賃上げ・一時金ともに目立つ満額回答、初任給は組合要求を上回る引き上げも
 ――単組の賃金・一時金の取り組み状況

ビジネス・レーバー・モニター調査

単組から寄せられた報告では、賃上げ・一時金で満額回答を得た組合が複数みられたほか、休暇制度の改善も目立っている。初任給および18歳最低賃金については、要求を上回る引き上げや、要求をしていないが会社側から増額を提示された単組もあった。自動車の単組は賃上げ・一時金ともに満額回答で決着したうえで、春闘の場でカーボンニュートラルやデジタル化への対応を議論した。

造船・重機は1,500円の賃金改善、非鉄金属の単組は一時金で満額回答

【造船・重機】では2単組から報告があった。A社の単組は上部産別組織の統一要求として3,500円の賃金改善を要求。年間一時金については、労使で合意した業績連動算式による金額および月数を求めた。賃上げは1,500円で決着。年間一時金は「5.8カ月及び特別生産協力金6.5万円」で妥結したほか、18歳最低賃金について、要求どおりの17万3,000円で妥結している。

またA社労組の独自要求として、①作業服等全般に関する課題解決のための「労使検討委員会」の設置②外国出張および海外駐在員取扱規程全般について、制度体系が現状に見合っているかを労使で相互検証する場として「労使検討委員会」を設置③慶弔休暇の適用範囲について、配偶者祖父母の弔事まで拡大して連続2日の慶弔休暇を付与④看護休暇および介護休暇について、休暇日数をそれぞれ拡大し、当該子または被介護者1人につき、年間取得限度日数を5日から10日に拡大する。ただし、当該子または被介護者が2人以上いる場合は、それぞれの制度につき20日を限度とする⑤フレックスタイム制における育児・介護の短時間勤務制度の導入⑥カフェテリアメニューの改善として、営業職等におけるビジネスウェア購入費用の補助を追加⑦同じくカフェテリアメニューの改善として、帰省時等における交通費の補助を追加――の7点を要求し、全て要求通りで妥結している。

【造船・重機】のB社労組も賃金改善について、「3,500円の増額」を求めるとともに、「60歳以降の者も一般社員に準じた成果が反映される」ことを要求した。賃金改善については1,500円で妥結したものの、60歳以降の者への対応は別途協議で決着した。年間一時金は5.8カ月を要求し、満額回答となった。

【非鉄金属】の単組も上部団体の方針に基づき、3,500円の賃金改善を要求し、交渉の結果、「今後の人事制度に関する協議を行った上で賃金改善を決める」こととなった。年間一時金は260万円を要求して満額回答となっている。その他、①年次有給休暇の入社初年度付与数について、1月雇入れ時に現行15日付与としているところ、20日への付与数増②積立年休の日数について、現行45日を60日に拡大――を要求。①は1日増の16日間の付与で妥結。②は要求通りとなっている。年次有給休暇の入社初年度付与数の増加や、積立年休の見直し及び総積立日数増についても話し合われた。

初任給が要求を大きく上回る回答に――電機の単組

【電機】の単組は、3,000円の賃金水準改善と、初任給の2,000円引き上げを要求した。このうち賃金水準改善は、満額回答で決着。初任給は高卒5,000円、大卒・高専・修士10,000円の引き上げと、要求を大幅に上回る回答となった。このほか、①カフェテリアプランでの介護ポイントの利用対象者に祖父母を追加②雇用延長制度の適用年齢を65歳から70歳までに③妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした社員に対し、育児のための特別休暇を20日間付与――を要求。①は要求どおりの回答を得ている。

カーボンニュートラルやデジタル化などについても労使で議論――自動車の単組

【自動車】の単組は、賃金について職能資格別に1,270~4,900円の引き上げを、年間一時金について6.9カ月分をそれぞれ要求。いずれも要求通りで妥結した。

今春闘ではあわせて、「生産変動に対する仕入先の困りごとと対応」「仕入先の困りごとを聞けているか」「カーボンニュートラルについて正しく理解し、産業をあげて取り組むこと」「多様性を尊重するための、画一的なマネジメントではなく一人ひとりに寄り添った対応」「業務改廃について幹部がリーダーシップを発揮し、メンバーの一人ひとりも自分事として取り組み続けること」「デジタル化の目的と今後必要な取り組み」についても、労使で意見交換したという。

2年ぶりにベア(2,500円)を獲得――化繊の単組

昨年の春闘でベア要求をしなかった【化繊】の単組は、今次春闘ではベースアップ分として3,344円(1%)を要求し、ベア2,500円(0.74%)で妥結している。賃金改定原資には、4組3交替の交替手当の1,000円引き上げが含まれる。なお、定期昇給(6,127円、1.82%)は労働協約にもとづき確認されている。また、継続課題であった組合員の処遇制度の見直しも並行して労使協議が行なわれた。

要求していない初任給で増額回答が――建設の単組

【建設】の単組は賃上げ要求について、「会社の魅力や働きがいを向上させて離職や中間層の人材流出を防止するためには、組合員からの要望が多いベアの実施が必要」との観点で要求し、年間一時金についても「継続した株主配当予測を鑑み、モチベーションの低下を防止するため、社員にも還元することは必要」と主張した。賃金・一時金とも会社が組合の要求に満額回答で応えたほか、組合が要求しなかった初任給についても増額の回答があった。

企業内最賃や諸手当でも要求通りの回答みられる

【陶業】の単組は、①正規組合員について、賃金カーブ維持とベースアップ1%分相当として8,500円(2.58%)の賃上げ②契約社員について、1%相当として時給20円引き上げ③一時金を年間218万円(6.62カ月分)支給④企業内最低賃金の時間単価を現行の980円から1,000円に引き上げ――を求め、いずれも要求通りで妥結した。

【ゴム】の単組は、単身赴任手当の増額(1月あたり1万2,000円を1万5,000円に)のほか、長期国内出張準備金の支給、出張中の生活に必要な備品購入代金として準備金支給を検討することを要求。一時金については、組合員平均144万円に加え、期末手当6万円(上期3万円、下期3万円の一律支給を基本とし、組合員の貢献度により判断)の計150万円を要求した。いずれも要求通りで妥結した。

【事務・精密機器】の単組は企業内最低賃金について、現行の1時間あたり1,060円を1,100円に改定することを要求し、要求通りで妥結した。【医薬品】の単組は協定に基づく昇給、賞与支給の実施となっている。