70歳までの就業確保措置を実施済みの企業が3割を超える
――厚生労働省の2024年「高年齢者雇用状況等報告」
国内トピックス
厚生労働省が昨年12月に公表した2024年高年齢者雇用状況等報告の結果によると、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は31.9%と3割を超え、1年前の前回調査から2.2ポイント増加した。企業規模別にみると、大企業(301人以上)が25.5%、中小企業(21人~300人以下)が32.4%で、中小企業での実施済みの割合が高くなっている。
調査は、従業員21人以上の企業23万7,052社の2024年6月1日現在の状況をとりまとめた。
65歳までの雇用確保措置で「定年制の廃止」は3.9%と変化なし
65歳までの高年齢者雇用確保措置(雇用確保措置)を実施済みの企業をみると、前年と変わらず99.9%だった。内訳をみると、「継続雇用制度の導入」が67.4%(前年比1.8ポイント減)、「定年の引上げ」が28.7%(同1.8ポイント増)、「定年制の廃止」が3.9%(前年と変わらず)となっている。
そのうち「継続雇用制度の導入」で、65歳までの雇用を確保している企業のうち、対象者を「希望者全員」としているのは86.2%(前年比1.6ポイント増)。企業規模別にみると、中小企業(21人~300人以下)が87.6%(同1.5ポイント増)、大企業(301人以上)が71.1%(同3.0ポイント増)で、中小企業のほうが「希望者全員」としている割合が高い。
また、そのうち、2025年3月31日まで老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の年齢の者について継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることが認められている「経過措置」に基づき、対象者を「基準該当者」に限定している企業の割合は13.8%(前年比1.6ポイント減)。企業規模別にみると、大企業が28.9%(同3.0ポイント減)、中小企業が12.4%(同1.5ポイント減)となっている。
70歳までの就業確保措置は中小企業のほうが進む
70歳までの高年齢者就業確保措置(就業確保措置)を実施済みの企業は31.9%で、前回調査に比べ2.2ポイント増加した。企業規模別にみると、大企業は25.5%(前年比2.7ポイント増)中小企業が32.4%(同2.1ポイント増)となっており、中小企業のほうが実施済みの割合は5%以上高くなっている。
2021年4月1日の改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が努力義務化された。法改正以降の調査結果を振り返ってみると、2021年の調査結果25.6%から毎年数パーセントずつ上昇し、2022年は27.9%、2023年は29.7%となり、今回の31.9%で初の3割台に到達した(図表1)。
図表1:70歳までの就業確保措置実施済みの企業(年比較)
(公表資料から編集部で作成)
就業確保措置を実施済みの企業の措置内容をみると、「継続雇用制度の導入」が25.6%(前年比2.1ポイント増)と最も割合が高く、「定年制の廃止」が3.9%(前年と変わらず)、「定年の引上げ」が2.4%(同0.1ポイント増)などとなっている。業務委託契約を締結する制度や、社会貢献事業に従事できる制度を導入する「創業支援等措置の導入」は0.1%(前年と変わらず)だった(図表2)。
図表2:70歳までの就業確保措置の内訳
(公表資料から編集部で作成)
定年年齢を「65歳以上」とする企業は依然として約3割程度
定年制の状況をみると、定年制を廃止している企業は3.9%(前年と変わらず)で、定年年齢を設定している企業が96.1%。定年年齢は「60歳」が64.4%(前年比2.0ポイント減)、「61歳~64歳」が2.9%(同0.2ポイント増加)、「65歳」が25.2%(同1.7ポイント増)、「66歳~69歳」が1.1%(前年と変わらず)、「70歳以上」が2.4%(同0.1ポイント増)だった。定年を「65歳以上」とした企業(定年制の廃止企業を含む)の割合は32.6%となった(同1.8ポイント増)。
(調査部)
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