柔軟な労働時間や長時間労働の是正、休日増などで前進回答も
 ――産別での「働き方」「休み方」に関する議論

ビジネス・レーバー・モニター調査

賃金・一時金以外に春闘で要求・交渉した内容について、産別からの報告をみると、テレワークやフレックスタイム制度といった「働き方」だけでなく、休暇制度の改善・拡充といった「休み方」についても議論したとの報告が多く、年間休日や有給休暇の付与日数の増加の回答を引き出した組合もある。その他、健康確保やハラスメント対応についても話し合われている。

デジタルツールの活用やペーパーレス化を推進

生保労連は、全組合が参加・共闘して取り組む「統一共闘課題」として、①営業活動・働き方の変革をサポートする各種制度・施策の充実と定着②『生産性の高い働き方』と『生活時間の充実』の相乗効果をより意識した取り組みの推進――の2点を提示。

各単組が交渉した結果、前者については、営業職員関係ではデジタルインフラ面の整備やデジタルツールの活用に向けた各種支援策の充実等、内勤職員関係ではテレワーク対象業務の拡大等の回答を引き出した。後者についても、長時間労働抑制や休暇取得に向けた対応強化(ペーパーレス化の推進等も含む)、育児のための時短勤務対象子女の年齢引き上げ、仕事と治療の両立支援策の拡充(有給の特別休暇の新設等)等の回答が示されている。

印刷労連では、職場環境の精度向上とワーク・ライフ・バランスに主眼をおくなかで、「改正育児・介護休業法に伴った取り組み」「テレワーク」「有給休暇の仕組み、定年制のあり方」「ハラスメント防止対策」「フレックスタイム制度などの勤務制度の見直し」「人事制度の処遇の見直し」「所定労働時間」などの要求を掲げているが、継続した労使協議を行うとの回答を提示されている傾向にあるという。

コロナ禍での特別休暇制度やテレワーク制度の整備を要求した組合も

サービス連合は、「総実労働時間短縮、両立支援・男女平等社会の実現、高年齢者の雇用確保の3点を重点的に取り組んだ」としている。

このうち総実労働時間短縮については、所定労働時間の短縮や休日数の増加などを要求した加盟組合も多く、一部で合意に至っている。また、年次有給休暇の取得推進、積立年休制度の拡充などを要求した加盟組合もあり、労使で認識をあわせている状況だという。

また、新型コロナに罹患した際や濃厚接触者となった際の特別休暇制度の導入や、テレワーク制度の整備について要求した加盟組合もみられる。

ハラスメント防止に向けた要求も

航空連合の加盟組合では、「働き方」「休み方」の改善に関して、「忌引休暇の増加」「年間公休数の増加」「総実労働時間の縮減」「フレックスタイム制度・テレワーク制度の導入・改善」を要求した労組があった。忌引休暇については回答を得られた労組があったほか、フレックスタイム制度・テレワーク制度についても導入やトライアルの実施といった回答があり、より柔軟な働き方が実現した労組もあった。

また、ハラスメントに関するマニュアルの作成や研修の実施を要求した加盟組合もあり、会社からは「重要な課題と捉えている」という認識のもと、研修の実施について回答があったという。

年休取得や高齢者再雇用で前進回答

長時間労働の是正については、JEC連合の多くの加盟組合が要求し、これまでに「勤務間インターバル制度の導入や試験導入」「時間単位での年休取得が可能に」「年間休日が増加」「有給休暇の最低取得日数が法定の5日から8日へ拡大」などの改善が図られている。

高齢者の雇用確保・賃上げに関しても、「定年が引き上げられた」組合があったほか、「継続雇用者の賃上げに関して前進回答があった」ところも6組合あり、「その額は平均で月額13,300円」になった。さらに、継続雇用者の一時金に関しても、「4組合で前進回答があった」という。

セラミックス連合では、傘下の14組合が年間総労働時間短縮に関する要求を行った。年次有給休暇取得向上は7組合が、有期・短時間・契約等の処遇改善は9組合、60歳以降の高齢期における雇用・処遇については10組合が要求している。

紙パ連合は、賃上げ・一時金以外の産別要求方針として、「60歳以降の継続雇用制度充実および定年延長」「総労働時間短縮」「雇用形態にかかわらず全ての労働者の処遇改善」「働き方改革の職場への定着」「ジェンダー平等・多様性推進」を掲げており、各単組はこれらに基づき諸要求を行った。

具体的には、複数の単組が、勤続年数が短い労働者について、年次有給休暇の付与日数拡大を要求し、初年の付与日数が2~4日増加することとなった。年間休日数については、多くの加盟組合が増加を要求したが、経営側は軒並み見送りの回答を示している。このほか、通勤手当の増額を要求して、倍増(たとえば30km以上では現行の4,000円を8,000円に引き上げ)を勝ち取った組合もあるという。

ゴム連合は、幅広いテーマで付帯要求を提示

ゴム連合でも今次春闘の付帯要求として、「月60時間を超える時間外労働割増率を50%へ引き上げ」「介護短時間勤務の適用期間の拡充」「積立年休10日増」「保存休暇の使用条件緩和」といった労働時間・休暇に関するものや、「単身赴任者への手当の見直し」「都市部手当の導入」「選任者手当の支給」「資格手当の再整備」などの諸手当に係わるもののほか、「入社後の育成支援に向けた仕組みの検討」や「出向制度の見直し」「退職金制度・水準の維持」「退職金算定期間の延長」など、幅広いテーマを交渉のテーブルに乗せているという。

建設で転勤・単身赴任にかかる負担減を要求

日建協では、加盟単組が転勤や単身赴任にかかる経費支援の拡充や、健康確保に関する要求を行っている。

ある単組は、単身赴任者の帰宅旅費および独身者の帰寮旅費の支給について、現行は2カ月で4回となっているところ、2カ月で6回への拡充を要求し、1カ月で3回とすることで合意。また別の単組は、転勤による住居の退去にともなう原状回復修理費の個人負担について、上限の引き下げを要求し、交渉の結果、入居から1年以内での転居の場合は、原状回復修理費を全額会社負担とすることで合意した。

健康確保にかかわる要求では、ある単組は現行、インフルエンザの予防接種(扶養家族を含む)や各種がん検診、禁煙外来等が健康補助金制度の対象となっているが、今次春闘では、これらに加えて健康診断の二次検診費用や配偶者の健康診断費用(39歳以下)も補助の対象とすることを要求。交渉の結果、健康診断の二次検診費用が5,000円を上限に補助の対象となった。そのほか、人間ドック費用の補助対象年齢を30歳以上とすることや、睡眠時無呼吸症候群の簡易検査を補助対象とすることで合意した。

なお、ここ数年は多様な働き方の推進として、服装の自由化やビジネスカジュアルの導入・試行が増えているという。