最低賃金の引き上げで、45%の中小企業が最賃を下回る従業員の賃金を引き上げ
 ――日本商工会議所・東京商工会議所「中小企業における最低賃金の影響に関する調査」

国内トピックス

日本商工会議所と東京商工会議所は3月17日、「中小企業における最低賃金の影響に関する調査」の集計結果を発表した。2025年に最低賃金が全国加重平均で1,121円に引き上がったことを受け、「最低賃金を下回る従業員がいたため、賃金を引き上げた」と回答した企業は45.1%で、昨年調査から2年連続で4割台となった。また、現在の最低賃金に負担を感じているとした企業の割合は76.6%で、2年連続で7割台にのぼった。

[回答企業の属性]

調査は2月2日~2月27日に実施し、349商工会議所に属する3,780社から回答を得た。

回答企業の属性は、業種については「建設業」17.2%、「製造業」26.8%、「卸売業」8.3%、「小売業」11.1%、「情報通信・情報サービス業」3.0%、「運輸業」3.8%、「宿泊・飲食業」7.1%、「医療・福祉・介護業」2.3%、「金融・保険・不動産業」4.0%、「その他サービス業」14.0%、「その他」2.4%。

従業員規模は、「5人以下」21.9%、「6~10人」13.2%、「11~20人」16.5%、「21~50人」21.0%、「51~100人」12.9%、「101~300人」12.5%、「301人以上」2.0%となっている。

地域は、都市部(東京23区・政令指定都市)が16.0%、地方(政令指定都市以外)が84.0%となっている。

[2025年の最低賃金引き上げの影響]

「最低賃金を下回る従業員はいなかったが、賃金を引き上げた」企業は37.9%

全国加重平均で1,055円から1,121円に引き上がった2025年の最低賃金引き上げを受け、「最低賃金を下回る従業員(パート・アルバイト含む)がいたため、賃金を引き上げた」と回答した企業は45.1%と4割半ばで、昨年調査(44.3%)を0.8ポイント上回り、2年連続で4割台となった。「最低賃金を下回る従業員(パート・アルバイト含む)はいなかったが、賃金を引き上げた」と回答した企業は37.9%で、昨年調査(27.4%)より10.5ポイント増加した(図表)。

図表:2025年の最低賃金引き上げの影響を受けた中小企業の割合(単位:%)
画像:図表

(公表資料から編集部で作成)

これを地域別・規模別にみると、「最低賃金を下回る従業員(パート・アルバイト含む)がいたため、賃金を引き上げた」割合は、「都市部」が37.0%、「地方」が46.6%、「地方・小規模企業(20人以下)」が38.3%で、「地方」のほうが「都市部」よりも9.6ポイント高くなっている。他方、「都市部」は昨年調査(32.4%)と比べて4.6ポイント増加した。

5割以上の従業員の賃金を引き上げた企業は約2割

最低賃金を下回ったため賃金を引き上げた従業員の割合をみると、「1割未満」が41.1%、「1割以上3割未満」が27.7%、「3割以上5割未満」が10.6%、「5割以上」が20.6%で、5割以上の従業員の賃金を引き上げた企業も2割超みられる。「5割以上」の割合は、「地方・小規模企業」では33.1%と3割を超えている。

最低賃金を下回ったため賃金を引き上げた従業員の属性をみると(複数回答)、「正社員」が32.4%、「フルタイム・有期契約労働者」が22.5%、「パートタイム労働者(主婦パート、学生アルバイトなど)」が79.6%、「その他」が2.7%で、パートタイム労働者をあげた企業が約8割にのぼる。他方、「正社員」は昨年調査(27.2%)から5.2ポイント増加した。

人件費増に「具体的な対応が取れず収益を圧迫」との企業が35.0%

最低賃金引き上げに伴う人件費増にどう対応したかをみると(複数回答)、「具体的な対応が取れず、収益を圧迫」が35.0%で最も回答割合が高く、次いで「人件費増加分の製品・サービス価格への転嫁による原資の確保」(31.0%)、「原材料費等増加分の製品・サービス価格への転嫁による原資の確保」(24.8%)、「残業時間・シフトの削減(非正規社員含む)」(23.3%)、「支払い原資に余力があり、特に影響はない」(17.4%)などの順となっている。

