使用者による障がい者虐待が認められた事業所数は前年度比3.0%減の421カ所
 ――厚生労働省「2025年度使用者による障害者虐待の状況等」

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厚生労働省が9月11日に発表した「2025年度使用者による障害者虐待の状況等」によると、事業主や上司などの使用者による障がい者への虐待が認められた事業所数は前年度から3.0%減少し、421事業所となった。虐待が認められた障がい者数は前年度比6.4%減の610人。虐待の種別では「経済的虐待」が83.1%、「心理的虐待」が9.9%、「身体的虐待」が4.9%などとなっている。

「使用者による障害者虐待の状況等」は、障害者虐待防止法第28条に基づき、都道府県労働局が把握した使用者による障がい者虐待の状況等をとりまとめたもの。今回のとりまとめ期間は2025年4月1日~2026年3月31日で、同期間内において使用者による障がい者虐待に関する通報・届出があったものや、労働局の対応が完了したものを計上している。

とりまとめ方法は、障害者虐待防止法第24条に基づき、都道府県から労働局へ報告があったものを「都道府県からの報告」、労働局や労働基準監督署などに被虐待者、家族、同僚などから虐待に該当するおそれがあるとの情報提供や相談があったものを「労働局などへの相談」、それ以外で労働基準監督署による臨検監督や公共職業安定所による事業所訪問などにより、虐待に該当するおそれのある事例を把握したものを「その他労働局などの発見」に分類している。

通報・届出の形態は「労働局などへの相談」が77.0%で最多

使用者による障がい者虐待に関する通報・届出があった事業所数は1,663事業所で、前年度の1,593事業所を70事業所(4.4%)上回った。内訳をみると、「労働局などへの相談」が1,281事業所で全体の77.0%を占め、次いで「都道府県からの報告」が237事業所(14.3%)、「その他労働局などの発見」が145事業所(8.7%)となった。

通報・届出のあった事業所数の過去5年間の推移をみると、2021年度が1,230事業所、2022年度が1,230事業所、2023年度が1,512事業所、2024年度が1,593事業所、2025年度が1,663事業所となっている(図表)。

図表:通報・届出のあった事業所数の推移
画像:図表1

(公表資料から編集部で作成)

通報・届出のあった事業所、対象となった障がい者数とも過去5年で最多

通報・届出の対象となった障がい者数は前年度に比べ6.9%(126人)増加し、1,953人となった。過去5年間でみると、2021年度が1,431人、2022年度が1,433人、2023年度が1,854人、2024年度が1,827人、2025年度が1,953人と推移している。

通報・届出の対象となった障がい者数について、障がい種別でみると、「精神障害」が852人で全体の43.8%を占めた。次いで、「知的障害」が437人(22.5%)、「身体障害」が371人(19.1%)、「発達障害」が182人(9.4%)、「その他」が104人(5.3%)となった。

虐待種別でみると、障がい者の財産の不当な処分や障がい者から不当に財産上の利益を得るなどの「経済的虐待」が997人で全体の45.1%を占めて最も多かった。次いで、障がい者に対する暴言や不当な差別的言動などの「心理的虐待」が868人(39.3%)、障がい者の身体に外傷が生じる暴行や身体を拘束するなどの「身体的虐待」が167人(7.6%)、障がい者を衰弱させるような著しい減食や長時間の放置などの「放置等による虐待」が154人(7.0%)、「性的虐待」が24人(1.1%)となった。

虐待が認められた形態は「労働局などへの相談」が最多

労働局によって虐待が認められた事業所数は421で、前年度の434から13事業所減少した。認められた形態の内訳をみると、「労働局などへの相談」が251事業所(59.6%)と最も多く、「その他労働局などの発見」が140事業所(33.3%)、「都道府県からの報告」が30事業所(7.1%)となった。

虐待が認められた事業所数の過去5年間の推移をみると、2021年度が392事業所、2022年度が430事業所、2023年度が447事業所、2024年度が434事業所、2025年度が421事業所となっている。

業種別にみると「医療、福祉」が24.2%で最多

虐待が認められた事業所数を業種別にみると、「医療、福祉」が102事業所で全体の24.2%を占め、次いで「製造業」が87事業所(20.7%)、「卸売業、小売業」が58事業所(13.8%)、「宿泊業、飲食サービス業」が46事業所(10.9%)などと続いた。

事業所の規模別にみると、「5~29人」が168事業所で全体の39.9%を占め、次いで「5人未満」が70事業所(16.6%)、「30~49人」が47事業所(11.2%)、「50~99人」が32事業所(7.6%)、「100~299人」が28事業所(6.7%)など。50人未満の事業所(「5人未満」「5~29人」「30~49人」の合計)が67.7%で全体の約3分の2を占めた。

虐待が認められた障がい者数は前年度比6.4%減

虐待が認められた障がい者数は610人で、前年度に比べ6.4%(42人)減少した。過去5年間の推移をみると、2021年度は502人、2022年度は656人、2023年度は761人、2024年度は652人、2025年度は610人となった。

障がい種別でみると(延べ人数ベース)、「精神障害」が220人で全体の35.7%を占め、次いで「知的障害」が194人(31.4%)、「身体障害」が140人(22.7%)、「発達障害」が26人(4.2%)、「その他」が37人(6.0%)。

虐待種別でみると(延べ人数ベース)、「経済的虐待」が521人(83.1%)で全体の8割強を占めて最も多かった。次いで「心理的虐待」が62人(9.9%)、「身体的虐待」が31人(4.9%)、「放置等による虐待」が9人(1.4%)、「性的虐待」が4人(0.6%)となった。

就労形態別でみると、「パート・アルバイト」が272人と全体の44.6%を占め、次いで「正社員」が203人(33.3%)、「その他・不明」が107人(17.5%)、「期間契約社員」が24人(3.9%)、「派遣労働者」が4人(0.7%)。

性別でみると、「男性」が324人(53.1%)、「女性」が222人(36.4%)、「不明」が64人(10.5%)となっている。

講じた措置の8割超が「労働基準関係法令に基づく指導等」

虐待に対して労働局が講じた措置をみると、「労働基準関係法令に基づく指導等」が561件で全体の85.3%を占めて最も多く、そのうち「最低賃金法に基づく指導等」が207件(31.5%)となっている。次いで多いのは、「障害者雇用促進法に基づく助言・指導、紛争解決の援助等」の45件(6.8%)で、以下、「労働施策総合推進法に基づく助言・指導、紛争解決の援助等」が39件(5.9%)、「個別労働紛争解決促進法に基づく助言・指導、あっせん」が8件(1.2%)、「男女雇用機会均等法に基づく助言・指導、紛争解決の援助等」が5件(0.8%)となっている。

公表された実際の事例では、精神障がいのある正社員が、上司から大声で怒鳴られたり、髪を掴んで引っ張られるなどの暴行を受けており、身体的虐待が認められたことから、事業主に対し、ハラスメントがあってはならないことの方針の明確化と周知・啓発、相談体制の整備などの再発防止対策を講じるよう指導を実施した。

また、知的障がいのあるパート・アルバイトに業務指示を意図的に聞き取れないように伝え、確認すると怒鳴るなどのハラスメントが行われていたケースも紹介。このケースでは、心理的虐待が認められたとして、障がい特性をふまえた業務指示を行うよう、事業主には障がい者への理解促進を図る研修の実施が指導されている。

ほかにも、発達障がいのあるパート・アルバイトの約定賃金が地域別最低賃金を1時間あたり約600円下回り、経済的虐待と認められたことから、事業主には不足分を支払うよう指導が行われたことなどの事例を記載している。

(調査部)