就業先から労働条件通知書を交付されなかった経験がある人が4割以上
――連合「スポットワークに関する調査2025」
国内トピックス
連合(芳野友子会長)がさきごろ発表した「スポットワークに関する調査2025」によると、短時間・単発バイトなどの「スポットワーク」で働いているか、働いた経験がある人の約半数が、業務や労働条件などについて、説明を受けない経験があった。就業先から労働条件通知書を交付されなかった経験がある人も4割以上いた。半数近くの人が仕事上のトラブルを経験しており、仕事内容が求人情報と違ったとの内容が最も多かった。
調査はインターネット調査で、2024年12月2日~4日に実施。15歳以上のスポットワークで働いている人、または働いたことがある人1,000人の有効サンプルを集計した。なお、この調査では「スポットワーク」を「短時間・単発で雇用され働く就業形態」と定義している。
業務内容について約4人に1人は説明された経験が全くなし
スポットワークで働く際、就業先からスポットワークの業務や労働条件などに関する説明を受けたか尋ねたところ、【「業務内容」に関する説明】では、「どの就業先でも説明を受けた」が49.1%、「いくつかの就業先では説明を受けたが、説明を受けなかった就業先もあった」が26.4%、「説明を受けたことがない」が24.5%で、約半数が説明を受けなかった経験があると同時に、約4人に1人が全く説明を受けた経験がないことがわかった(図表)。
図表:スポットワークで働く際、就業先からスポットワークの業務や労働条件などに関する説明を受けたか
(公表資料から編集部で作成)
事故防止の説明を「受けなかった」経験のある人は65%程度に及ぶ
【賃金や労働時間、手当、就業場所などの「労働条件」に関する説明】では、「どの就業先でも説明を受けた」が45.7%、「いくつかの就業先では説明を受けたが、説明を受けなかった就業先もあった」が27.8%、「説明を受けたことがない」が26.5%で、こちらも50%以上が、説明を受けなかった経験があった。
【「働く上での怪我や事故防止」に関する説明】では、「どの就業先でも説明を受けた」が34.5%、「いくつかの就業先では説明を受けたが、説明を受けなかった就業先もあった」が31.1%、「説明を受けたことがない」が34.4%で、説明を受けなかった経験がある人が65%程度にのぼった。
説明を受けても10%台~約20%の人は内容を理解していない
就業先から【「業務内容」に関する説明】を受けたことがある人(755人)に、説明を理解することができたか尋ねると、「あまり理解できなかった」(12.3%)と「全く理解できなかった」(2.1%)を合わせた<理解できなかった人>の合計割合は14.4%となっている。
【賃金や労働時間、手当、就業場所などの「労働条件」に関する説明】での、説明を受けたうえで<理解できなかった人>の合計割合は13.6%。同様に、【「働く上での怪我や事故防止」に関する説明】では20.1%となっている。
先ほど紹介したとおり、【「働く上での怪我や事故防止」に関する説明】では「説明を受けたことがない」人が34.4%だったことから、上記の20.1%と合わせ5割強の人が説明不足の状況にあったことがうかがえる。
労働条件通知書をどの就業先でも交付された人は30.9%
スポットワークで働く際、就業先から労働条件通知書が交付されたか尋ねた結果をみると、「どの就業先でも交付された」は30.9%と約3割にとどまり、「いくつかの就業先では交付されたが、交付されない就業先もあった」が31.0%、「交付されたことはない」が14.0%、「わからない」が24.1%と、4割以上の人が交付されなかった経験があった。
スポットワークで働いている際の仕事上のトラブルの経験をみると、「トラブルを経験している(経験した)」が46.8%、「トラブルを経験していない(経験しなかった)」が53.2%で、半数近くの人がトラブルの経験があった。
トラブルを経験した人(468人)にトラブルの内容を聞くと(複数回答)、「仕事内容が求人情報と違った」(19.2%)が最も回答割合が高く、これに「業務に関して十分な指示や教育がなかった」(17.7%)、「一方的にスポットワークサービスの利用を停止・制限された」(16.9%)、「労働条件(賃金や労働時間等)が求人情報と違った」(16.5%)、「同じ職場の他の労働者と労働条件が違う」(16.0%)、「急に仕事が取消しになった」および「セクハラやパワハラなどのハラスメントがあった」(ともに15.6%)、「賃金(残業代含む)の未払いや支払遅延があった」(13.9%)、「商品等の購入を強いられるなどの強要があった」(13.0%)、「身体的な攻撃を受けた(暴行・傷害)」(10.7%)と続いた。
また、トラブルを経験した人に相談先を聞くと(複数回答)、「労働組合やNPOなどの相談窓口」(22.4%)、「家族や友人」(22.0%)、「スポットワークアプリ事業者」(21.8%)、「就業先の相談窓口や社員」(20.7%)のいずれも20%台で、「行政機関の相談窓口」(15.4%)が10%台。「誰にも相談しなかった」は19.2%となっている。
