学校卒業見込者のマッチングに向けた支援や、就労にあたって困難な課題を抱える者への支援などを施策の基本に据える
――厚生労働省が2030年度までの「青少年雇用対策基本方針」を策定
国内トピックス
厚生労働省は3月31日、2026~2030年度までの今後5年間にわたる青少年の適職選択と職業能力の開発や向上に関する施策の基本方針を示した「青少年雇用対策基本方針」を策定した。基本方針は、産業構造の急激な変化が進むなか、就労にあたって困難な課題を抱える者が一定数存在し、就職後3年以内離職率が高止まりするなどの状況をふまえ、今後の対策の方向性として、マッチングの向上や、困難な課題を抱える者への支援の充実、在学時からの職業意識の醸成などを提起。具体的な基本施策として、学生への労働関係法令の知識の啓発や、職業経験が少なく独力でキャリア形成を図ることが困難な者へのキャリアコンサルティングなどを掲げた。
なお、基本方針における「青少年」とは35歳未満の者をいうが、個々の施策・事業の運用状況等に応じて、おおむね45歳未満の者についても、その対象とすることは妨げない。
<青少年の職業生活の動向>
産業構造が急激に変化し、働き方も大きく変化
基本方針は、「青少年の雇用の促進等に関する法律」第8条第1項の規定に基づき、青少年の福祉の増進を図るため、「適職の選択並びに職業能力の開発及び向上に関する措置等に関する施策の基本となるべき方針」として厚生労働大臣が策定するもの。今回策定した基本方針の運営期間は、2026年度~2030年度までの5年間。
基本方針ははじめに、青少年の職業生活の動向について、人工知能の急激な進化やデジタル化の進展などにより産業構造が「これまでにない規模とスピードで変化」するとともに、労働者の構成や働き方についても「大きく変化することが見込まれる時代を迎えている」と指摘。また、職業人生の長期化や働き方の多様化の進展を受け、新卒一括採用や長期雇用などに特徴づけられる日本型の雇用慣行も「徐々に変化している」とした。
フリーターが近年微増、ニートの数が高止まり
こうしたなか、学校等の新規卒業予定者の就職環境は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う悪化から回復しており、求人倍率や就職率は高い水準で推移している一方で、いわゆるフリーターと呼ばれる不安定就労を繰り返す者が近年は微増に転じているほか、いわゆるニートと呼ばれる若年無業者の数も「高止まりしている」とした。
また、高等学校等卒業者の大学への進学率は、2010年以降はおおむね50%を超える水準にある一方、各学校段階での中途退学者がその後、いわゆる非正規雇用となる割合が高くなるとともに、就職先が決まらないまま卒業した者や卒業後に非正規雇用となる者も一定数存在しているとし、「継続的なキャリア形成を実現することが困難な状況となっている」点も指摘した。
大学・高校卒業者の就職後3年以内離職率は近年微増傾向
青少年の職業生活について具体的なデータも概観した。学校等を卒業後、就職して3年以内に離職する者の割合は、2022年3月卒業者について、中学校卒業者で54.1%、高等学校卒業者で37.9%、大学卒業者で33.8%となっており、中学校卒業者は、近年増加傾向にあるとともに、大学卒業者・高校卒業者は、直近では低下したものの近年は微増傾向にあることから、「今後も低下傾向で推移するか否かは、なお見通し難い」との見方を示した。
<今後の方向性>
こうした状況をふまえ基本方針は、今後の対策の方向性として、①マッチングの向上等を図り、その後のキャリア形成のための基盤となる職業能力を培うことができるよう支援②就労に当たって困難な課題を抱える者に対する支援の充実③在学段階から職業意識の形成支援、自律的・主体的な職業生活設計とその振り返りや見直し並びに職業能力の開発及び向上に取り組むための支援――の3つを掲げた。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が青少年の離職・勤続傾向に及ぼした影響については、「解明できるのはこれから」だとしつつ、「青少年の離職傾向に今後影響を及ぼす可能性が示唆されており、今後も引き続き、その動向を注視していく」とした。
