パネルディスカッション:第60回労働政策フォーラム
職場のいじめ・嫌がらせ、パワハラ
—今、労使に何ができるのか—
(2012年5月31日)

パネリストとコーディネーター壇上写真

パネリスト

本多 則惠
厚生労働省大臣官房参事官(賃金時間担当)
武田 勝
積水ハウス株式会社法務部ヒューマンリレーション室部長
白石 裕治
全タイヨー労働組合中央執行委員長
金子 雅臣
職場のハラスメント研究所代表理事
内藤 忍
労働政策研究・研修機構研究員

コーディネーター

佐藤 博樹
東京大学大学院情報学環教授

論点1 パワハラの発生予防と解消の取り組みの必要性について

佐藤

パネルディスカッションでは、職場のパワハラをなくすための取り組みを行う上で、具体的に何をすればいいのかを考えていきたいと思います。そのために論点を3つ用意しました。1点目は「なぜ企業は、職場のパワーハラスメントの発生を予防したり、生じた場合にそれを解消するための取り組みを行ったりする必要があるのか」。2点目は「職場のパワハラを生じさせる主たる要因はどのようなものなのか」。3点目は「職場のパワハラの発生を予防したり、それを解消したりするための取り組みとして有効なものはどのようなものか」です。

写真 佐藤 博樹氏

佐藤教授

まず、1つ目の論点について、考えたいと思います。職場でパワハラ対策を推進する上で、管理職に対し、なぜそれを行う必要があるのかを説明する必要があると思います。

今回、来場者の方から事前に募集した質問のなかに、「厚生労働省の円卓会議の報告を踏まえ、今後、パワハラ防止に関する法律が制定される予定はあるのか」というものがありました。もちろん、法制化されないからといって、取り組まないのは困るのですが、実際のところ、どうなっているのでしょうか。

パワハラ防止は法律になじむか

本多

円卓会議の議論では、労使共同で、パワハラ撲滅に向けたコンセンサスを打ち出すことを最優先しました。短い期間で議論したため、法制化については十分に検討できなかったというのが正直なところです。問題の性質を考えると、パワハラの防止が法律になじむかどうかの議論はまだまだ先のことだと考えています。

企業の方には、パワハラ対策に取り組むことで得られる効果に着目していただきたいと思っています。ひとつは社内のコミュニケーションが活性化し、ひいては企業の業績、従業員の幸せにプラスの影響を与えること、もうひとつは、訴訟で管理責任を問われるなどのリスクを避けられることです。また、従業員のメンタルヘルスを維持する観点からもパワハラをなくすことは意義が大きいと思われます。企業の方には法規制のあるなしにかかわらず、こうした観点から、ぜひ取り組みを進めてもらいたいと思います。

佐藤

法律による規制がなくても、CSRや訴訟リスク回避の観点からも、パワハラ防止の取り組みは必要不可欠だということがわかりました。さらに、社員に意欲的に仕事に取り組んでもらうためにも重要ではないかと思います。その点に関して、武田さんと白石さんの職場では早い時期から取り組んでいますが、取り組みを始めたきっかけについて詳しく教えてください。

あってはならない働く人のメンタル不調

武田

1975年に「部落地名総鑑」事件が社会問題化した後、当社でも地名総鑑を購入していたことが明らかとなり、社会から糾弾されました。これを受けて、当時の社長が社内から差別的な行為を撤廃していく方針を打ち出したのがきっかけです。

当初、10年ぐらいは、同和問題などの人権問題への取り組みが中心でしたが、その後、障がい者や在日外国人などの問題にも取り組むようになりました。さらに一連の取り組みを進めるなかで、社員たちの人権に対する理解を見直してみようということになり、99年に改正男女雇用機会均等法が施行されたのを機に、セクハラ防止に向けた取り組みも開始しました。

パワハラという言葉が世間で認知されたのは、2002年からですが、その頃から当社でもパワハラに関する訴えが徐々に増えてきました。その後、2004年に「パワハラ」という言葉を提唱したクオレ・シー・キューブ代表の岡田康子先生に講演していただいてからは、急激に従業員の意識が高まりました。

社内では、パワハラを受けた従業員の3割近くがメンタルヘルス不調に陥ってしまう現状があります。先程、本多参事官から、「従業員一人ひとりが家に帰れば立派なお父さん、お母さん、あるいは、誇れる息子や娘である」という言葉が紹介されましたが、そういう人たちが会社で一生懸命働いているにもかかわらず、精神的に追いつめられたり、メンタルヘルスの不調に陥ったりするようなことは、あってはならないことだと思います。

白石

私たちは、社員が「この職場で働けてよかった」と思えるような会社にすることが重要だと考えています。私たちの職場は小売業なので、自分の会社に誇りを持てなければ、きちんとした接客もできません。