トラブルがすべて解決した人の割合は約3割
トラブルを相談した人(378人)に、そのトラブルは解決したか尋ねると、「全て解決した」が32.0%、「一部解決した」が51.3%、「全く解決しなかった」が16.7%。
トラブルを誰にも相談しなかった人(90人)に、相談しなかった理由を聞くと(複数回答)、「その日限りの仕事だったので、我慢すれば良いと思った」が30.0%、「相談するほどのトラブルではなかった」が28.9%、「相談先がわからなかった」が26.7%、「相談するのが面倒だった」が23.3%などという結果だった。
働く理由では、約4人に1人が空いた時間の有効活用をあげる
スポットワークで働こうと思った理由(複数回答、3つまで)を尋ねた結果をみると、「生活のために収入を得たいから」が27.1%で最も回答割合が高く、次いで「空いている時間を有効活用したいから」(24.5%)、「賃金がすぐに受け取れるから」(18.4%)、「自分に合う仕事か確認したいから」(14.7%)、「場所や時間にとらわれずに自由に働きたいから」(14.2%)、「面接などがなく簡単に働けるから」(13.0%)、「様々な仕事にチャレンジしたいから」(12.0%)などの順となっている。
スポットワークをいくつ利用しているか聞くと、「1個」と答えた人が67.8%と6割以上を占め、「2個」が15.5%、「3個」が10.3%、「4個」が3.2%などとなっている。
これを男女別にみると、「1個」は男性で62.2%、女性で73.4%、「2個」が男性で18.0%、女性で13.0%などとなっており、男性のほうが2個以上の人の割合が高い。平均個数は男性が1.7で、女性が1.5となっている。
ほぼ4割の人が契約形態を確認せず
スポットワークの求人に応募する際に、「雇用契約」「業務委託契約」といった契約形態について確認しているか(あるいは確認していたか)を聞いたところ、「確認している(していた)」が60.6%、「確認していない(していなかった)」が39.4%で、ほぼ4割の人が契約形態を確認していない。
世代別に「確認していない(していなかった)」割合をみると、10代が31.5%、20代が34.5%に対し、40代が43.0%、50代以上が53.0%となっており、高年齢の世代のほうが未確認の割合が高い。
「確認している(していた)」人に、契約形態を聞いた結果をみると、「雇用契約のみ」が59.2%とほぼ6割で、「雇用契約と業務委託契約の両方」が25.9%、「その他」が0.3%、「わからない」が14.5%だった。
仕事内容は「倉庫作業員」が最多割合
スポットワークで従事したことがある仕事の内容(複数回答)をみると、「倉庫作業員(梱包・ピッキング・仕分け・検品や搬出入作業など)」(27.5%)が最も割合が高く、次いで「飲食店スタッフ(ホール・キッチン・洗い場など)」(21.0%)、「イベントスタッフ(会場設営、チラシ配布、誘導など)」(17.2%)、「スーパー・コンビニ店員(品出し、接客、レジ業務など)」(16.5%)、「オフィスワークスタッフ(データ入力、電話対応など)」(13.0%)、「配送スタッフ(フードデリバリーや荷物配達など)」(11.3%)などの順。
頻度は月に1回以下の人が約4割を占める
スポットワークを行う(行っていた)頻度をみると、「月に1回以下」が42.7%で最も割合が高く、「月に2~3回程度」が20.2%、「週に1回程度」が15.1%、「週に2~3回程度」が11.9%などとなっており、週に1日以上の人の合計割合は37.1%だった。
一度のスポットワークで、どのくらいの時間働くことが多いか(多かったか)尋ねた結果をみると、「1時間未満」が18.8%で最も割合が高く、次いで「3時間~4時間未満」(16.8%)、「2時間~3時間未満」(15.9%)、「1時間~2時間未満」(12.4%)などの順となっており、平均は3.5時間となっている。
同じ日に複数のスポットワークを行ったことがある人の割合は24.8%で、その割合は10代では47.0%と半数近くにのぼる。
同じ日に「複数のスポットワーク」か「本業とスポットワーク」を行ったことがある人(476人)に、合計でどのくらいの時間働くことが多いか尋ねた結果をみると、「3時間未満」の人が27.1%で最も多く、8時間以上の人の合計割合は15.3%だった。
1カ月平均でどの程度の収入を得ているかをみると、「5,000円未満」が22.6%で最も回答割合が高く、次いで「5,000円~1万円未満」(15.6%)、「1万円~2万円未満」(15.0%)、「2万円~3万円未満」(11.9%)、「3万円~4万円未満」(10.1%)などの順となっており、平均は2.8万円だった。
(調査部)
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