2021年7月の新着図書紹介

1. 木下 武男著『労働組合とは何か』岩波書店

(2021年3月刊,xi+288p,新書判)

「仕事がつらい」「転職しても状況は変わらない」「先が見えない」――著者はこんなときこそ労働組合が頼りになるのではないかと指摘する。労組は従来、貧しく虐げられた人たちが身を守り、生きるために闘う武器だったはずだと強調しつつも、実際には何をしているのかわかりづらいという。一番存在感を示すのは、春闘で大企業の賃上げが報道されるときだとしたうえで、日本の労組の力が欧米諸国に比べて弱いのは「世界標準の産業別組合(ユニオニズム)」の伝統が根をおろしていなかったことが影響していると分析。ユニオニズムの種は戦前の日本にも持ち込まれていたが、戦後になり育つうちに、世界であまり見たことのない土着の花(企業別組合)を咲かせてしまったと解説する。

著者は、日本でユニオニズムを創造するには、戦後続いた企業頼みの生活、企業中心の労働、家族を犠牲にした暮らしから解放され、自分の人生や仲間を大切にする生き方に転換するべきだと主張。そのために、① 労組のルーツを歴史から探る ② ユニオニズム理論を学ぶ ③ 労組の未来を構想する――などを再考するよう提案する。

請求番号:366.6/rod
書誌番号:JB00114512
ISBN:9784004318729

2. 野田 実希著『「働くわたし」を失うとき』京都大学学術出版会

(2021年3月刊,vii+233p,A5判)

現在、過労によるうつ病をはじめとした労働者のメンタルヘルスが社会問題化している。「うつは怠け」「病気になるまで働かなくてもいいのに」「心身の健康を管理するのも仕事のうち」などの言葉が病人本人に直接投げかけられることも少なくない。しかし、心を病むまで働かざるをえない本人の背景に目を向けるとき、職場環境や当人の心理的な問題を超えて、「働くわたし」を含めた個人のありようが問われるようになるという。本書は、就業形態が多様化し、職業生活が過酷さを増すなか、本来の「わたし」を生きるという感覚を大切にすることが、経営側、働く本人の双方から忘れ去られてしまってはいないか、という疑問を出発点としている。

さらに本書は臨床心理学の観点によりメンタルヘルス不調に伴う病気休業(病休)の体験を、労働者の語りから読み解いていく。病休で「働くわたし」を失うとき、人は何を、どのように語るのか。その語りに耳を傾けながら、当事者から丁寧な聞き取りを実施。「働かないわたし」をいかに受け入れるかが重要なテーマになるとの視点も盛り込んでいる。

請求番号:366.94/hat
書誌番号:JB00114509
ISBN:9784814003303

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2021年4月~5月の労働図書館受け入れ図書

  1. 松浦 弥太郎著『仕事のためのセンス入門』筑摩書房(159頁,四六判)
  2. 本間 圭一著『イギリス労働党慨史』高文研(351頁,四六判)
  3. 尾形 真実哉著『中途採用人材を活かすマネジメント』生産性出版(212頁,A5判)
  4. 加藤 博著『パラダイムチェンジの時代に適応するための2つの改革』日本生産性本部生産性労働情報センター(135頁,A5判)
  5. 岩出 誠編著『判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策』清文社(16+391頁,A5判)
  6. 石角 友愛著『“経験ゼロ”から始めるAI時代の新キャリアデザイン』KADOKAWA(246頁,四六判)
  7. 佐藤 忍著『日本の外国人労働者受け入れ政策』ナカニシヤ出版(x+333頁,A5判)
  8. 中野 淑子著『あなたの大切なひとを守るために』旬報社(189頁,四六判)
  9. ヴィラ―グ・ヴィクトル著『介護・福祉の現場でともに学び、働くための外国人スタッフの理解』中央法規出版(217頁,A5判)
  10. 神山 典士著『社員の幸せを創る経営』幻冬舎メディアコンサルティング(209頁,四六判)