推定組織率は16.1%で3年続けて過去最低水準に
――厚生労働省の2024年「労働組合基礎調査」結果
国内トピックス
厚生労働省が昨年12月に公表した2024年「労働組合基礎調査」結果によると、労働組合に加入している人が雇用者に占める割合を示す「推定組織率」は16.1%と、前年に記録した過去最低水準を更新した。組織率が過去最低となるのは3年連続。労働組合員数も前年より2万5,000人減少して991万2,000人になったが、女性やパートタイム労働者の組合員数は前年から増加した。
歯止めがかからない組合員の減少傾向
調査結果によると、個人加入形式で支部・分会などの下部組織を持たない「単位組織組合」と、個人加入形式で下部組織を持つ「単一組織組合」をあわせた「単一労働組合」における労働組合数は、前年に比べて276組合(1.2%)少ない2万2,513組合となった。
労働組合員数は991万2,000人で、こちらも前年より2万5,000人(0.3%)少ない。組合員数は2018年に1,000万人台に回復したが、2021年からは減少傾向に転じ、2022年に再度1,000万人を割り込み、減少傾向に歯止めがかからない状況が続いている。
女性の労働組合員数は前年比3万2,000人増の350万6,000人
こうした組合員数の状況に加え、雇用者数(総務省「労働力調査」6月原数値)が6,139万人と前年に比べ30万人増えたことから、推定組織率は16.1%と前年(16.3%)から0.2ポイント低下し、1947年の調査開始以来、最低の水準となった。推定組織率は2010年の18.5%から9年連続で少しずつ低下し続けていたが、2020年には反転して17.1%となったものの、翌21年からは再び低下し、さらに下がり続けている。
なお、女性の労働組合員数は350万6,000人で、前年より3万2,000人(0.9%)増えた。推定組織率(女性雇用者数に占める女性労働組合員数の割合)は12.4%で、前年と同水準となっている。
パート労働者の組合員も5万3,000人増えて146万3,000人に
パートタイム労働者の労働組合員数は146万3,000人で、前年(141万人)に比べ5万3,000人(3.8%)増えた。全労働組合員数に占める割合は14.9%で、前年(14.3%)より0.6ポイント上昇している。推定組織率(パートタイム労働者数に占めるパートタイム労働者の労働組合員数の割合)は8.8%で、前年(8.4%)より0.4ポイント上昇した。
目を引く「公務」や「運輸、郵便」の労働組合員数の減少
労働組合員数を産業別にみると、最も多かったのは「製造業」で261万5,000人(全体の26.5%)。次いで「卸売業、小売業」156万人(同15.8%)、「建設業」83万9,000人(同8.5%)、「運輸業、郵便業」80万2,000人(同8.1%)などが続いている。
対前年差で増加幅が大きかった産業は、「宿泊業、飲食サービス業」(2万9,000人、8.6%増)や「卸売業、小売業」(1万9,000人、1.2%増)など。他方、「公務(他に分類されるものを除く)」(1万6,000人、2.2%減)や「運輸業、郵便業」(1万2,000人、1.4%減)、「教育、学習支援業」(1万人、2.4%減)、「製造業」(1万人、0.4%減)などは、減り幅の大きさが目立つ。
組合員数は1,000人以上規模が3分の2強を占める
民営企業の労働組合員数は869万5,000人で、前年(869万2,000人)比で3,000人(0.0%)の微増。これを企業規模別にみると、1,000人以上規模が587万5,000人(全体の67.6%)と全体の3分の2強を占める一方で、300~999人規模は108万人(同12.4%)、100~299人規模は53万3,000人(同6.1%)、30~99人規模が16万2,000人(同1.9%)、29人以下規模が2万1,000人(同0.2%)となっている。
対前年差でみると、1,000人以上規模は2万9,000人増えたが、それ以外の規模は減少している。減少数が一番多かったのは、30~99人規模で前年比5,000人減だった。
連合、全労連、全労協とも労働組合員数が減少
主要団体別に、産業別組織を通じて加盟している労働組合員数をみると、連合が681万3,000人(前年比5,000人減)に減らしたほか、全労連も45万1,000人(同1万3,000人減)、全労協も7万3,000人(同3,000人減)と、全国組織はいずれも前年比減となった。
産業別組織をみると、連合傘下では、パートタイム労働者の組織化を積極的に進める「UAゼンセン」(193万6,000人)が前年より4万2,000人増えて突出しているほか、「フード連合」(11万6,000人、同3,000人増)や「航空連合」(4万6,000人、同2,000人増)も増加している。他方、減少幅が目立つのは「自動車総連」(78万1,000人、同1万8,000人減)と「自治労」(70万6,000人、同1万1,000人減)。ほかに、「JP労組」(22万1,000人、同6,000人減)や「電力総連」(19万6,000人、同5,000人減)、「情報労連」(18万9,000人、同5,000人減)、「日教組」(19万6,000人、同4,000人減)なども組合員を減らしている。
全労連傘下では、「全労連自治労連」(11万5,000人、同4,000人減)や「日本医労連」(14万2,000人、同3,000人減)、「国公労連」(4万7,000人、同3,000人減)の減少が目を引く。
集団的労使関係に守られない労働者の増加に強い危機感/連合
調査結果を受けて、連合は12月18日、「推定組織率の低下は、集団的労使関係に守られない労働者が増加し続けていることを示しており、強い危機感を持たなければならない」と言及する清水秀行事務局長の談話を発表した。談話は、「組合員の減少傾向を真摯に受け止め、喫緊の課題として、減少要因の分析、過半数労働組合に関する職場実態の把握に努め、組合規約や労働協約などにおける組合員範囲の見直しなど、組合員減少に歯止めをかける」スタンスを強調。また、連合に年間約2万件にのぼる労働相談が寄せられていることを指摘して、「その多くが労働組合のない職場で働く仲間からの相談だ」としたうえで、「『はたらくのそばで、ともに歩む』を合言葉に、フリーランスを含めすべての働く仲間に寄り添う取り組みを展開していく」考えも示している。
たたかう労働組合の仲間が増えることが春闘要求実現の最大の力に/全労連
一方、全労連も12月20日、組合員数を民営企業の規模別でみて、「企業数の大部分を占める中小零細企業での組織化が課題になっている」などと危機感をにじませたうえで、続く物価の高騰や生活苦の広がりなどを指摘して、25春闘ですべての労働者の大幅賃上げと底上げなどの要求を掲げて取り組む姿勢を強調。「要求を実現させる最大の力は、たたかう労働組合の仲間が増えることにある」などとする黒澤幸一事務局長の談話を発表した。
調査は労働組合や労働組合員を産業別、企業規模別、加盟上部組合別にみた分布状況など、労働組合組織の実態を明らかにすることを目的に毎年実施。すべての労働組合を対象に、6月末日時点での組合員の状況について7月に調査を行った。
(調査部)