2020年12月の新着図書紹介

1.小室 淑恵ほか著『男性の育休』PHP研究所

(2020年9月刊,194p,新書判)

2019年の日本人の国内出生数は86万人で、第二次ベビーブーム時の6割減に相当する――。そんな止まらない少子化を改善する突破口として著者が取り組むのが男性育休の普及・促進。男性の育休取得促進がなぜ少子化対策に寄与するのか。本書はその理由として、男性の家事・育児時間が長いほど、第二子の出生率が上昇するためだという。また産後の女性を苦しめる「産後うつ」への対策としても、男性育休が期待されている。産後うつは産後2週間をピークに発症することが多いため、その間に男性が育休を取得することは非常に重要だ。著者は企業側のメリットも指摘。育休で生産性向上やイノベーション創出につながると考えられている。優秀な若手人材の採用や定着につながるという見方も少なくない。だが、現在の男性育休取得率は約7%にとどまっている。

筆者が目指すのは「男性育休の義務化」。こうした動きは政府・与党が取り組むこととなり、①母親にしか認められていない産休制度を父親にも創設する②休業中の給付金を手厚くする――などを現在検討しているという。

請求番号:366.32/dan
書誌番号:JB00114107
ISBN:9784569847016

2.大沢 真理著『企業中心社会を超えて』岩波書店

(2020年8月刊,xix+319p,文庫判)

著者の専門は比較ジェンダー分析。社会保障・福祉などを中心とし、労働政策や労使関係から住宅、教育、税制などを含む政策分野をカバーする。以前から日本の社会政策に「女性」が不在であり、ジェンダーが無視されてきたと指摘。刊行後の経済社会情勢の変化で大企業の利害が優先される「企業中心社会」は緩和されたのか、女性と男性が直面する現実の違いは解消されてきたのかなどを探るため、今回の文庫化に至った。

93年の刊行当時、会社主義が緩んだかに見えたが、依然として過労自殺を含む過労死が一部のブラック企業に限らない社会問題のままで、ジェンダー不平等も変わらずに残っているなどの状況は変わっていないという。

著者は最近20年のG5諸国、北欧2国、韓国の性別賃金格差を比べ、日韓で女性パート労働者比率が増え、男性フルタイム労働者と比較した女性フルタイム労働者が縮小するなど賃金格差がいまも大きい点を問題視した。

請求番号:367.21/kig
書誌番号:JB00114019
ISBN:9784006004224

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2020年9月~10月の労働図書館受け入れ図書

  1. 尾原 和啓著『あえて数字からおりる働き方』SBクリエイティブ(287頁,四六判)
  2. 村木 厚子著『公務員という仕事』筑摩書房(230頁,新書判)
  3. ピーター・テミン著『なぜ中間層は没落したのか』慶応義塾大学出版会(xxiii+325頁,A5判)
  4. 小林 真生編著『変容する移民コミュニティ』明石書店(206頁,A5判)
  5. 庄司 俊作著『格差・貧困の社会史』クロスカルチャー出版(179頁,A5判)
  6. 橋本 健二著『中流崩壊』朝日新聞出版(289頁,新書判)
  7. 高木 郁朗著『失われた10年の中で』明石書店(239頁,四六判)
  8. 府川 哲夫著『日本の高齢化問題の実相』日本評論社(ix+185頁,四六判)
  9. 光山 博敏ほか著『現場力:強い日本企業の秘密』筑摩書房(219頁,新書判)
  10. 電通Bチーム著『仕事に「好き」を、混ぜていく。』翔泳社(x+173+xviii頁,四六判)