組合としても、一人の人材を預かることは、その家族も含めて、また取引先も含めて、何千人もの命を預かっているのと同じです。その中で楽しく仕事をしていかないと、企業も伸びていかないのではないかと考えており、早い時期から取り組みを始めました。

重要なトップの理解

佐藤

ハラスメントの予防対策に取り組む上で、トップの理解がひとつの鍵になると思います。トップの中には、「わが社ではそれほど問題はないんじゃないか」とか「セクハラと違って法律で規制されているわけでもないのに取り組む必要はあるのか」との認識を持っている人もいるのでしょう、これをどう説得していったらいいのでしょうか。

金子

まずは職場内で実態調査を行い、問題を顕在化します。某流通関係の企業では、ある年の退職者全員に往復葉書によるアンケート調査を行ったところ、パワハラが原因でやめた人がかなりの数いたことが明らかになり、社長が驚いたといいます。問題を顕在化することで、トップに意識を変えてもらうことが重要です。

佐藤

今日の報告によると、一見問題がなさそうな職場でも必ず何らかの問題があることがわかりました。まず、それを顕在化して、トップを説得するのも1つの方法なのかもしれません。内藤さんにお聞きしたいのですが、いろいろな企業をヒアリングしてみて、取り組みのきっかけとしてはどのようなものが多かったですか。

従業員からの相談が対策導入の契機に

内藤

対策の導入の経緯として一番多かったのは従業員、もしくは組合員から相談が多く寄せられるようになったことでした。それから、事業構造の変化に伴って、人事異動が増えるなど人間関係の問題が起こりやすい状況が発生すれば、パワハラを想定して対策に取り組み始めるケースもあります。

また、離職が続いたという契機もあります。とくにハラスメントの被害者になりやすい若手社員の離職が増えた場合です。これをきっかけに対策を導入したところ、離職が減ったという事例もありました。

対策を導入する経緯として、一番多かったのはやはり「メンタルヘルス対策の一環として」です。労働組合では、「良好な職場環境づくり」をあげるところが多かったです。「企業イメージを大事にするため」や「コンプライアンスのため」という理由が意外に少なかった。それから、これはちょっと残念なのですが、「人権問題の観点から」との答えも多くありませんでした。

論点2 パワハラを生じさせる主要因について

佐藤

企業としてはまず、パワハラが起きないよう予防することが大事です。ただ、予防しても問題は起きますから、その時にどう対応するのか。

先進企業の取り組み内容

予防については、内藤さんからの報告にもあったようにいろいろな観点が考えられます。まず、職場における上司と部下、あるいは先輩と後輩のコミュニケーションのギャップをどう解消するか。たとえば、上司が部下に対して、難易度の高い仕事をまかせる場合、それが部下の育成のためであっても、理由を説明しなかったとします。部下からすれば、過大な要求を突きつけられたと感じるかもしれません。そういう意味では管理職の説明責任を研修で徹底する必要があると思います。

しかし、実際問題として、管理職が部下とコミュニケーションをとるためには、ある程度の仕事のゆとりが必要です。したがって、管理職の仕事のやり方を変えることも大事なのではないでしょうか。

円卓会議では、何がパワハラに該当するか行為類型を示したのですが、あれを見ても理解できない管理職も多いと思います。おそらく、企業内で研修を行う場合は、具体的な事例を示していると思われます。パネリストの企業では、何がパワハラにあたるかを理解させるためにどのような研修を行っているのですか。

写真 武田 勝氏

武田氏

武田

当社では、「人権侵害をしない・させない・ゆるさない」ための企業体質づくりの一環として、「ヒューマンリレーション推進委員会」を各事業所に設置し、すべての管理職が委員になっています。推進委員には、自分が人権侵害をしないのはもちろん、周囲にもさせないためにはどうすればいいのかを考えることを目的として、実際に当社グループ内で起きた事例をもとにグループで討議をしています。

管理職は頭の中では、「ハラスメントは絶対にダメだ」ということを理解していても、いざ現場に立つと、「自分はメンバーから信頼されているから、この程度のことなら言っても大丈夫ではないか」と勘違いしてしまうことがあります。言われたほうにしてみれば、「あんたにそこまで言われたくない」と思ってしまうのですが、こうしたコミュニケーション上のギャップをなくすために、コミュニケーションに関する研修も取り入れています。

この研修では、先程ご報告したアメリカの臨床心理学者、アルバート・エリスが提唱した「人の悩みは出来事そのものではなく出来事の受け取り方によって生み出される」という「ABC理論」を学ぶと同時に、ロールプレイングも行います。その中で自分の受け取り方を変えることで、怒りもある程度収まるのだということを理解できるようにしています。

具体事例を出して気づきを促す

佐藤

今のお話を聞いて大事だなと思ったのは、上司が「ここまでは言ってもいいだろう」と思ったことでも、受け取る側の部下にしてみれば「そこまで言われたくない」と感じるかもしれないという点。一種のコミュニケーション・ギャップですが、そこを理解していない上司が多い。