「具体的な対応が取れず、収益を圧迫」と「人件費増加分の製品・サービス価格への転嫁による原資の確保」の割合について、地域別・規模別にみると、「具体的な対応が取れず、収益を圧迫」の割合は、「都市部」(32.6%)と比べて「地方」(35.3%)のほうが高く、「地方・小規模企業」(42.9%)はさらに高くなって4割を超えている。「人件費増加分の製品・サービス価格への転嫁による原資の確保」の割合は、「都市部」(29.5%)と比べて「地方」(31.2%)は高くなったが、「地方・小規模企業」(27.4%)はやや低くなった。

最低賃金の引き上げへの対応のために活用する(予定含む)支援策をみると(複数回答)、「支援策を活用していない」が57.1%と、半数以上を占める一方、活用している企業の回答では「賃金引き上げを支援する助成金・補助金(業務改善助成金、キャリアアップ助成金等)」(25.4%)や「税制上の優遇措置(賃上げ促進税制等)」(20.1%)が2割台となっている。

7割超の企業が現在の最低賃金に負担を感じる

現在の最低賃金の負担感に対する回答割合をみると、「大いに負担になっている」が33.7%、「多少は負担になっている」が42.9%、「負担になっていない」が20.4%などとなっている。「大いに負担になっている」と「多少は負担になっている」を合わせた、負担と感じている割合は76.6%に達し、昨年調査(76.0%)をやや上回り2年連続で7割台となっている。

これを地域別・規模別にみると、「大いに負担になっている」と「多少は負担になっている」を合わせた割合は、「都市部」(69.8%)と比べて、「地方」(77.9%)や「地方・小規模企業」(75.9%)のほうが高くなっている。

来年度以降も今年度と同水準またはそれ以上の引き上げが行われた場合、自社へどのような影響が想定されるか、具体的な内容をみると(複数回答)、「残業時間・シフトの削減(非正規社員含む)」が30.1%で最も回答割合が高く、次いで「他の従業員の賃上げ抑制、一時金等の削減」(25.2%)、「設備投資の抑制・新規事業の取りやめ」(21.7%)、「従業員数の削減、採用の抑制(非正規社員含む)」(21.0%)などとなっている。

[最低賃金の発効日について]

最低賃金の発効日「1月~3月」について半数以上の企業が肯定的

最低賃金は、毎年夏に実施される厚生労働省の「中央最低賃金審議会」で引き上げ目安が示され、それをもとに各都道府県が「地方最低賃金審議会」を開催し、改定額を審議・決定していく。決定した改定額の発効は、各都道府県で10月1日~翌年3月31日までに順次適用されることとなっており、例年はほとんどの都道府県が10月頃に発効日を設定していたが、2025年は10月に発効日を設定したのは20都道府県にとどまり、11月~12月に設定したのは21府県。秋田、福島、群馬、徳島、大分、熊本の6県では発効日が2026年1月~3月にずれこんでいる。

調査では、2025年度の発効日の経営への影響を尋ねた設問への回答割合を、2025年内に発効日を設定した41都道府県と、2026年1月~3月に発効日がずれこんだ6県で比較している(複数回答)。「賃金改定の見直しや給与支払い等の事務手続きのための準備期間を確保することができた」と「賃上げ原資確保のための準備期間を確保することができた」を合わせた回答割合は、41都道府県が12.2%に対し、6県は34.7%で、ずれこんだ県のほうが20ポイント超高くなっている。

望ましい発効日の時期についての回答割合もみると、41都道府県では「10月」が41.4%、「11月~12月」が9.3%、「1月~2月」が16.9%、「3月」が32.4%となっており、10月とする企業が4割台にのぼる一方、1月以降を回答する企業も合計すると約5割にのぼっている。6県では、「10月」が26.8%、「11月~12月」が7.1%、「1月~2月」が30.1%、「3月」が35.9%で、1月以降を回答する企業が合わせて6割超にのぼっている。

(調査部)