2021年6月の新着図書紹介

1.濱口 桂一郎著『団結と参加』労働政策研究・研修機構

(2021年3月刊,xi+320p,A5判)

労働・雇用問題の第一人者である著者が、古今東西の労使関係法政策の概要とその歴史を紹介する。現在、集団的労使関係システムをめぐる主たる争点は、労働者の組織化による「団結」型モデルと、経営管理に「参加」するモデルにあるとし、これらが対立する面もあるものの、大陸欧州諸国では両者を組み合わせて法政策が進められていると解説。団結と参加を明確に区別する「ドイツ式」、企業レベルにも労働組合活動権が確立された「フランス式」、労組が全国・産業レベルで団結型集団として集団的取引を行う一方、企業レベルでは参加型集団として意思決定する「スウェーデン式」の3タイプがあると紹介する。

一方、日本では現在、個別労働関係に係る研究が圧倒的だと説く。「団結」も「参加」も担う大企業正社員分野と、「団結」も「参加」も存在しない非正規・中小零細企業分野が二重構造をなしている、と指摘。いまなお集団的労使関係法制の存在が大きい世界各国との相違をクローズアップし、新しい視点を示唆している。

請求番号:366.14/dan
書誌番号:JB00114541
ISBN:9784538411651

2.朝日新聞特別取材班著『老後レス社会』祥伝社

(2021年2月刊,261p,新書判)

今後日本は社会保障費が膨らむ半面、労働力不足が深刻化。一方で「一億総活躍」が掲げられ、高齢者の就労が促進されている。70歳を過ぎてもハローワークに並ぶ人もおり、「悠々自適の老後」は消失。本書は、経済的格差は広がり、コロナ禍による景気低迷も生活に追い打ちをかけ、生涯働き続けなければ生きていけない「老後レス社会」が眼前に迫っていると警告。このまま高齢者が増加し、現役世代が一段と減り続ければ、日本人の人生の終盤は大きく変わってしまうとの公算に触れ、「老後への不安」は、すでに多くの人々が同様に感じている日本社会の通奏低音になっていると指摘する。

医療技術の進歩は目覚ましく、とりわけ世界有数の長寿国である日本では、今後も平均寿命が延びると予想される。人生100年時代の到来を「長寿の夢の実現」と見るのか、それとも「長生きリスクの増大」と考えるのか。それは、これからのわれわれの選択と行動にかかっているとし、そのどちらも、あり得る未来だと説く。

請求番号:366.28/rog
書誌番号:JB00114431
ISBN:9784396116224

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2021年3月~4月の労働図書館受け入れ図書

  1. 近藤 浩一著『スウェーデン福祉大国の深層』水曜社(233+xiv頁,四六判)
  2. 羽場 久美子著『移民・難民・マイノリティ』彩流社(414頁,四六判)
  3. 渡辺 幸啓著『伸びるためのヒント42』本の泉社(213頁,四六判)
  4. 中島 美鈴ほか著『働く人のための時間管理ワークブック』星和書店(5+115頁,B5判)
  5. 伊賀 泰代著『採用基準』ダイヤモンド社(243頁,四六判)
  6. 長田 英知著『ポスト・コロナ時代どこに住み、どう働くか』ディスカヴァー・トゥエンティワン(276頁,四六判)
  7. 中村 圭介著『地域から変える』旬報社(195頁,四六判)
  8. 津止 正敏著『男が介護する』中央公論新社(vii+227頁,新書判)
  9. 原野 守弘著『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』クロスメディア・パブリッシング(190頁,新書判)
  10. 佐伯 夕利子著『教えないスキル』小学館(190頁,新書判)