テクノロジーの活用により求人企業開拓や求職者確保の効率化に効果
 ――厚生労働省「雇用仲介におけるテクノロジー活用についての調査結果」から

国内トピックス

職業紹介事業者、募集情報等提供事業者ともに、テクノロジーの活用によって、求人企業開拓や求職者確保、情報取得・入力作業・管理の効率化で効果を得ていることが、労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会で報告された「雇用仲介におけるテクノロジー活用についての調査」(厚生労働省委託事業)の結果から分かった。今後についても、テクノロジーの活用で、求人企業開拓や求職者確保、情報取得・入力・管理の効率化に力を入れたいとする事業者が多くなっている。

調査は、2022年度の厚生労働省委託事業「職業紹介事業等の今後のあり方についての調査・研究事業」で実施されたもの。対象は、雇用仲介にかかわる職業紹介事業者と募集情報等提供事業者、それを利用する求人者で、アンケート調査とヒアリング調査を行っている。アンケート調査では、各事業者計2,815法人に調査票を送付し、有効回答があった350法人(職業紹介事業者151法人、募集情報等提供事業者61法人、求人者138法人)を対象に集計・分析している。

いずれの事業者も2割程度でテクノロジーの活用が進む

審議会で報告があった調査結果資料と厚生労働省が公表した調査結果概要によると、採用に関する自社のテクノロジー活用について、「進んでいる」の回答割合と「やや進んでいる」の回答割合の合計は、職業紹介事業者が21%(進んでいる:4%、やや進んでいる:17%)で、募集情報等提供事業者が16%(同3%、13%)となっている。

テクノロジーの活用により得られている効果をみると(複数回答)、「取得した情報の管理の効率化」(職業紹介事業者55%、募集情報等提供事業者48%)、「情報取得・入力作業の効率化」(同44%、41%)、「取り扱う求人企業を開拓する一連のプロセスの効率化」(同40%、46%)などの割合が両事業ともに比較的高く、情報管理・入力などの作業で効果を得ている事業者が多い状況となっている。

これに対し、「取得した情報の検証の効率化」(同21%、26%)、「マッチング/選考機会に繋がる情報提供の質・スピードの向上」(同28%、23%)、「条件に合致した求職者/求人企業の絞り込みの質・スピードの向上」(同33%、25%)といった、情報の検証やマッチングの質・スピード向上などの点では、効果を得ている事業者割合はそれほど高くない。

テクノロジー活用が進む事業者ほど求人開拓プロセス効率化などを実感

これをテクノロジー活用の進展度別にみると、テクノロジー活用が進んでいる事業者ほど、職業紹介事業者では「取り扱う求人企業を開拓する一連のプロセスの効率化」や「取得した情報の検証の効率化」、募集情報等提供事業者では「マッチング・選考機会に繋がる情報提供の質・スピードの向上」や「求職者を呼び込み確保する一連のプロセスの効率化」などで効果を得る回答割合が高くなる傾向がうかがえた。

サービスを利用する側である求人者の回答結果をみると、テクノロジーの活用により得られている効果について、「情報取得・入力作業の効率化」が54%で最も高く、次いで「求職者を呼び込み確保する一連のプロセスの効率化」(48%)、「取得した情報の管理の効率化」(46%)などの順となっている。

テクノロジーを活用して今後強化するのは求人開拓など

「活用により得られている効果」の設問と同じ選択肢で、職業紹介事業者、募集情報等提供事業者に対して、テクノロジーを活用して今後さらに強化したい/新たに取り組みたいことを尋ねると(複数回答)、求人企業開拓や求職者確保、情報取得・入力・管理の効率化に関する回答はおおむね3~5割台となっている。

マッチング/レコメンドに関連する選択肢項目はいずれも、「活用により得られている効果」として尋ねた際は回答割合が比較的低かったが、強化したい・新たに取り組みたい項目としては回答割合が3~4割にのぼっており、今後は取り組みが広がってく可能性がある。

一方、求人者に、今後、職業紹介事業、募集情報等提供事業を利用する際に特に期待していることを尋ねると(複数回答)、求職者確保や情報取得・入力・管理の効率化に関するものでは「求職者を呼び込み確保する一連のプロセスの効率化」(43%)が4割台にのぼり、他も3割近くに及んだ。マッチング/レコメンドなどに関するものでは「求職者/求人企業に提供するマッチング/スクリーニング/選考精度の向上」(35%)と「条件に合致した求職者/求人企業の絞り込みの質・スピードの向上」(33%)が3割を超えた。

このほか調査結果からは、求人情報を検証する際に、テクノロジー活用が進んでいる事業者のほうが、手動・目視以外の検証を実施している傾向があることや、テクノロジー活用が進んでいる事業者のほうが、検索機能やアルゴリズムを用いたマッチングやレコメンドなどを実施していること、テクノロジー活用が進んでいる事業者のほうが全般的にリスクへの対応の実施度合いが高いことが明らかとなっている。

(調査部)