2021年1・2月の新着図書紹介

1.橋本 健二著『アンダークラス2030』毎日新聞出版

(2020年10月刊,285p,四六判)

本書は、いわゆる就職氷河期世代に焦点を当て、その誕生から現在までを社会的背景を折り込みながら描いている。著者は、コロナ禍が将来に与える影響を見極める材料はまだそろっていないとしつつも、今回のコロナ禍を契機に就職氷河期が再来し、永続化する可能性があると強調する。就職氷河期世代以降の世代は、① 非正規雇用比率が高い ② 未婚率が高い ③ 少子化傾向が強い――などの共通点が多いと指摘する。2014年から2019年の間に卒業した若者たちは就職状況が着実に改善したが、それもつかの間の幸運だったと考えられている。

著者は、何か根本的な対策を考えない限り、氷河期世代に起こったことは、程度の違いはあっても、今後のすべての世代に起こるだろうと警告する。日本の社会を好ましくない方向へと変質させ、人々は、比較的安定した生活を送り、家族を形成して子どもを産み育てることの可能な相対的多数派と、それが不可能な相対的少数派とに分断され続けるだろう、と分析。新しい下層階級が全ぼうを現す2030年までに手を打つ必要性を訴える。

請求番号:361.85/and
書誌番号:JB00114153
ISBN:9784620326566

2.濱口 桂一郎・海老原 嗣生著 『働き方改革の世界史』筑摩書房

(2020年9月刊,250p,新書判)

本書では、労働問題のエキスパートである著者が労働運動の仕組みについて、どのような経緯でそれができあがったのかを時代と国情などから整理して解説する。例えば、欧州の横断的組合は職人組合(ギルド)をその祖とした影響が大きく、19世紀には英国で「集合取引」(コレクティブ・バーゲニング)という手法によってある程度形作られていたという。米国では集合取引とストライキを用いたジョブ・コントロール型労使関係を構築。これに対して、ドイツでは社内に従業員代表制を作り、労使で協議を行うという仕組みが定着したと強調する。こうしたメカニズムを解き明かすため、古典的な名著をヒモときながら、働き方の意味を考察。世界中で検討され、実行されてきた労働運動の理想と現実を浮き彫りにする。

最後には、日本の古典、藤林敬三著「労使関係と労使協議制」を取り上げ、労使関係の本質は、親和的な「経営対従業員関係」と対立的な「経営対組合関係」の二元的関係にある、との見方を紹介している。

請求番号:366.5/hat
書誌番号:JB00114113
ISBN:9784480073310

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2020年10月~11月の労働図書館受け入れ図書

  1. 本田 健著『仕事消滅時代の新しい生き方』プレジデント社(222頁,四六判)
  2. ケイト・ホッジス著『世界は女性が変えてきた』東京書籍(186頁,B5判)
  3. 毛受 敏浩著『移民が導く日本の未来』明石書店(213頁,四六判)
  4. キャシー松井著『ゴールドマン・サックス流女性社員の育て方、教えます』中央公論新社(187頁,新書判)
  5. 矢澤 めぐみ著『外国人雇用はじめの一歩』日本法令(229頁,A5判)
  6. 石黒 太郎著『失敗しない定年延長』光文社(230頁,新書判)
  7. エマニュエル・トッド著『大分断』PHP研究所(195頁,新書判)
  8. 松尾 孝一著『ホワイトカラー労働組合主義の日英比較』御茶の水書房(xiii+270頁,A5判)
  9. 大平 徹著『予測学:未来はどこまで読めるのか』新潮社(203頁,A5判)
  10. 中石 和良著『サーキュラー・エコノミー』ポプラ社(180頁,新書判)