直近5年での正社員との待遇差の是正の取り組みについて、ほぼ半数の事業所が不合理な待遇差がないことを確認済み
 ―― 東京都の2025年度「パートタイマーに関する実態調査」集計結果

国内トピックス

正社員と非正規社員の不当な待遇差を禁止するための法律であるパートタイム・有期雇用労働法および同一労働同一賃金ガイドライン等の法制度が施行されてから5年以上が経過するなか、同法の施行や社会情勢の変化が、中小企業のパートタイマーの雇用、処遇の改善等にどのような影響を及ぼしているかを把握するため、東京都は2025年度「パートタイマーに関する実態調査」を実施し、その結果を4月22日に公表した。パートタイマーを雇用している事業所のほぼ半数にあたる48.1%が、この5年間の不合理な待遇差をなくすための取り組みについて「不合理な待遇差がないことを確認したので、実施していない」と回答した。

調査は事業所調査と従業員調査からなる。事業所調査は、都内の常用雇用者数30人以上の中小企業3,207事業所を対象に、2025年9月10日~10月10日に実施。989事業所から有効回答を得た(有効回収率30.8%)。従業員調査は、調査対象事業所に勤務するパートタイマー2,000人を対象に、同年10月15日~11月14日に実施。651人から有効回答を得た(有効回収率32.6%)。なお、前回調査(2021年度)は2021年10月1日を調査時点として実施している。

事業所調査

<制度や手当の支給の有無>

「役職手当」「退職金」は「正社員のみある」事業所は75.3%

パートタイマーを雇用している事業所に、正社員とパートタイマーの処遇の違いを明らかにするために各種の制度や手当の有無を制度・手当ごとに尋ねたところ、「正社員のみある」との回答割合は、「役職手当」が75.3%と最も高く、「退職金」(74.1%)、「家族手当・扶養手当」(59.1%)、「住宅手当」(53.0%)が5割以上だった(図表1)。

図表1:正社員とパートタイマーの処遇の違い
画像:図表1

(公表資料から編集部で作成)

「正社員・パートともにある」の回答割合をみると、「通勤手当」は95.1%と9割を超え、「慶弔休暇」(62.6%)、「病気休職」(53.6%)、「定期的な昇給制度」(50.3%)が5割以上で、このほかは「教育訓練制度」41.3%、「休業手当」34.9%、「役職手当」13.9%、「退職金」12.2%、「家族手当・扶養手当」9.0%、「住宅手当」3.9%、「皆勤・精勤手当」3.7%の順となっている。

内容に差があるとの回答割合が高い「定期的な昇給制度」「退職金」

正社員とパートタイマーの双方に制度や手当が「ある」と回答した事業所に、その制度の内容に正社員とパートタイマーで差があるかを尋ねると、「定期的な昇給制度」(75.1%)と「退職金」(72.2%)では「ある」との回答割合が7割を超えた。

また、「役職手当」(45.1%)、「教育訓練制度」(34.0%)、「家族手当・扶養手当」(30.2%)では、「ある」との回答割合は3割以上で、このほかでは、「病気休職」が29.7%、「皆勤・精勤手当」が27.3%、「慶弔休暇」が26.5%、「休業手当」が23.8%、「通勤手当」が17.8%、「住宅手当」が17.4%となっている。

制度の内容に差がない割合が最も高いのは「通勤手当」

一方、制度の内容に正社員とパートタイマーで差が「ない」と回答した割合をみると、「通勤手当」(79.5%)、「住宅手当」(78.3%)、「慶弔休暇」(71.9%)、「休業手当」(71.8%)は7割以上で、「皆勤・精勤手当」(68.2%)、「病気休職」(67.8%)、「家族手当・扶養手当」(66.0%)、「教育訓練制度」(65.6%)では6割台だった。