白石さんのお話でも上司と部下で価値観が違うという話がありましたが、そのギャップを埋めるためにどのような取り組みをしていますか。

白石

私たちの職場では、挨拶を中心としたコミュニケーションを大切にしています。相談窓口にパワハラに関する通報があった場合は、私が直接その現場に出向き、勉強会を開きます。そこにパワハラを行ったとされる当事者にも入ってもらい、その事案について、「他の店でこんなことがあったので注意してください」と伝えます。それでも改善されなければ、当事者を呼び出し、「先日の勉強会で扱った事例は実はあなたのことなんですよ」と注意しています。

佐藤

具体的な事例を出すことで、管理職が「ここまでなら言っても許されるだろう」と思っていたことが実はそうではないことを理解してもらうわけですね。

金子

今、白石さんのお話にもあったとおり、やはり現場で実際に起きている事例を紹介することで気づきを与えるのは重要だと思います。

実は、ここまで言って許されるというラインは、業種によって全く違います。たとえば、ガテン系の職場であれば部下に対して「バカヤロー」と怒鳴っても許される場合がありますが、銀行でそれを言ったら、お客さんは引いてしまうでしょうから、サービス業としては不適切です。

業種ごとに異なる基準を普遍化するのは難しいと思いますので、やはり現場ごとに事例を研究して、従業員の納得性を高めた上で、気づきを与えるのが大事ではないでしょうか。

佐藤

武田さんのご報告に「パワハラを起こす管理職は多様な価値観を尊重しない」との言葉がありました。自分の価値観が部下と異なることをどう理解させるのか。たとえば、最近の若い男性は育児にも積極的に関わりますが、パワハラを起こすような管理職は「そんなものは奥さんにまかせればいいじゃないか」と自分の価値観で評価してしまう。これをどう変えていくかが課題です。多様な価値観を尊重したり、相手の話をしっかり聞いたりすることは、おそらくパワハラの問題だけでなく、ダイバーシティマネジメントやワーク・ライフ・バランスにもつながっていくのではないでしょうか。

就業形態の多様化に伴う問題も

内藤さんは、パートタイマーや派遣社員がいる労使にもインタビューしているとのことですが、同じ職場でさまざまな就業形態で働く人が増えるなかで、正社員同士とは異なる問題があると思われます。その点について、今後の課題や取り組みとしてわかったことがあれば教えてください。

内藤

就業形態が多様化している職場では、これがパワハラの問題が起きる要因の1つとなっているのは間違いないと思います。ある企業の事例ですが、就業時間後、飲み会がある場合、管理職や正社員は、事あるごとに一緒に働いていた派遣社員を誘っていたそうです。ところが、その派遣社員は、参加するのが嫌でたまらなかったものの、断れば次の契約更新時に切られるのではないかと、断ることができませんでした。派遣社員にしてみれば、飲み会への誘いはハラスメントだったわけですが、管理職や正社員の立場からすると、よかれと思ってやったことで、そこにギャップがあったということです。

写真 内藤 忍氏

内藤研究員

調査を通じて感じたことは、立場によって物事の捉え方が違うということです。先程、管理職と部下の間のギャップについてお話がありましたが、そこに就業形態の差が加わるとさらに問題が複雑化します。

以前、厚生労働省のワーキンググループに参加した際、取り組みを話してくれたJFEスチールの方が提供した資料の中に、職場におけるさまざまな事例について問題があるかないかを判断するチェックリストがありました。それを研修で管理職や従業員に回答させてみると、回答はさまざまだったそうです。おそらく、就業形態が異なる人の間で試しても結果が大きく違ってくるのではないでしょうか。同社の方は、チェックリストについて、それぞれがつけた判定結果について意見交換をし、受け止め方が異なることを理解することが大事なのではないかと話していました。

相当大きい就業形態による意識の差

佐藤

先程の例でいうと、正社員の側は「同じ職場で働いているのだから」と声をかけたが、派遣スタッフからすれば誘われるのが苦痛で仕方がなかった。では、声をかけなければよかったかといえば、中には誘ってほしい人もいるかもしれないので、そこが難しいところです。派遣スタッフが意思表示できればいいのですが、そのためには、立場や就業形態を超えて、コミュニケーションがとれるような状態にしておくことが重要ではないでしょうか。白石さんの職場ではいかがですか。

白石

私の職場には派遣社員はおりませんが、パートの方が多数働いています。懇親会などは、強制せず、「時間があったら来てください」という感じで伝えています。

佐藤

金子さんの所に寄せられる相談も、パートや派遣社員からのものが増えていますか。

金子

最近はこちらが予想もしていなかったような相談が増えています。派遣社員からの相談事例ですが、契約更新間近の面談で、課長から「最近、体調はどうですか」と聞かれて、「『体調が悪い』と答えたら契約を切られるのではないか」と心配になったというものがありました。聞いた側からすれば、単に「元気でやっているか」くらいの気持ちだった。つまり、それぐらい意識に差があるということです。

