相談件数は8月だけで642件。相談内容は「報酬の支払い」や「契約内容」が全体の5割強を占める
 ――厚生労働省などの「フリーランス・トラブル110番」の相談実績から

国内トピックス

9月16日に開催された労働政策審議会雇用環境・均等分科会で、「フリーランス・トラブル110番」の相談実績が開示された。毎月の相談件数は増加傾向にあり、直近のデータである2022年8月の相談件数は642件と、今年に入ってから最も多くなっている。相談内容は、2021年2月以降でみると「報酬の支払い」や「契約内容」についての相談が5割強を占めた。

料金は無料で、解決が難しい場合はあっせんも実施

「フリーランス・トラブル110番」は、個人事業主やクラウドワーカーなど、雇用関係によらないさまざまな働き方をする人が、あいまいな契約やハラスメント、報酬未払いなどのトラブルを相談する窓口で、運営事業者である第二東京弁護士会が、厚生労働省をはじめとする関係省庁と連携して運営する。相談は電話やメールで、匿名でも受け付け、対応は弁護士がワンストップで行う。料金は無料で、個人での解決が難しい場合には和解あっせんの手続も行う。

雇用環境・均等分科会で配付された資料によると、2022年8月の相談件数は642件。2021年度は月平均350件程度だったが、2022年度に入ってから件数は400件台~600件台まで増加している。

和解あっせんの受付件数は、2021年度は134件で、そのうちあっせんを実施したのが89件で、和解成立となったのは24件。2022年度は、4月~8月までの5カ月間で、受付件数が73件、あっせんを実施したのが65件で、和解成立となったのが11件となっている。

相談者は30歳台が最も多く、3割弱を占める

相談者の属性をみると、30~39歳が27.5%で最も割合が高く、40~49歳が25.9%、20~29歳が21.6%とそれぞれ2~3割を占め、50~59歳が15.4%などとなっている。

業種をみると、「配送関係」が15.6%で最も多く、次いで「その他」(14.6%)、「システム開発ウェブ作成関係」(12.7%)、「デザイン関係」(8.1%)、「建設関係」(6.8%)、「美容関係」(5.9%)、「ライター」(4.8%)などの順となっている。

相談内容のトップは「報酬の支払い」

2021年2月~2022年8月までに寄せられた相談7,643件の内容(複数該当ありでカウントしている)は、報酬の不払い、遅延、減額などの「報酬の支払い」が32.1%、契約条件不明確や契約書不作成などの「契約内容」が22.4%で、この2つであわせて全体の5割以上を占める()。「その他」を除いてみれば、次いで、「受注者からの解除」8.0%、「発注者からの損害賠償」7.8%、「作業・成果物・納品」6.8%などの順となっている。

図:フリーランス・トラブル110番 相談内容
画像:図

N=10,995(2021年2月~2022年8月の相談7,643件の相談内容について複数該当有でカウント)

(分科会配付資料から編集部で作成)

相談内容のうち、フリーランスガイドラインの第3「独占禁止法(優越的地位の濫用)・下請法上問題となる行為類型」に該当する相談(2021年5月~2022年8月、2,540件)に絞って割合をみると(複数該当ありでカウントしている)、「報酬の支払遅延」が33.0%、「報酬の減額」が25.5%で、この2つで全体の6割弱を占める。これら以外では、「その他取引条件の一方的設定・変更・実施」(13.8%)、「一方的な発注取消」(10.9%)が比較的、割合が高くなっている。

本相談で解決した割合は19.6%

フリーランス・トラブル110番での相談対応の結果(2021年2月~2022年8月、相談結果の回答があった8,453件)をみると、約2割にあたる19.6%が「本相談で解決した」と回答。同じく約2割にあたる19.0%が「高度相談・ADRを検討する」と答え、110番相談の次のステップに進むとしている。約半数にあたる46.6%は、「自ら交渉する」と回答している。

相談窓口の利用満足度をみると、利用した相談者のうち、約8割は「満足」(「とても満足」(30.7%)と「満足」(49.3%)の合計)と答えており、満足度は高いと言える。18.6%は「普通」と回答した。

(調査部)