<処遇改善に向けた動き>

待遇差をなくすための取り組み内容は「基本給の引き上げ」が最多

パートタイマーを雇用している事業所に対して、直近5年間に正社員とパートタイマーとの不合理な待遇差をなくすための取り組みの実施状況について尋ねた結果をみると、「不合理な待遇差がないことを確認したので、実施していない」が48.1%とほぼ半数で、2021年度の前回調査(32.9%)から15ポイント以上増加した。「実施した」は30.6%(前回調査29.6%)で、「実施していない」が15.7%と前回調査(23.9%)から減少し、「実施する予定である」が4.6%(同11.5%)となっている。

正社員とパートタイマーとの不合理な待遇差をなくすための取り組みを「実施した」または「実施する予定である」と回答した事業所に、具体的な取り組み内容を項目ごとに尋ねると、「実施した」と「実施予定」を合計した回答割合が最も高かったのは「基本給の引き上げ・算定方法の変更」で、56.3%と5割以上に及んだ。

このほかでは、「正社員定年後の継続雇用パートタイマーの導入」(46.2%)、「正社員への転換制度の導入・見直し」(41.8%)、「休暇制度の見直し」(41.3%)が4割台で、「昇給制度の導入・改定」(38.5%)、「職務内容の分離・職務内容や責任の明確化」(36.5%)、「待遇差に関する根拠の明確化」(33.7%)が3割台となっている(図表2)。「住宅手当の支給対象の拡大」(13.0%)や「退職金の引き上げ」(13.9%)などは10%台にとどまる。

図表2:不合理な待遇差をなくすための具体的な取り組み
画像:図表2

(公表資料から編集部で作成)

同事業所に対して、取り組みを行う過程でパートタイマーの意見・要望を聴取したか(複数回答)を尋ねた結果をみると、「パートタイマーの意見・要望を聴取していない」が38.0%と最も高かったが、前回調査より8.0ポイント低かった。次いで高かったのは「労働組合や従業員代表の意見・要望を聴取した」の35.6%(前回調査32.2%)で、「アンケート等によりパートタイマーの意見・要望を聴取した」が19.2%(同12.3%)となっている。

正社員の労働条件を引き下げた事業所は15.4%

また、正社員の労働条件の引き下げを実施したかを尋ねたところ、正社員に支給していた手当の廃止など「何らかの引き下げを行った」と回答した事業所は15.4%で、「引き下げを行っていない」と回答した事業所が77.4%と7割以上だった。

引き下げた労働条件(複数回答)をみると、「基本給」が4.3%で、「家族手当・扶養手当」と「その他」が2.9%、「賞与」が2.4%、「退職金」と「住宅手当」が1.9%、「通勤手当」が1.4%、「皆勤・精勤手当」が1.0%、「役職手当」が0.5%となっている。

パートタイマーを雇用している事業所に、従業員から待遇差に関する説明を求められたことがあるか尋ねた結果をみると、「説明を求められたことはない」が94.4%と大多数で、「説明を求められたことがある」は5.4%と1割以下となっている。

<パートタイマーへの賞与の支給状況>

パートタイマーに賞与を支給していない事業所は5.0ポイント減少

パートタイマーを雇用している事業所に、パートタイマーへの賞与支給の有無を尋ねると、「原則として支給していない」は54.3%で、前回調査から5.0ポイント減少した。「原則として全員に支給」は前回調査から5.1ポイント増加して27.7%となり、「一部の人に支給」が16.9%と前回調査から3.1ポイント増加した。

パートタイマーに賞与を「原則として全員に支給」している、または「一部の人に支給」していると回答した事業所に対して、1人あたりの平均支給額(前年度年間平均支給額)を尋ねると、「1万円未満」4.2%、「1万円以上5万円未満」25.8%、「5万円以上10万円未満」18.6%、「10万円以上20万円未満」24.2%、「20万円以上40万円未満」7.6%、「40万円以上60万円未満」3.4%、「60万円以上」4.2%などとなり、「1万円未満」~「5万円以上10万円未満」までを合計した【10万円未満】が48.5%と約半数を占めた。

