2020年10月の新着図書紹介

1.森戸 英幸ほか著『労働法トークライブ』有斐閣

(2020年7月刊,v+270p,四六判)

気鋭の労働法学者2名が労働法というやや難しい分野の10本のトピックについて、わかりやすく、楽しく考えてもらえるよう、ライブ感のあるトーク形式で熱く語り合ったのが本書。まずは採用の自由が争われたM樹脂社事件を取り上げる。思想・信条を採用基準とし、会社が採用を拒否していいのかが争われた事件だ。森戸氏は「(最高裁は)採用拒否してよろしいと言った」と主張。対する小西康之氏は「学生に手を挙げさせても、おかしいと。最初はみんなそう言いますね」。森戸氏は「雇うときは、好きな人を好きな基準で雇っていい、でも雇ってからは簡単にクビにしてはいけない、と長期雇用制とのバランスもとっているのではないか」と指摘する。

職場のハラスメントに耐え忍ぶ若者には「セクハラもパワハラもマタハラも、民事損害賠償の対象となりうる」(小西氏)。最終的には「企業名公表にまでつながりうる」(森戸氏)ので我慢しないよう訴えた。過労死問題では、森戸氏が労災保険給付と損害賠償請求の2つについて、調整はあるが、両方請求が可能だと解説した。

請求番号:366.14/rod
書誌番号:JB00113775
ISBN:9784641243385

2.高橋 均著『競争か連帯か』旬報社

(2020年7月刊,190p,四六判)

世界中に新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、多くの人々が切迫した生活状況に陥るなど社会のあり様が一変している。これに対し、著者は、分断と孤立をまん延させた市場万能経済を創りかえるよう求め、いまが四半世紀にわたって過度に強調されてきた自己責任社会から人間同士で支え合う連帯社会に大きくカジを切る機会だと主張。労働の尊厳を重視する労働運動の力と、暴走する市場経済の領域を縮小するための協同組合経済が結合して連携を再構築することが必要だと説く。「共益」の枠を超えた「公益」への脱皮が不可欠との考えだ。

本書は江戸時代から今日までの日本の協同組合と労働組合の関係性を具体的なエピソードを交えてつづる。「歴史をたどれば両者は車の両輪、コインの表裏の関係として始まっているのがわかる」と著者。明治時代に労働運動が台頭し始めて以来、労働組合と協同組合の協力関係は常に濃厚だったのが近年変化しつつあるとの見方を示し、両者が公益性を発揮しつつ、未来に向かって具体的にどのような目標を持ち、役割を担うべきかを探る。

請求番号:366.621/kyo
書誌番号:JB00113861
ISBN:9784845116430

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2020年6月~8月の労働図書館受け入れ図書

  1. 落合 陽一著『働き方5.0』小学館(205頁,新書判)
  2. 広瀬 義徳ほか著『自立へ追い立てられる社会』インパクト出版会(265+v頁,四六判)
  3. 明石 純一著『人の国際移動は管理されうるのか』ミネルヴァ書房(xii+281頁,A5判)
  4. 日経BP総合研究所イノベーションICTラボ著『テレワーク大全』日経BP社(287頁,A5判)
  5. リチャード・ウィルキンソンほか著『格差は心を壊す』東洋経済新報社(vii+434+52頁,A5判)
  6. 佐藤 朋彦著『家計簿と統計』慶應義塾大学出版会(222頁,四六判)
  7. 巌 成男著『東アジア労働市場の制度改革とフレキシキュリティ』ナカニシヤ出版(iii+265頁,A5判)
  8. 東谷 由香著『働き方改革で伸びる女性つぶれる女性』日経BP社(215頁,四六判)
  9. 澤渡 夏代ブラントほか著『デンマークの女性が輝いているわけ』大月書店(259頁,四六判)
  10. 澤田 晃宏著『ルポ技能実習生』筑摩書房(270頁,新書判)