<施策の基本となるべき事項>
今後の対策の方向性に沿って基本方針は、「適職の選択を可能とする環境の整備並びに職業能力の開発及び向上を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項等」について、①学校卒業見込者等の就職活動、マッチング、職場定着等に向けた支援②中途退学者・就職先が決まらないまま卒業した者及び就労に当たって困難な課題を抱える者に対する支援③フリーターを含む非正規雇用で働く青少年の正規雇用化に向けた支援④企業における青少年の活躍促進に向けた取組に対する支援⑤職業能力の開発及び向上の促進⑥ニート等の青少年に対する職業生活における自立促進のための支援⑦地域における青少年の活躍促進――の7項目に分類し、それぞれについて重点的に取り組む事項を掲げた。
【学校卒業見込者等の就職活動、マッチング、職場定着等に向けた支援】
キャリア教育の推進を通じて職業意識の形成を支援する
「学校卒業見込者等の就職活動、マッチング、職場定着等に向けた支援」からみていくと、在学段階からの職業意識等の醸成として、キャリア教育の推進を通じた職業意識の形成支援、関係者の連携によるキャリア教育推進の基盤整備、労働関係法令に関する知識等の周知啓発に取り組むとしている。
このうち職業意識の形成支援については、「学生がキャリア・プランニングのツールとしてジョブ・カードを活用することが求められている」と指摘。このため、関係行政機関と連携して、在学段階から、オンラインで作成できる「マイジョブ・カード」も含めて、ジョブ・カードが活用されるように利用の促進・周知を図っていくとした。
アルバイト従事前などでの労働関係法令知識の付与を図る
労働関係法令に関する知識等の周知啓発について、在学段階におけるアルバイトが青少年にとっての最初の就業経験となることが多いこともふまえ、アルバイトに従事する前や、職場体験・インターンシップの実施の前後、学生・生徒の進路選択の際など、適切な機会を捉えた労働関係法令に関する知識等の付与についての取り組みの周知を図る。
また、マッチングの向上等による職業生活への円滑な移行、適職の選択、職場定着などのために、「学校等から職業生活への円滑な移行のための支援」「既卒者の応募機会の拡大に向けた取組の促進」「マッチングの向上に資するための労働条件等の明示の徹底及び積極的な情報提供の促進」「労働関係法令違反が疑われる企業への対応」「就職後の職場適応・職場定着のための支援」「入職後早期に離転職する青少年に対するキャリア自律に向けた支援」を行うとしている。
【中途退学者・就職先が決まらないまま卒業した者及び就労に当たって困難な課題を抱える者に対する支援】
学校、ハローワーク、サポステなどが連携して就職を支援
「中途退学者・就職先が決まらないまま卒業した者及び就労に当たって困難な課題を抱える者に対する支援」では、学校、ハローワーク、地域若者サポートステーション(サポステ)などが連携した就職支援を実施する。
就労に当たって困難な課題を抱える者については、新卒応援ハローワークや地域若者サポートステーション等において、キャリアコンサルタントや臨床心理士等の専門家を活用した支援や、地域のボランティア活動等を活用した社会とつながる体験機会の確保、学校をはじめとする多様な主体と連携したアウトリーチを含めた支援等、個々のニーズや課題に応じた支援の充実を図る。
【フリーターを含む非正規雇用で働く青少年の正規雇用化に向けた支援】
主体的に職業選択やキャリア形成ができるように支援
「フリーターを含む非正規雇用で働く青少年の正規雇用化に向けた支援」については、「少子化対策の観点からも、青少年の経済的基盤を確保することは重要」と強調。非正規雇用労働者の現状等に関する情報を青少年に提供することも含め、主体的に職業選択やキャリア形成を行えるように支援していくとした。
また、不本意ながらも非正規雇用で働いている青少年もいることをふまえて、わかものハローワーク等における支援で正規雇用への移行を促進していく。
事業主に対しては、トライアル雇用、雇用型訓練、企業内での正規雇用への転換の取り組みなどの正規雇用化に関係する積極的な取り組みを促していく。
