2021年8・9月の新着図書紹介

1.橘木 俊詔著『日本の構造』講談社

(2021年3月刊,253p,新書判)

いまや中間層が減少し、富裕層と貧困層が目立つ「格差社会」になったといっても過言ではない日本社会。経済効率性達成のために格差は必要との考えがあるが、人間社会にとって平等の価値は高いという見方もある。著者は、どちらを好ましいとみなすかは人々の生き方の違いや価値判断などに依存していると指摘。そのうえで、日本経済の現在の姿について人々に判断の材料を提供できるよう、50の統計データで分析してまとめた。まず、日本経済を活性化するにはベンチャー企業の開業が最も重要だと述べ、日本の開・廃業率が他国の3分の1にとどまっている点を問題視。もっとリスク愛好的になってもいいのでは、と説く。労働人口の70%超が第3次産業で働いていることについて、女性の労働進出を推し進めていると分析しながら、生産性の低さを指摘している。

請求番号:302.1/nih
書誌番号:JB00114579
ISBN:9784065230992

2.相原 孝夫著『職場の「感情」論』日本経済新聞出版

(2021年3月刊,272p,四六判)

2020年度は、新型コロナウイルスのまん延による外出自粛要請のなか、多くの人々が突然に「リモートワーク元年生」となった一年だった。リモートワークは働き方改革の一環として取り組まれたが、あまりに急だったため、何の準備もないままに始めた企業が少なくなかった。著者は、各企業ではリモートを進めていくために従業員満足度の増加だけでなく、生産性の向上も目指していると指摘。コロナ後の世界の働き方では、リモートと「リアル」が一定割合のハイブリッドなスタイルとなっていく可能性が高いとみなし、組織リーダーはそのためのマネジメント能力を磨いておく必要があると警鐘を鳴らす。より複雑化した環境下、労働者一人ひとりの状況を把握し、不安や不満を解消し、高い生産性を維持できるよう、サポートしていくことが求められるという。

著者がとくに重視するのは職場での「感情」の問題だ。ダイバーシティの進展により、職場の人材は多様化し、一人ひとりの思いや感情を把握するハードルは上がり続け、居心地の悪い職場が増えていると解説。今後の理想は「一緒に働く仲間のために頑張る」職場だと述べ、個人の域を超えた状態になることが望まれると主張する。

請求番号:336.49/sho
書誌番号:JB00114565
ISBN:9784532323776

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2021年5月~6月の労働図書館受け入れ図書

  1. 中島 輝著『働く人のための自己肯定感』朝日新聞出版(200頁,文庫判)
  2. 山谷 清志ほか編著『地域を支えるエッセンシャル・ワーク』ぎょうせい(iv+277頁,A5判)
  3. 後藤 浩士著『経営学概論』学文社(7+203頁,A5判)
  4. 内海 京久ほか編著『イノベーション実現の条件』文眞堂(ix+246頁,A5判)
  5. 今野 浩一郎著『同一労働同一賃金を活かす人事管理』日経BP(ix+262頁,A5判)
  6. 高井・岡芹法律事務所編著『使用者のための解雇・雇止め・懲戒相談事例集』青林書院(xi+435頁,A5判)
  7. 長谷川 珠子ほか著『現場からみる障害者の雇用と就労』弘文堂(xii+375頁,A5判)
  8. 浅見 和彦著『労使関係論』旬報社(293頁,四六判)
  9. 楠木 新著『定年後の居場所』朝日新聞出版(263頁,新書判)
  10. 労働政策研究・研修機構著『テレワーク コロナ禍における政労使の取組 』労働政策研究・研修機構(89頁,A4判)