月例給は29年ぶりの約4,000円アップ
 ――人事院の2023年度給与勧告

国家公務員の職場整備

人事院は今年の国家公務員の給与改定については、月例給を平均3,869円(0.96%)、特別給(ボーナス)を0.10カ月引き上げるよう、国会と内閣に対して勧告した。月例給の引き上げ幅は1994年の3,975円以来29年ぶりの水準で、過去5年間の官民較差平均約360円と比べて10倍以上の上げ幅となった。また勧告は、在宅勤務などで働く職員の費用負担軽減のため、在宅勤務等手当の新設にも言及している。

月例給は初任給や若年層に重点を置きつつも全職員を対象に引き上げ

人事院は、月例給について、公務と民間(約46万人分)の4月分の給与を調査して比較。民間給与が公務の給与を平均3,869円(0.96%)上回ったため、その分の較差を解消するために引き上げを行うよう勧告した。3,869円のうち、438円は俸給の改定に伴い諸手当の額が増減する「はね返り分」となるため、純粋に俸給の引き上げ分となるのは3,431円となる。

具体的な改定方法については、民間との給与比較を行っている行政職俸給表(一)について、総合職試験で採用される職員の初任給を5.8%(1万1,000円)、一般職試験(大卒程度)で採用される職員の初任給を5.9%(1万1,000円)、一般職試験(高卒者)で採用される職員の初任給を7.8%(1万2,000円)引き上げる。また、これを踏まえ、若年層が在職する号俸に重点を置き、そこから改定率を逓減させる形で引き上げ改定を行うとしており、平均改定率は1級(係員)で5.2%、2級(主任等)で2.8%などとなっている。

また、定年前再任用短時間勤務職員の基準俸給月額については、各級の改定額を踏まえ、所要の引き上げ改定を行うこととしている。

俸給表の改定は今年の4月1日にさかのぼって実施。全職員を対象に引き上げを実施するのは2018年以来5年ぶりとなっている。

ボーナスの支給月数は4.50カ月で引き上げ分は期末・勤勉手当双方に均等配分

ボーナスについては、約1万1,900民間事業所の昨年8月から今年7月までのボーナスの支給月数と国家公務員の支給月数を比較。民間の支給月数(4.49カ月)が国家公務員の支給月数(4.40カ月)を上回ったため、年間支給月数について、現行の4.40カ月から0.10カ月引き上げ、4.50カ月にするよう勧告した。引き上げ分は、期末手当と勤勉手当に均等に配分する。

また、指定職俸給表適用職員、定年前再任用短時間勤務職員の期末手当・勤勉手当、任期付研究員および特定任期付職員の期末手当についても、同様に支給月数を引き上げる。

俸給表の改定は法律の公布日に実施。今年のボーナスは6月にすでに、 期末手当部分として1.20カ月、勤勉手当部分として1.00カ月が支払われていることから、12月のボーナスの期末手当部分を現行より0.05カ月多い1.25カ月、勤勉手当部分を現行より0.05カ月多い1.05カ月とする。来年度以降は、6月、12月それぞれ、期末手当部分が1.225カ月、勤勉手当部分が1.025カ月となる。

月例給、ボーナスともにプラス改定を求める勧告は、昨年以来2年連続。月例給の引き上げ幅は過去5年間の官民較差平均約360円(約0.1%)と比べて10倍以上にのぼり、官民較差の額3,869円は、1994年の3,975円以来29年ぶりの水準、官民較差の率0.96%は、1997年の1.02%以来26年ぶりの水準となった。

在宅勤務等手当として月額3,000円支給を提言

勧告はこのほか、在宅勤務等を中心とした働き方をする職員について、在宅勤務等に伴う光熱・水道費等の費用負担が特に大きいことを考慮し、その費用負担を軽減するため、在宅勤務等手当の新設を提言。一定期間以上継続して1カ月あたり10日を超えて正規の勤務時間の全部を勤務することを命ぜられた職員について、月額3,000円を支給することとし、2024年4月1日から実施するとしている。

また、同手当を支給される職員で通勤のための交通機関等を利用する場合は、平均1カ月あたりの通勤所要回数分の運賃等相当額を通勤手当として支給することなども盛り込んだ。

非常勤職員給与も常勤職員に準じた改定を

非常勤職員の給与については、常勤職員との均衡をより一層確保することを目的に、今年4月に非常勤職員の給与に関する指針を改正した際に、「給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて改定するよう努める」旨を追加していることから、指針の内容に沿った適切な給与支給が行われるよう、各府省を指導していくとしている。

「早期に勧告どおりの給与改定を実施すべき」(連合)

連合は同日、清水秀行事務局長の談話で給与勧告について、「社会全体に賃上げを波及させるべく、早期に勧告どおり改定を実施すべき」とコメント。また、人事委員会が置かれている地方自治体では地方公務員の給与にかかる勧告が行われることから、「少なくとも同様の引き上げ勧告がなされること、あわせて、会計年度任用職員についても、常勤職員の給与改定に準じて、適切に支給されることを求める」などとしている。

全労連は黒澤幸一・事務局長談話で、「私たちの切実な要求が一定前進した」とする一方、「実質の生活改善につながらない不十分な勧告にとどまっており、強い不満を表明」するとし、「物価上昇に負けず、生活改善につながる賃金の引き上げを行うべき」としている。

(調査部)