2021年度の賞与・一時金水準は非管理職の夏季を除き対前年比プラス
 ――経団連の「2021年夏季・冬季 賞与・一時金調査結果」

国内トピックス

経団連(十倉雅和会長)の「2021年夏季・冬季 賞与・一時金調査結果」によると、2021年度における賞与・一時金水準における対前年増減率は、非管理職の夏季を除いてプラスとなるなど、回復傾向にある。賞与・一時金総額(原資)の決定方法として「業績連動方式」を導入する企業割合は約55%にのぼり、2016年から6年連読で5割を超えた。 調査は、 経団連企業会員および東京経営者協会会員企業2,064社を対象に行い、349社(16.9%)から回収した(うち製造業45.3%、非製造業54.7%)。調査時期は、夏季賞与が2021年6月および7月支給分、冬季賞与が2021年11月および12月支給分 。

2020年度はコロナ禍などで管理職・非管理職の夏季・冬季ともに対前年でマイナス

賞与・一時金の水準の状況を非管理職・管理職別にみると、非管理職平均は夏季72万58円(対前年増減率マイナス 1.0%)、冬季69万2,033円(同プラス1.9%)。管理職平均は、夏季146万1,602円(同プラス0.2%)、冬季134万2,201円(同プラス4.5%)となっている。

前年は コロナ禍などの影響 で 、対前年増減率が非管理職(夏季マイナス 1.5%、冬季マイナス 4.4%)および管理職(夏季マイナス 3.0%、冬季マイナス 5.2%) ともにマイナスとなっていた。今回調査での対前年増減率は、非管理職の夏季を除いてプラスの結果となっており、回復に転じている様子がうかがえる。

新聞・出版・印刷業の夏季賞与・一時金は対前年増減率20%超に

非管理職の夏季、冬季の賞与・一時金の水準を、製造業・非製造業別にみると、製造業平均は夏季72万6,406円(対前年増減率マイナス 2.9%)、冬季73万1,997円(同プラス2.0%)。非製造業平均は、夏季71万4,628円(同プラス0.7%)、冬季65万7,897円(同プラス1.9%)となった。対前年増減率は、製造業の夏季を除き、いずれもプラスの数値となっている。

製造業のなかでは、夏季について、 対前年増減率が「新聞・出版・印刷」で プラス22.6%となり、前年(同マイナス 45.7%)から大きく回復し、プラスに転じた。一方、 製造業の他の産業ではいずれもマイナスの数値になっており、特に「繊維・衣服」(同マイナス 5.0%)、「機械器具」(同マイナス 4.6%)などでマイナス幅が大きい 。 冬季では、「機械器具」(同プラス5.5%)をはじめとして、多くの産業で前年比プラスに転じた。

非製造業・夏季では、対前年増減率が「土木建設業」(同マイナス 2.4%)でマイナスとなったものの、それ以外の非製造業の産業ではいずれも約1~2%のプラスとなった。 冬季では、「土木建設業」(同マイナス 0.5%)、「電気・ガス業」(同マイナス 1.6%)以外の産業でプラスとなり、特に「運輸・通信業」(同プラス3.5%)、「卸売・小売業」(同プラス3.1%)などでプラス幅が大きくなっている(図表)。

図表:非管理職平均における産業別の賞与・一時金支給額
画像:図表

注1:対前年増減率は、産業ごとに集計企業の平均支給額と対前年平均増減率を基に算出。△印はマイナスを示す。

注2:製造業のうち「石油・石炭製品」、非製造業のうち「鉱業」については支給額、対前年増減率の掲載がなかったため割愛。

出所:経団連公表資料(支給額と対前年増減率のみ抜粋して掲載)

業績連動の基準は「営業利益」を指標とする企業が6割超

2021年度における賞与・一時金総額(原資)について、あらかじめ定めた算式によって賞与・一時金の総額(原資)を決定する「業績連動方式」を導入している企業の割合は55.2%となった。前年(60.1%)に比べて4.9ポイント減となったものの、2016年から6年連続で5割を超えている。

導入している企業における、業績連動の基準とする指標(複数回答)をみると、「営業利益」を基準とする企業が60.2%で最も割合が高く、次いで「経常利益」(34.3%)、「生産高、売上高」(24.9%)、「付加価値」(5.0%)などの順で高くなっている。

夏季賞与・一時金の配分は考課査定分と定額分の割合が増加

夏季の賞与・一時金の配分割合について、1人あたりの平均支給率を100として、配分比率を高い順にみると、非管理職・管理職ともに「考課査定分」(非管理職39.4%、管理職51.1%)で最も高く、次いで、「定額分」(同30.2%、28.2%)、「定率分」(同27.7%、17.5%)などの順となっている。

2001年からの5年ごとの経年変化をみると、2001年は非管理職・管理職ともに「定率分」(同61.1%、41.4%)が最も高く、次いで「考課査定分」(同23.8%、45.1%)、「定額分」(13.3%、12.1%)となっていたが、「考課査定分」、「定額分」は5年ごとに徐々に増加する一方、「定率分」は5年ごとに段々と減少した。

最高幅と最低幅が同一の考課査定実施企業では「10%以上20%未満」幅の割合が最高に

夏季の賞与・一時金における考課査定幅について、標準者を0とした場合の分布状況をみると、非管理職・管理職ともに「最高と最低の幅が同じ場合」では「10%以上 20%未満」が最も高い(非管理職32.3%、管理職26.9%)。

「最高と最低の幅が異なる場合」では、非管理職・管理職ともに「50%以上」が最も高く、非管理職の最高幅「50%以上」(30.2%)、最低幅「50%以上」(37.6%)、管理職の最高幅「50%以上」(30.1%)、最低幅「50%以上」(30.8%)はいずれも30%台となっている。

(調査部)