新規求職申込件数と就職件数がコロナ禍前の水準まで改善
 ――2022年度のハローワークを通じた障がい者の就職の状況

国内トピックス

厚生労働省のとりまとめによると、2022年度におけるハローワーク(公共職業安定所)を通じた障がい者の就職の状況は、コロナ禍以前の水準まで改善している様子がみられる。新規求職申込件数は前年度比4.2%増の23万3,434件で、就職件数は同6.6%増の10万2,537件。厚労省では、就職件数の増加は、「卸売業、小売業」での求人数の増加が寄与したものと考えられるとしている。ハローワークに寄せられた障害者差別および合理的配慮の提供に関する相談は前年度に比べ7.8%減少した。

就職率は2021年度に比べ1.0ポイント上昇

新規求職申込件数をコロナ禍以前の2019年度(22万3,229件)と比べると、1万205件多くなっており、就職件数は、2019年度(10万3,163件)をまだ上回ってはいないものの、近い水準にまで回復している。

就職件数を新規申込件数で除した就職率は43.9%で、前年度に比べ1.0ポイント上昇した。

就職件数と就職率を障がい種別にみると、「身体障がい者」については、就職件数が前年度比1,085件増(5.2%増)の2万1,914件で、就職率が同1.8ポイント増の37.7%。「知的障がい者」については、就職件数が同616件増(3.1%増)の2万573件で、就職率が同0.2ポイント増の57.8%。「精神障がい者」については、就職件数が同8,189件増(17.8%増)の5万4,074件で、就職率が同1.4ポイント増の43.8%。「その他の障がい者」については、就職件数が同3,533件減(37.2%減)の5,976件で、就職率が同4.3ポイント減の37.0%となっており、就職件数の増加幅に関しては精神障がい者での増加幅の大きさが目に付く。

就職件数の伸び率が大きいのは宿泊業、飲食サービス業など

就職件数の対前年度比について、産業別にみていくと(ただし構成比が0.0%の「鉱業、採石業、砂利採取業」を除く)、最も増加幅が大きいのは「宿泊業、飲食サービス業」(24.7%増)で、次いで「生活関連サービス業、娯楽業」(13.7%増)、「不動産業、物品賃貸業」(13.2%増)、「学術研究、専門・技術サービス業」(10.9%増)、「医療、福祉」(9.0%増)などの順で大きい。就職件数の構成比としては、「医療、福祉」が38.2%と4割近くを占めて、最も大きい。

解雇者数をみると、1,605件と前年度より51件少なくなっており、2017年度以降では最も低い水準となっている。理由別に解雇者数をみると、「事業縮小」が1,020件を占めており、「事業廃止」が485件などとなっている。

差別や合理的配慮の提供に関する相談件数は2021年度から減少

障害者雇用促進法では、すべての事業主に対して、「障害者であることを理由とした障害者でない者との不当な差別的取扱いの禁止」や「障害者に対する合理的配慮の提供義務」「障害者からの相談に対応する体制の整備・障害者からの苦情を自主的に解決することの努力義務」を規定している。事業主による法令違反に対しては、ハローワークなどが行う助言、指導または勧告によって是正を図っている。

2022年度にハローワークに寄せられた障害者差別および合理的配慮の提供に関する相談は225件で前年度から19件減少。その内訳は「障害者差別」が37件、「合理的配慮の提供」が188件だった。

合理的配慮の提供に関する相談内容のトップは上司・同僚の理解

障害者差別に関する相談内容としては、「募集・採用時」が22.9%で最も割合が高く、次いで「配置」(18.8%)、「賃金」(12.5%)、「解雇」(10.4%)などの順で高い割合となっている。一方、合理的配慮の提供に関する相談内容では、「上司・同僚の障害理解に関するもの」(25.0%)が最も割合が高く、これに「業務内容・業務量に関するもの」(17.7%)、「相談体制の整備、コミュニケーションに関するもの」(13.0%)、「出退勤時間・休憩・休暇に関するもの」および「就業場所・職場環境に関するもの」(ともに9.7%)、「作業負担や移動負担に関するもの」(9.3%)などが続く。

相談後の状況をみると、「ハローワークにおいて確認後、助言等を実施(法違反は確認されず)」が53.8%と約5割を占め、「相談のみで終了」が41.8%などとなっており、助言や紛争解決援助、調停などへの移行するケースは少ない。

(調査部)