法施行後も、7割近いパートタイマーが正社員との間に不合理な待遇差を感じる
 ――パート・有期雇用労働法施行後の状況を東京都が調査

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正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の間の不合理な待遇差の禁止が2021年4月から中小企業にも適用されたことなどをふまえ、東京都が2021年10月1日時点の正社員とパートタイム労働者などの処遇格差の実態について調査したところ、7割近いパートタイム労働者が、正社員との間に何らかの不合理な待遇差があると感じると答えた。不合理な待遇差としては「賞与」が最も多くあがり、「退職金」が続いた。調査は、4月21日に発表された2021年度中小企業労働条件等実態調査「パートタイマーに関する実態調査」。都内の事業所3,000所および同事業所に勤務するパートタイマー1,928人を対象に実施し、859事業所・558人から回答を得た。

パートタイマーに「退職金」や「家族手当」がある事業所は1割以下

事業所調査で、「定期的な昇給」「退職金」「家族手当・扶養手当」などの制度・支給の状況を、正社員とパートタイマーに分けて尋ねた。制度や支給が「ある」とした割合を、パートタイマーについてみると、「定期的な昇給」43.8%、「退職金」8.9%、「通勤手当」94.2%、「皆勤・精勤手当」4.5%、「役職手当」16.0%、「家族手当・扶養手当」7.6%、「住宅手当」2.9%、「休業手当」47.1%、「慶弔休暇」59.9%、「病気休職」52.5%となっており、「退職金」や「家族手当・扶養手当」、「住宅手当」は1割以下となっている。

正社員とパートタイマーの間で、「ある」とした割合の差が大きかったのは、「定期的な昇給」(正社員80.9%)、「退職金」(同82.9%)、「役職手当」(同88.9%)、「家族手当・扶養手当」(同62.1%)、「住宅手当」(同53.1%)などとなっている。

パートタイマーの69.2%が、正社員との間で何らかの不合理な待遇差があると回答した(不合理な差があるとは思わないとしたのは26.9%)。不合理な待遇差の内容(複数回答)は、「賞与」が最も高く49.6%で、これに続くのが「退職金」の33.7%、「基本給」の27.4%、「手当の支給(家族手当、住宅手当等)」の20.3%、「休暇制度」の19.5%などとなっている(図表)。

図表:不合理な待遇の差があると感じる点(複数回答)
画像:図表

(プレスリリースから編集部作成)

職場に「業務の内容及び責任の程度が同じ正社員がいる」と回答したパートタイマー(全体の22.6%)に、賃金水準に対する感じ方を尋ねたところ、ほぼ半数にあたる50.8%が「賃金水準が低く、納得していない」とした。「賃金水準は低いが、納得している」は28.6%と3割以下で、「同等またはそれ以上の水準である」は12.7%だった。

4割強の事業所で不合理待遇差をなくす取り組みを実施・予定

パートタイマーを雇用している事業所に、不合理な待遇差をなくすための取り組みの実施状況を尋ねたところ、過去5年間に「実施した」のは29.6%で、「実施する予定」が11.5%。「待遇差に関する点検を行い、不合理な待遇差がないことを確認した」が32.9%となっている。

不合理な待遇差をなくすために事業所が取り組む具体的な内容については、「休暇制度の見直し」が最も高く、実施済みと予定を合わせて44.5%。これに「待遇差に関する根拠の明確化」(同41.7%)、「正社員への転換制度の導入・見直し」(同36.5%)、「基本給の引き上げ・算定方法の変更」(同36.0%)などが続く。

一方、パートタイマーにこの5年間の処遇改善の状況を聞くと、改善を実感していると答えたのは36.0%(「改善した」8.1%、「少し改善した」28.0%)で、改善していない(「改善していない」31.2%、「悪化した」1.6%)とするパートタイマーも同程度いた。

パートタイマーが実際に処遇改善を実感したのはどのような点だろうか。回答によると(複数回答)、「基本給」が57.2%、「休暇制度」が33.8%、「賞与」が23.4%などとなっている。不合理な待遇差の内容として上位にあがっていた「退職金」(2.0%)や「手当の支給(家族手当、住宅手当等)」(3.5%)の改善を実感したのはごく少数にとどまっている。

(調査部)