大手企業の回答・妥結額は1976年以降で最高の水準に
――経団連の2024年春季労使交渉の大手企業業種別回答状況
2024春闘における賃上げの状況
経団連(十倉雅和会長)が5月20日に公表した「2024年春季労使交渉・大手企業業種別回答状況(加重平均)」の第1回結果によると、大手89社の回答・妥結額の加重平均は1万9,480円で、現行の集計方法に変更した1976年以降で最も高い金額となった。アップ率は5.58%で、1991年以来の5%超えとなった。
調査は、原則従業員500人以上の、主要22業種に属する大手244社を対象に実施。21業種151社から回答があり(了承・妥結含む)、平均金額が不明な企業などを除く16業種89社(約56.5万人)の結果を集計している。回答・妥結額は定期昇給(賃金体系維持分)などを含む。
製造業・非製造業平均ともに1997年以降最も高い引き上げ額・アップ率に
それによると、大手89社の回答・妥結額の加重平均は1万9,480円で、昨年(1万3,122円)から6,358円増加し、現行の集計方法(組合員数による加重平均)に変更した1976年以降で最も高い金額となった(図表)。アップ率は5.58%と昨年(3.88%)から1.70ポイント増加。1991年以来33年ぶりに5%を超える水準となった。
図表:2024年春季労使交渉・大手企業業種別回答状況(了承・妥結含む。加重平均)第1回集計
注1:平均欄の( )内は1社あたりの単純平均。
注2:(従)は従業員平均の数値を含む。
注3:集計社数が2社に満たない場合など数字を伏せた業種があるが、平均には含まれる。
注4:上記回答・妥結額は、定期昇給(賃金体系維持分)等を含む。
(公表資料から編集部で作成)
製造業77社の平均は、回答・妥結額が1万9,920円(昨年1万2,668円)で、アップ率が5.85%(同3.83%)。非製造業12社の平均は、回答・妥結額が1万8,168円(同1万4,574円)で、アップ率が4.85%(同4.00%)となっている。いずれも製造・非製造業別での集計を開始した1997年以降で最も高い引き上げ額・アップ率となっている。
「鉄鋼」で回答・妥結額が最も高く、昨年から約3万円増加
業種別にみると、回答・妥結額が最も高いのは「鉄鋼」(9社、3万7,528円)で、昨年(8,501円)から約2万9,000円増と大幅な増加となった。アップ率は12.04%と、昨年(2.77%)から10ポイント近く増加した。
「建設」(4社)も3万1,384円(従業員平均、昨年は2万4,198円)と3万円台。アップ率は5.85%(同4.61%)となっている。
このほかの業種をみると、「機械金属」(2社)が2万2,633円(同1万6,730円)でアップ率6.85%(同5.22%)、「非鉄・金属」(4社)が1万9,445円(同1万3,598円)で6.02%(同4.31%)、「航空」(2社)が1万9,262円(同1万3,703円)で5.67%(同4.13%)などとなっている。
「紙・パルプ」や「商業」は全体から見て回答・妥結額が低め
回答・妥結額が最も低かったのは「紙・パルプ」(4社)で1万3,757円(昨年は9,389円)。アップ率は4.40%(同3.06%)。次いで低いのは「商業」(3社)の1万4,769円(従業員平均、同1万2,974円)で、アップ率は3.69%(同3.28%)だった。
(調査部)
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