めて分析すれば、自分自身の癖が見えてくるでしょう。

たとえば、指導や助言などの会話が多いとか、出来事や状況の説明よりも、感情的な表現が多いとか。

なんとなく経験的にわかっていたことでも、数字で示すことができれば、自分自身の癖をはっきりと自覚することができるでしょう。

現在、ハローワーク等の職業相談の現場での試験的運用を目標として、プロトタイプ版の改訂をしているところです。この改訂版を使って、現場の声を聞かせていただき、役に立つ、より使いやすいツールの開発を目指しています。