また、部下を育成する上で、教える側には「多少厳しいことを言ってもいいのだ」という意識があるのですが、受けとめる側とのギャップを常に理解させていく必要があります。

佐藤

若手職員にチャレンジングな仕事を与えることは育成の上で重要ですが、昔であればそんなことを部下に説明しなくてもわかってもらえた。しかし、今ではちゃんと説明する必要が生じているのかもしれません。同時に管理職は、派遣社員にもパートにもわかりやすく説明しなければならないにもかかわらず、それができていないのは仕事上でゆとりがなくなっていることの表れなのでしょうか。

グループ・関連企業へのパワハラも

武田

当社ではグループ会社も研修の対象にしており、原則、契約社員や派遣社員も含めて働いている人全員に受講していただくことになっています。6~8人でグループ討議を行うメリットは参加者がそれぞれ言いたいことを言えることです。ですから、就業形態が違う人たちの意見を聞いて、気づきを得る機会もあります。

佐藤

円卓会議では、取引先や関係会社との関係も議論しました。グループ企業の社員も含めて、パワハラ防止研修を行っている会社の社員の中には、グループ会社や取引先に対して行っていた行為がパワハラに該当することに気づいた事例もあると聞きました。武田さんの会社では、グループ企業も研修の対象にしているわけですが、そのあたりはいかがですか。

武田

確かに、グループ企業の中でもパワハラの通報件数は増えているように思えます。

佐藤

内藤さんがインタビューを行った企業の中にはグループ企業などを対象に研修を行っている事例はありましたか。

内藤

今回の調査対象は大企業が中心でしたが、多くの企業でグループ企業にまで研修の対象を広げていました。また、グループ企業と一緒に研修を行わない場合でも、親会社で行った研修資料や情報を共有させたりするなどの事例がありました。中小企業でも、労働組合が組織されていれば、産業別労働組合の支援を受けられる可能性がありますが、組合がない場合は、親会社からの支援が非常に重要になってくると思います。

若手の自尊心を高める必要も

佐藤

武田さんの報告には、管理職だけではなく、若手社員に対する啓発も重要だと書かれています。何か問題があったとき、言うべきことを言えることが大事だと思います。たとえば、過度に仕事を与えられたと感じたときは、「なぜこの仕事をやらなければならないのか」と上司に聞けるようになれば、パワハラはかなり減るかもしれません。

武田

若手社員が上司の言動を肯定的に受けとめるためには、セルフエスティーム(自尊心)を高める必要があります。当社では、自己を見つめ直すと同時に自分の良さを発見するための研修を2泊3日で実施しています。そのプログラムの1つとして、互いをどんどん褒める「ポジティブシャワー」というものを取り入れています。相手から褒められることで、「自分は認められているんだ」という気持ちになれば、上司や先輩から言われたことも前向きに受け取れるようになると思います。

佐藤

金子さんはコミュニケーションの観点から、受け取る側の立場についてどうお考えですか。

金子

ある大手企業で研修を行ったとき、入社3年目くらいの若手社員にグループをつくってもらい、「入社後、上司から言われて一番嫌だったこと」をそれぞれ書いてもらいました。十数個のグループのうち、3つくらいのグループから出てきたのが、「わかったか?」というものです。

写真 金子 雅臣

金子氏

なぜそれが嫌なのかというと、上司から「わかったか?」と聞かれても、部下の立場では「わかりません」と答えられないからだというのです。「わからないことはないか?」と聞いてもらえれば質問できますが、「わかったか」に対して「わかりません」では上司に対する異議申し立てのようにとられてしまうのではないかと心配しているのです。

また、別の会社で行った同じ内容の研修では、「使えない」が一番嫌な言葉の1つとしてあがりました。それを役員に伝えたところ、お腹を抱えて笑っていましたが、同時に驚いてもいました。ですから、上司と部下の間の意識の差を気付かせるための研修を地道にやっていくしかないですね。

人事評価の課題も視野に入れる

佐藤

本当は、研修をやらなくても、部下が思っていることを想像できるといいのですが。

金子

それは難しいかもしれません。管理職自身、上司や先輩から教えられてきたDNAがあり、いつのまにかそれに馴染んでいるわけですから。

佐藤

先程、本多さんから、管理職に怒鳴られても、周囲がサポートしてくれたというお話がありましたが、近年、そうした人たちが少なくなっているように思います。本多さんは現在、職場で管理する立場ですが、どう思われますか。