支給額は正社員の「2.5割未満」が半数弱

パートタイマーへの平均支給額が正社員への支給額の何割程度にあたるかを尋ねると、「1割未満」15.2%、「1割以上2.5割未満」31.4%、「2.5割以上5割未満」13.3%、「5割以上7.5割未満」7.6%、「7.5割以上10割未満」1.9%、「10割」1.9%、「10割超」0.4%などとなっており、【2.5割未満】の回答割合が46.6%と半数弱を占める。

パートタイマーに支給する賞与の支給額の計算式をみると、「金一封を支給」(20.5%)が最も割合が高く、次いで「平均賃金月額✕支給率」(19.7%)が高い。パートタイマーに支給する算出方法が正社員と同じかどうかを尋ねると、「正社員とは異なる算出方法」(81.8%)が8割を超え、「正社員と同じ算出方法」(13.6%)は1割程度だった。なお、前回調査では「正社員とは異なる算出方法」が80.5%、「正社員と同じ算出方法」が13.5%であり、大きな変化はみられなかった。

64.8%が「申し込みがあれば有期から無期契約に転換」

パートタイマーを雇用している事業所に、現在雇用しているパートタイマーに対し、有期契約労働者が5年を超えると無期契約を申し込める「無期転換ルール」についての運用状況(複数回答)を聞いたところ、「有期労働契約で雇用し、通算5年を超える者から申込みがあれば無期労働契約に転換している」が64.8%。「有期労働契約での雇用は行わず、全て無期労働契約により雇用している」も14.7%あった。一方で、「更新回数や勤続年数に上限を設定するなどし、通算勤続年数が5年以内となるようにしている」と答えた割合も10.2%あったほか、「クーリング期間を置き、通算期間をリセットしている」回答(1.4%)もわずかにみられた。

従業員調査

正社員との間に「不合理な差がある」と感じるパートがほぼ7割

従業員調査の結果をみると、正社員との間に何らかの不合理な待遇の差があると回答したパートタイマーの割合は69.6%で、「不合理な差があるとは思わない」は28.3%と3割弱だった。

不合理な差があると感じる点についてみると(複数回答)、「賞与」(51.6%)が最も高く、次いで「退職金」(33.8%)、「基本給」(28.3%)、「手当の支給(家族手当、住宅手当等)」(22.6%)、「休暇制度」(18.7%)、「福利厚生」(12.4%)、「休職制度」(8.3%)、「教育訓練制度」(7.8%)などとなっている。

職場に業務の内容および責任の程度が同じ正社員がいるかを尋ねると、「業務の内容及び責任の程度が同じ正社員はいない」が45.9%、「業務の内容及び責任の程度が同じ正社員がいる」が25.8%、「わからない」が27.2%となっている。

職場に「業務の内容及び責任の程度が同じ正社員がいる」と回答したパートタイマーに、その正社員と比較して、自分の賃金水準をどのように感じているかを尋ねると、「賃金水準が低く、納得していない」が50.0%と半数を占め、「賃金水準は低いが、納得している」が28.0%、「同等またはそれ以上の水準である」が12.5%などという結果となった。

約4割のパートタイマーがこの4年間で処遇が改善したと回答

この4年間でパートタイマーの処遇が改善されたと思うかを尋ねると、「少し改善した」が32.6%で前回調査から4.6ポイント上昇し、「改善していない」は29.0%と前回調査から2.2ポイント減少した。「改善した」は前回調査と同じ8.1%だった。

この4年間でパートタイマーの処遇が「改善した」または「少し改善した」と回答したパートタイマーに、どのような点で処遇が改善されたと感じているか(複数回答)を尋ねると、「基本給」が72.5%と最も高く7割以上にのぼり、次いで「休暇制度」が22.6%、「賞与」が14.7%、「手当の支給(家族手当、住宅手当等)」が7.5%、「福利厚生」が6.0%、「正社員への転換制度」が4.9%、「休職制度」が3.4%、「その他」が2.6%、「教育訓練制度」と「退職金」が1.1%となっている。

7割近くが「無期転換ルールを知らない」

なお、「無期転換ルール」の認知度については、「知っている」と答えたパートタイマーが30.7%だったのに対し、「知らない」が68.8%と7割近くにのぼった。

(調査部)