2020年11月の新着図書紹介

1.樫原 洋平著『エッジソン・マネジメント』PHP研究所

(2020年8月刊,239p,四六判)

本書では、大学生の4年間と卒業後、企業に就職してからの3年間を「ゴールデンセブン」と命名。人材育成における非常に重要な黄金の7年間という意味で、著者はこの期間を最適化することが、日本の唯一にして最大の資源である「人財」を大きく飛躍させるカギだと主張する。本書では若手のキャリアにおいて早期育成を阻害する4つの分断があるとし、「高校と大学の分断」「大学と企業の分断」「採用と育成の分断」「人事と職場の分断」の分断を乗り越えるために何をすべきかを問題提起する。そこで注目するのが日本の武器である「新卒一括採用」の刷新。欧米型のような極端なジョブ型を導入するのではなく、新卒一括採用の仕組みを残しつつ、日本流にアレンジした「新ジョブ型」の雇用環境を生み出していくことが求められているのだと解説する。

ゴールデンセブンの「人物像」については、論理的思考やプログラミングスキルなど特定の「専門性」をもった人物にとどまらず、実現したい目的があり、成果を創出できる「エッジソン(トガった)な人財」を想定する。

請求番号:336.42/ejj
書誌番号:JB00113943
ISBN:9784569845418

2.橘木 俊詔著『中年格差』青土社

(2020年7月刊,206p,四六判)

現在の30代半ばから40代半ばに当たる中年世代は、就職氷河期に求職したが、正規としての仕事が少なく、多くの人が無職か、職があっても非正規という場合が多かった。本書は、こうした中年世代がいま経済的に困窮しているのに加え、社会的にも不利な人生を送っていると指摘。例えば、① 結婚できない ② 社会保障制度に加入できない ③ 引きこもりになる――などをあげる。これらは、中年世代における自殺率と離婚率が高いことで確認できると強調。本書はこうした現象を「中年格差」と呼び、統計を使用して実態を明らかにする。結論から言えば、著者は日本に特有な「一度失敗すればばん回が不能」という文化に中年格差の原因があると分析する。

本書には、格差解消のための政策提言も盛り込まれている。第一に、介護保険の保険料徴収年齢の引き下げがある。現在40歳以上が対象であるところを40歳未満の人にも保険料負担をお願いしても良いのではないかとの見方だ。二つ目には失業率が高くないいま、雇用保険の給付条件を従来以上に緩和すべきだと説いた。

請求番号:367.7/chu
書誌番号:JB00113960
ISBN:9784791772957

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2020年8月~9月の労働図書館受け入れ図書

  1. 渡邉 哲也ほか著『アフターコロナ』かや書房(239頁,四六判)
  2. 村上 陽一郎編『コロナ後の世界を生きる』岩波書店(vii+295頁,新書判)
  3. 十川 陽一著『人事の古代史』筑摩書房(270頁,新書判)
  4. 服部 泰宏著『組織行動論の考え方・使い方』有斐閣(xiii+391頁,A5判)
  5. 梅崎 修ほか著『「仕事映画」に学ぶキャリアデザイン』有斐閣(xiii+223頁,A5判)
  6. デヴィッド・グレーバー著『ブルシット・ジョブ:クソどうでもいい仕事の理論』岩波書店(vii+426+7頁,A5判)
  7. 大内 伸哉著『デジタル変革後の「労働」と「法」』日本法令(xvi+379頁,A5判)
  8. 中野 公義著『パワハラ・セクハラ裁判所の判断がスグわかる本』日本法令(318頁,A5判)
  9. 千葉 祐大著『小さな会社の外国人活用の教科書』ぱる出版(223頁,四六判)
  10. 左右社編集部編『仕事本:わたしたちの緊急事態日記』左右社(446頁,四六判)