写真 本多 則惠

本多氏

本多

官庁も企業と同じで組織のスリム化が進んでいます。昔であれば、シニアで若干仕事に余裕のある方が、職場全体に目を行き届かせていて、落ち込んでいる若手がいれば励ましてあげるとか、アドバイスするのはよく見られる光景でした。若手にしたら、上司や先輩に不満を感じても、入ったばかりで職場でどう振る舞ったらいいのかつかみにくい。そんなときに声をかけてくれる人がいるのは重要ですよね。最近、そんなご意見番というか世話好きな人が減ってきているのは事実だと思います。

佐藤

管理職がプレイングマネージャー化し、部下のマネジメントに時間を割く余裕がなくなる中で、職場の仕組みを変えなければならない部分があると思うのですが、何か意見はありますか。

金子

近年成果主義の導入が進んでいます。本来、成果主義は業務の範囲を明確にし、その達成度を評価するものですが、個々人の仕事をみると依然、その境目が曖昧で職務主義に徹し切れていない部分も残っています。評価する側はその曖昧な部分も含めて評価しますが、評価される側は自分の仕事に徹しようとして、そのズレがパワハラというかたちで出てくることも少なくありません。たとえば、ある専門分野で高い業績をあげても、周りに気配りができなければ評価が低くなることもあります。評価された側からすれば「こんなに低く評価しやがって」となります。こうした点も視野に入れて、議論をする必要があるのではないでしょうか。

論点3 パワハラの発生予防と解消に有効な取り組みについて

佐藤

3つ目の論点の「職場のパワーハラスメントの発生を予防したり、それを解消したりするための取り組みとして有効なものはどのようなものか」に入りたいと思います。

内部通報窓口の活用を

何か問題が生じたとき、社員が一人でそれを抱え込むことなく、表に出せるような仕組みをつくることが重要だと思います。そのために従業員アンケートを行ったり、相談窓口をつくったりなどが考えられますが、これらを効果的に実施するための方法があれば教えてください。

今日の報告を聞いた限りでは、パワハラ専用の相談窓口を設けるのではなく、それ以外の問題、たとえば、セクハラやそれ以外の悩みも相談できる窓口にしているところが多いように思えます。

写真 本多 則惠

内藤

パワハラ専用の窓口を設けているところもありますが、多くの企業では内部通報窓口を利用しています。本来は公益通報者保護法で設置を期待する窓口ですので、違法な行為だけが対象になるのですが、従業員には「苦情があればまずはここに寄せてください」と伝えています。出てきた訴えは適切な担当者に振り分けます。調査では、この方法がうまく機能している職場がみられました。私が以前行ったヒアリング調査でも、内部通報窓口に寄せられた内容のほとんどが労働者の苦情や不満だったという結果がでており(注)、この窓口を職場のいじめ解決に役立てていくことが可能ではないかと考えています。

解決能力を高めて複数のチャンネルを

佐藤

ある企業では、社員の苦情、不満を取り上げるためのヘルプラインを設置して、そこに、たとえば「食堂のメニューがまずい」といった内容でもいいから出してくださいと伝えているそうです。出てきた相談の中には、訴えた本人がパワハラと気付いていない事例もあったとのことです。もし、パワハラやセクハラに関する相談に限定すれば、なかなか相談が出てこなくなるかもしれませんね。

金子

解決のためのチャンネルを複数持つことは被害者側にとっても相談しやすくなるかもしれません。また、相談したら、きちんと会社側が対応することも窓口に対する信頼感を築く上で大切です。「出口」があってこその「入口」ですから、解決能力を高めた上で、相談チャンネルも複数持つことが必要だと思います。

佐藤

匿名で相談があった場合、対応状況をどのように本人に説明するのですか。

金子

訴えの信頼性が担保できないため、相談者には名乗ってもらいます。

内藤

ヒアリングの結果でも、いくつかの企業や労働組合で相談内容について、きちんと対応していることを知ってもらうことが大切だと考えている事例がありました。実際にあった相談への対応事例について、プライバシーに配慮するため、詳細を変えながらも、定期的に社内報などに載せる取り組みを行うことで、窓口の信頼性を高めているようです。こうした取り組みを続けた結果、従業員に対するCSRアンケートの結果も徐々に改善したとの報告もありました。

プライバシーにも配慮した解決を

佐藤

武田さんや白石さんにお聞きしたいのですが、窓口に訴えがあった場合、訴えた側、訴えられた側のどちらに非があるかわからない中で、当事者のプライバシーに配慮しつつ、解決に向けてどのように取り組んでいるのでしょうか。

武田

当社の場合、内部通報窓口として、「積水ハウスのコンプライアンスサポートシステム(SCS)」「人事110番」「セクハラホットライン」の3つがあります。社員には自分の好きな窓口に連絡するよう伝えていますが、SCSと人事110番は記名式になっており、所属、名前、社員番号を届けることになっているため、相談件数は多くありません。年間で10件程度です。セクハラホットラインは、セクハラだけではなく、パワハラや人権問題全般に対応しており、匿名でも受けつけています。事案となったのは、昨年度は80件程度でしたが、実際にかかってきた相談件数はその3倍くらいはあると思います。