【企業における青少年の活躍促進に向けた取組に対する支援】
「ユースエール認定制度」を活用して企業の人材育成方針策定を促進
「企業における青少年の活躍促進に向けた取組に対する支援」では、青少年の適切なキャリア形成の実現のためには、早期離職の防止の観点から入口段階でのマッチングの向上のための取り組みに加え、青少年の能力や経験に応じた適切な待遇を確保するなど、「企業内での適切な雇用管理を促進することが課題」と指摘。
このため、労働者の離職率と人材育成に関する基本的方針の策定状況との間には相関関係が認められることもふまえて、若者の採用・育成に積極的で雇用管理が優良な企業を認定する「ユースエール認定制度」を活用して、雇用する労働者の育成に関する方針並びに職業能力の開発及び向上を促進するための計画の充実を図る取り組みを評価するとした。
これにより、青少年の育成等に積極的な企業ほど労働市場で選ばれ、企業において労働者の確保が図られるとともに、それが企業の自主的な取り組みをさらに促進するという「好循環」を生み出していくとしている。
【職業能力の開発及び向上の促進】
青少年自身が自覚を持ってキャリア形成に取り組むことが必要
「職業能力の開発及び向上の促進」では、青少年の主体的なキャリア形成を図ることは、「職業能力開発に対する意欲を高め、豊かな職業人生をもたらす」などの効果があるとし、そのうえで、「青少年自身が将来の経済及び社会を担う者としての自覚を持ち、職業人生を通じてキャリア形成に取り組むことが必要」と基本方針は強調した。
とはいえ、青少年のなかには、職業経験が少ないなど、「独力でキャリア形成を図ることが困難な者も少なからず存在する」ことから、こうした青少年のキャリア形成を支援するため、入職後早期のうちから企業内外を問わず必要な時にキャリアコンサルティングを受けられるように、キャリア形成・リスキリング支援センター及びキャリア形成・リスキリング相談コーナーやオンラインを活用し、キャリアコンサルティングをより身近に受けられる環境の整備に取り組むとした。
また、青少年の職業生活設計や職業能力開発の支援を行うため、職業人生の節目において定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を企業内に設ける「セルフ・キャリアドック」の導入を推進するとした。
【ニート等の青少年に対する職業生活における自立促進のための支援】
サポステにおける職場体験の充実などで就職を支援
「ニート等の青少年に対する職業生活における自立促進のための支援」では、職業生活を円滑に営むうえでの困難な課題を抱えるニートに対して、その特性に応じた適職の選択などの職業生活に関する相談の機会の提供、職業生活における自立を支援するための施設の整備等の必要な質の高い支援を継続的に提供するとしている。
具体的には、地域若者サポートステーションにおいて、ハローワーク、地方公共団体等の関係機関との連携を通じた情報提供等や職場体験の充実を図ることにより、就職に向けた支援を行うとともに、就職した者に対する職場定着支援などを実施する。
また、地域若者サポートステーションが有するノウハウや経験の普及、研修体制の整備、好事例の周知、支援を行う専門人材の育成などに努める。
【地域における青少年の活躍促進】
いわゆるU・I・Jターン就職を積極的に支援
「地域における青少年の活躍促進」では、青少年が希望する地域において就職することができるよう、国、地方公共団体、事業主、大学等が連携し、地域の募集・求人情報の収集、提供などの必要な取り組みを進めることにより、いわゆるU・I・Jターン就職を「積極的に支援していく」としている。
また、地域における人口減少が進行するなかで、特に中小企業等においては同世代の同僚がいない場合も少なくないため、企業の枠を超えて、地域で働く青少年を対象とした研修会や座談会などの開催を通じて、地域で活躍する担い手となる青少年の育成を支援するとした。
(調査部)
2026年5月号 国内トピックスの記事一覧
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