契約内容の明示や60日以内の支払いを義務づける
 ――フリーランス新法が成立

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フリーランスとして働く人を保護するための法案「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(フリーランス・事業者間取引適正化等法案)」が4月28日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。フリーランスの人が、受託した業務に安定的に従事できる環境を整備するため、取引の適正化や就業環境の整備を図るもの。業務を委託する事業者に対して、契約内容の明示や、業務の完了・納品から60日以内の支払いを義務づけているほか、育児介護等との両立への配慮も求めている。公布から1年6カ月以内に施行される。

業務の受託者で従業員を使用しない者が対象

新法では、対象となる当事者の定義として、業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しない者を「特定受託事業者」と位置づけ、その個人および特定受託事業者である法人の代表者を「特定受託業務従事者」としている。ここでいう業務委託とは、「事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託すること」と定めている。

フリーランスが業務に安定的に従事できる環境を整備

新法はその趣旨について、「我が国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備」するために、「特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与する」ことを目的としている。

不当な減額や返品を禁止

新法は取引の適正化のため、特定受託事業者に対し業務委託をした場合に、給付の内容、報酬の額等の明示を義務づけているほか、業務の完了・納品から60日以内に報酬支払期日を設定し、支払うことも義務づけている。

さらに、業務委託をした者がしてはならない行為として、①特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること②特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること③特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと④通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること⑤正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること――をあげている。

そのほか、⑥自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること⑦特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること――によって特定受託事業者の利益を不当に害してはならないとしている。

育児介護等との両立への配慮も義務化

新法は、フリーランスの就業環境を整備するための対応も定めている。具体的には、①広告等により募集情報を提供するときは、虚偽の表示等をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければならない②特定受託事業者が育児介護等と両立して業務委託(政令で定める期間以上のもの。以下「継続的業務委託」)に係る業務を行えるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければならない③特定受託業務従事者に対するハラスメント行為に係る相談対応等必要な体制整備等の措置を講じなければならない④継続的業務委託を中途解除する場合等には、原則として、中途解除日等の30日前までに特定受託事業者に対し予告しなければならない――としている。

新法に違反した事業者に対しては、公正取引委員会、中小企業庁長官または厚生労働大臣が助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令を行い、命令違反および検査拒否等に対しては、50万円以下の罰金が科される。

連合は「フリーランスの保護・支援に向けた一歩」と評価

労働側の受け止めをみると、連合は4月28日、清水秀行事務局長名で談話を公表。「『働く者の保護強化』につながる本法律については、連合も今国会の重点法案と位置付け、その成立を求めてきた」としたうえで、「フリーランスの保護・支援に向けた一歩であり、全会一致で成立したことは連合として評価したい」とした。

そのうえで、報酬の支払や、出産・育児・介護との両立の配慮について、「実効性をいかに確保するか」を課題にあげ、「関連する附帯決議の具体化に向け、関係者参画のもと審議会など公開の場における検討を行うべき」と主張。また、フリーランスという働き方について「労働者に近い働き方であるにもかかわらず『曖昧な雇用』として請負契約で就業している者も少なくない」と指摘したうえで、労働者性の判断基準の見直し・拡充は「喫緊の課題であり、早急に議論を開始すべき」と強調した。

全労連は、法案が国会で審議されているなかで、短期の取引についても法を適用することや、最低報酬規制をおくこと、生計を配慮した報酬の支払期日設定をすること(60日以内でなく30日以内とする)などを修正すべき点として主張していた。

(調査部)