匿名の訴えに対して、「あなたの相談はパワハラではないんですよ」と説明する機会のほうが圧倒的に多い。若い社員が上司の指導をパワハラと勘違いしてしまうケースもあり、その場合は「上司の言っていることが正しいのであって、あなた自身がきちんとしないとダメでしょう」と説明するケースも多くみられます。

当社で毎年発行しているヒューマンリレーション研修用のテキストの中に、セクハラホットラインのフリーダイヤルとアドレスを掲載し、従業員全員に配布しています。実際に相談があった時、これは事案として取り上げないといけないと判断した場合は、訴えた社員と面談し、事実関係を確認した上で、本人の了解のもとに、訴えの対象者に事実確認を行います。ハラスメントの事実が確認できれば、懲戒諮問委員会に上げ、場合によっては懲戒処分を下す流れになっています。

写真 白石 裕治

白石氏

白石

うちの場合は、匿名の相談が多いのですが、その場合でも店舗がある大体の地区を聞いて、その地区に「こんな事案があったので店長も含めて気をつけてください」と啓発活動を行っています。訴えた従業員には、「1週間以内に何らかの対応が行われると思いますが、もし何もないようであればまた連絡をください」と伝えています。

被害者本人から直接訴えがあった場合でも、会社と組合の担当者が立ち会いの上で、被害者と加害者双方を呼び、事情を確認するのですが、第3者から聞いた話だということにして、本人から訴えがあったことは隠すようにしています。

従業員同士が労をねぎらう職場に

佐藤

どうもありがとうございます。議論は尽きませんが時間がなくなってきました。最後にこれだけは言っておきたい点があればどうぞ。

本多

提言やワーキンググループの報告をまとめる過程でいろいろな方から行ったヒアリングの結果や各委員の発言など参考になる点が多々あると思いますので、ぜひホームページでご覧ください。

白石

本日のフォーラムに参加して感じたことは、管理職が部下に対し「なぜこの仕事をしなければならないのか」をきちんと伝えていないためにトラブルが生じる場合が少なくないことです。私は従業員に対して、「わからなければ、まずそれを聞きなさい。さもなければ、仕事をしている意味もないし、スキルも上達しませんよ」と伝えています。仕事上の目標や目的を理解した上で、従業員同士が互いの労をねぎらうことで働きやすい職場にしていきたいと考えています。

金子

昔であればこうしたトラブルが起きると、すぐに人事に報告があったり、労働組合の書記長が苦情を言ってきたりしました。場合によっては上司が間に入って解決してくれたことも多かったと思います。しかし、現在はそうしたチャンネルが段々減ってきました。俗にいう「飲みにケーション」の機会は減少し、昼間怒鳴りつけてきた上司が、仕事の後、酒の席で「さっきはちょっと言い過ぎた」とフォローしてくれることも少なくなっています。そんな中、ハードルを低くして、誰でも相談できる仕組みをつくり、問題が小さいうちに防ぐことを皆様にも考えていただきたいと思います。

内藤

企業へのヒアリングでわかったことは、パワハラだと訴えてくる相談にはさまざまなケースがあるということです。もちろん悪質なものも含まれるのですが、そうではない、非常に些細な人間関係のトラブルやコミュニケーションの問題に関するものも多い。真正なパワハラでないものについても、本人が困っている以上は、職場における労働紛争や不満、苦情の種になります。パワハラでないからといって放置するのではなく、職場の問題を解決するという大きな目的に立って取り組むことも必要ではないかと感じました。

自社の現状把握を踏まえた対策を

佐藤

ありがとうございました。職場からハラスメントをなくすことは単にコンプライアンス上の問題だけではなく、社員一人ひとりが活き活きと働ける職場をつくる上でも必要不可欠な取り組みになってきていると思います。他方、金子さんが言われたように、今の職場はハラスメントが起きやすくなっていると同時に、インフォーマルな解決の手立てもなくなってきています。ですから、会社として問題をきちんと把握し、何かあればそれを解決する仕組みをつくっていくことが非常に重要になると思います。

仕組みができていない企業は、まず、自社の現状を把握し、それを踏まえて、管理職研修を行ったり、コミュニケーション・ギャップを埋めたりするなどの取り組みをして、同じ問題が二度と起きないようにする。社員一人ひとりが活き活きと働ける職場づくりに取り組んでいただければと思います。

