2021年10月の新着図書紹介
「新着図書紹介」は本号で終了です。ご愛顧ありがとうございました。

1.仁田 道夫・中村 圭介・野川 忍編『労働組合の基礎』日本評論社

(2021年6月刊,vii+358p,A5判)

本書は、産業別労働組合であるUAゼンセンの機関誌「コンパス」に2020年冬号から1年にわたって連載された「労働組合の基礎シリーズ」を元に、組織拡大や賃金交渉、政策・制度活動などについてまとめ、読者が改めて労働組合に対する認識を深められるようにとの狙いで刊行された。現代社会では、組織の役割が大きく、個人は、さまざまな組織に加わることで経済活動や社会活動に参加することが少なくないが、労働組合の歴史をひも解くと産業革命後の英国では、19世紀の前半期には、すでに労組の組織活動が広がり始めていたという。

一方、日本でも、1897年には労組の結成を支援する団体である労働組合期成会が作られて、同年中に最初の労組である鉄工組合が組織化された。日本の労組は、120年以上の歴史を有していることになる。いわゆる企業別組合が基本となっている。管理監督の地位にある者をメンバーにしている労組は法の保護を受けられないとの制約はあるものの、組織形態は自由に選べ、一企業の従業員が複数の労組に所属することも可能だ。本書は、最近では、従来の企業単位の労組とは違って地域や個人をベースとした労働運動を展開するコミュニティ・ユニオンなどの合同労組が活動を広げていることを紹介する。

現在、労働組合法の対象外と思われていたコンビニ・フランチャイジー(加盟店)の店主たちが集まって労組を結成し、大手フランチャイザー(本部)に団体交渉を求める動きがあらわれ、社会的注目を集めている。この背景には、いわゆる雇用類似の自営業的働き方が増えるなかで、雇用でなく委任や請負で働く人々の利益擁護や発言の仕組みをどのように確立していくかという社会的課題が存在していると分析する。

本流の労働組合組織では、賃上げや労働時間短縮などの要求実現を引き続き活動の中心として展開しているが、本書では経営対策活動についても紹介。変動する経済に対して企業が実施するさまざまな経営活動に関し、労組が情報提供を求め、チェック提案を行う活動だ。いわゆるリストラによる雇用削減が増えており、従業員の利益を守るために労組の役割が欠かせない。労組がない企業では再編成に際して従業員の利益を十分に守れないのが現状だ。大きなリストラを受け、労組が組織される例もある。重要なのは日ごろからの経営対策活動と情報の蓄積であり、急場しのぎでは万全な対策を取れず、働く人の未来をつくれないと解説する。

請求番号:366.6/rod
書誌番号:JB00114680
ISBN:9784535525627

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2021年6月~8月の労働図書館受け入れ図書

  1. 柴田 和史著『会社法詳解 第3版 』商事法務(xxx+543頁,A5判)
  2. 加藤 守和著『生産性向上に効くジョブ型人事制度』日本生産性本部生産性労働情報センター(175頁,A5判)
  3. 熊谷 徹著『ドイツ人はなぜ、毎日出社しなくても世界一成果を出せるのか』SBクリエイティブ(180頁,新書判)
  4. ジェフリー・ジェームズ著『クソみたいな仕事から抜け出す49の秘訣』双葉社(359頁,A5判)
  5. 宮本 太郎著『貧困・介護・育児の政治』朝日新聞出版(332頁,四六判)
  6. 澤田 晃宏著『東京を捨てる:コロナ移住のリアル』中央公論新社(253頁,新書判)
  7. 大森 義明ほか著『労働経済学をつかむ』有斐閣(ix+283頁,A5判)
  8. 東京弁護士会法友全期会編著『パワーハラスメント実務大全』日本法令(499頁,A5判)
  9. 荻野 登著『平成期の労働運動:主要労働団体の動向を中心に』日本生産性本部生産性労働情報センター(250頁,A5判)
  10. 古川 飛祐著『やさしくわかる外国人雇用の労務管理』税務経理協会(2+7+156頁,A5判)