(注) 内藤 忍 「内部通報制度を利用した労働者の苦情処理−労働紛争予防の観点から」JILPTディスカッション・ペーパーNo.09−06(2009年)。

Q&A

フォーラムでは来場者から多くの質問が寄せられた。以下は主な質疑の概要。

安全衛生法の役割と行政の相談窓口

Q.パワハラを防止するためには、労働安全衛生法の役割がもっと強調されてもいいのではないでしょうか。

A.ご指摘のとおり、メンタルヘルスの観点からも、安全衛生法の役割は重要だと思います。今後はメンタルヘルス対策を充実・強化するための法改正を予定していますので、これと連携してパワハラ対策を進めていきたいと思います(本多)。

A.一定の基準に該当する事業場では、労働安全衛生法に基づき、労使が参加する安全委員会を設置しなければならないことになっています。この安全衛生委員会をパワハラ対策でもっと活用してもいいのではないかと思います。また、委員会には産業医など外部の専門家が同席していると思いますので、メンタルヘルスに関わるハラスメントの問題にも対処できます(内藤)。

Q.行政機関にパワハラに関する相談をする場合、どこに連絡したらよいのでしょうか。

A.パワハラを含めた労働相談全般については、都道府県労働局と労働基準監督署に設置した総合労働相談コーナーで受け付けています。受けた相談に対しては助言や指導、あっせんによる対応を行っています(本多)。

パワハラのコスト面でのリスク

Q.上場企業で財務担当役員をしている者です。パワハラを放置することによるコストについて、社内の財務担当役員や、社外取締役、海外の投資家などから指摘を受けることはありますか。また、その場合にはどのように対応していますか。

A.ヒアリング調査対象の企業からは、具体的にそのような報告はありませんでした。ただ、パワハラ対策を行うことは、企業イメージの向上や企業リスクの回避にも効果的で、コンプライアンスの観点からも重要であり、そのような指摘をされる可能性はあると思います。(内藤)。

訴えられた側の「犯人探し」への対処

Q.金子さんの報告では、パワハラ事案の内容に応じて、当事者のプライバシーに配慮した解決方法が必要とのことでしたが、解決に向けて動き出す過程で、訴えられた者による「犯人探し」が始まるケースがみられます。このような事態に対して、どのように対処すべきでしょうか。

A.相談内容によっては、プライバシー保護の観点から、職場内の窓口で相談を受け付けにくいことがあります。この場合、外部の相談機関を利用するのも1つの手です。こうした機関ではプライバシーの取り扱いについて細心の注意を払いますから、相談者の名前が明らかになる危険性は低くなります。

内部の相談機関で対応する時は、先程ご紹介した「通知」制度を活用していただくのがいいと思います。この手法であれば、実名で申し立てても匿名性は保持されます。

なお、通知があったにもかかわらず、自分の言動を改めない上司に対しては、その上長が立ち会いの上で注意を与えるなどの方法を用いますが、いずれにせよ、訴えた側の匿名性は担保されなければなりません。万が一、加害者が訴えた者の名前を知った場合に備えて、就業規則などで、報復は一切禁止であり、これに違反すれば処分する旨を規定しておく必要があります。また、相談員の守秘義務も厳しく運用することが大切です(金子)。

「冤罪」が生じる可能性への懸念

Q.パワハラを行っていないにもかかわらず、従業員から訴えられることで、「冤罪」が生じる可能性を懸念しています。何か対応策はありますか。

A.その点については、ワーキンググループ報告の中でも意識的に触れています。相談や解決の場を設置するにあたっては、相談した人が不利益な取り扱いを受けることがないよう配慮することはもちろんですが、加害者とされた人の人格やプライバシーの問題にも配慮して、慎重に対応すべきことを盛り込んでいます(本多)。

A.たとえ匿名であっても、相談者が法務部に訴えるには勇気が必要とされます。なかには訴える時点で会社を辞める覚悟をしている社員もいます。そのくらいの覚悟をするからには、虚偽の訴えをするものは当社にはまずいないと思っています。

当社では従業員から訴えがあった場合、ヒューマンリレーション室のメンバーから最低2人が立ち会った上で、加害者と面談し、事実関係を確認します。これまでの経験では、加害者が訴えの内容を全否定したケースは一度もありませんでした(武田)。

A.先程、ご紹介したように「通知」の始まり、「調整」、「調停」という流れをとれば、その過程で加害者の言い分を十分に聞く機会があるため、冤罪は発生しにくいと思います(金子)。

事例報告に対する質問

Q.白石さんの報告では、ハラスメント対策の一環としてメルスという外部機関と契約しているとのことでしたが、外部機関を利用するメリット、デメリットについて教えてください。

A.職員からは内部の相談窓口よりもメルスのほうが利用しやすいという声が聞かれます。なお、うつ病など相談者が職場の同僚に知られたくない案件についてメルスから報告があった時は、本人の了解があった場合に限り、相談者の情報を教えてもらいます。その上で、組合役員か人事課長が同伴の上、メルスで病院を紹介してもらい、必要に応じて、休職させるなどの対応を行っています(白石)。

A.私たちが行った調査によると、EAPを利用している企業は少なくないのですが、利用者の数は年間1、2件程度に止まっている、あるいはほとんど利用がないケースがよく見られます。

これらの企業では、EAPで受けた相談内容をきちんと職場にフィードバックしていないことが多い。

白石さんの職場のように相談内容を会社にフィードバックしてもらい、その内容を分析して職場環境の改善に活かすことが外部機関を利用する上でポイントとなるでしょう(金子)。

Q.全タイヨー労働組合では、ハラスメント対策の一環として、使用者側と共同で相談窓口の電話番号を記載したポスターを作成したとのことでしたが、その後の従業員の反応を教えてください。

A.従業員の反響は大きく、これまで月に1、2件だった相談件数が週に1、2件に増えました(白石)。

Q.積水ハウスでは、労働組合がパワハラ対策にどのように関与していますか。

A.当社には労働組合がありません。したがって、労働分野のコンプライアンスも含め、労務に関する問題は人事部ですべて対応しております。安全衛生委員会は、各事業所で毎月開催しています(武田)。

プロフィール

報告者 ※報告順

本多則惠(ほんだ・のりえ)

厚生労働省大臣官房参事官(賃金時間担当)

1987年労働省(現、厚生労働省)入省。長崎県職業安定課長、労働政策研究・研修機構情報管理課長、厚生労働省情報公開文書室長、内閣府高齢社会対策・仕事と生活の調和担当参事官等を経て、2010年8月より現職。

内藤 忍(ないとう・しの)

労働政策研究・研修機構(JILPT)研究員

2006年早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得。労働法専攻。同年より現職。主な著作に『職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメント対策に関する労使ヒアリング調査―予防・解決に向けた労使の取組み―』(共著、JILPT資料シリーズNo.100、2012年)、『個別労働関係紛争処理事案の内容分析―雇用終了、いじめ・嫌がらせ、労働条件引下げ及び三社間労務提供関係―』(共著、JILPT労働政策研究報告書No.123、2010年)、『内部通報制度を利用した労働者の苦情処理―労働紛争予防の観点から』(JILPT Discussion Paper09-06、2009年)などがある。厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ」(2011年7月~2012年1月)委員。

武田 勝(たけだ・まさる)

積水ハウス株式会社法務部 ヒューマンリレーション室部長

1976年4月積水ハウス株式会社に入社。関西地区事業所で住宅請負営業、店長、営業所長として活動。関西営業部で全社の営業社員研修の専任インストラクターを担当。人事部で採用業務・研修業務等を担当。総合住宅研究所の納得工房で顧客開拓・営業社員研修を担当。再度人事部へ異動し、採用業務・研修業務等を担当し人権推進室長を兼任。法務部へ異動後、ヒューマンリレーション室長としてヒューマンリレーション研修の企画・実施、人権啓発、人権相談及び社外団体での活動を担当し、2012年2月より現職。大阪府人権擁護士・人権総合相談員。

白石裕治(しらいし・ゆうじ)

全タイヨー労働組合中央執行委員長

1989年株式会社タイヨーに入社。本社財務部電算課に配属。中央執行委員、副書記長、副委員長を経て、2008年中央執行委員長(専従)に就任し現在に至る。UIゼンセン同盟鹿児島県支部運営評議会議長も務める。

金子雅臣(かねこ・まさおみ)

職場のハラスメント研究所代表理事

一般社団法人「職場のハラスメント研究所」の所長として、企業向けの講演活動や行政機関や大学の人権委員を務めるなど、パワハラ、セクハラ問題などに精力的に取り組んでいる。主な著書としては、『ホームレスになった―大都会を漂う―』(ちくま文庫)、『壊れる男たち』(岩波新書)、『職場いじめ』(平凡新書)、『部下を壊す上司たち』(PHP出版)、『職場のモンスター』(マイコミ新書)、『パワーハラスメント』(岩波ブックレット)、『職場でできるパワハラ解決法』(日本評論社)など多数。

コーディネーター

佐藤博樹(さとう・ひろき)

東京大学大学院情報学環教授

1953年東京生まれ。1981年一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位修得退学。1981年雇用職業総合研究所(現、労働政策研究・研修機構)研究員。1991年法政大学経営学部教授。1996年東京大学社会科学研究所教授。2011年4月より現職。著書として、『人事管理入門(第2版)』(共著、日本経済新聞出版社)、『パート・契約・派遣・請負の人材活用(第2版)』(編著、日経文庫)、『男性の育児休業:社員のニーズ、会社のメリット』(共著、中公新書)、『ワーク・ライフ・バランスと働き方改革』(共編著、勁草書房)などがある。兼職として、厚生労働省・労働政策審議会分科会委員、内閣府・ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議委員、東京労働局・東京地方労働審議会会長などを務めている。