2020年8・9月の新着図書紹介

1.野村 浩子著『女性リーダーが生まれるとき』 光文社

(2020年3月刊,323p,新書判)

日本は153カ国中121位――。2019年の世界経済フォーラムから発表されたジェンダー・ギャップ指数で日本は過去最低の順位となった。これまでよりも意思決定層に女性を増やさないと、日本は沈んでしまう。こうした問題意識を持って、四半世紀にわたり女性リーダーを取材してきた著者が、国内外企業の女性役員に取材した。日本が遅れをとる原因には「危機感」の違いがあると解説。海外各国はいまのままではいけないという強烈な危機感のもと、時にはクオータ制(割当制)という劇薬の導入まで試みて、変化を加速させている。それに比べると、日本の危機感は薄いし、生ぬるいという。女性役員らの「ひと皮むけた」転機から今後の時代を生き抜くためのヒントを探った。

請求番号:336.3/jos
書誌番号:JB00113666
ISBN:9784334044633

2.菅野 和夫著『労働法の基軸』 有斐閣

(2020年5月刊,xiii+380p,四六判)

労働法学の大家が研究者生活50年を迎えた現在までの軌跡を岩村正彦・東京大学名誉教授、荒木尚志・東大大学院法学政治学研究科教授の2名によるインタビュー形式でまとめた。生い立ちから石川吉右衛門氏に師事した学生時代、研究者として歩み始めて以降の内外での幅広い研究活動を回想。ハーバード・ロースクール客員教授、東大法学部長を歴任する一方、労働政策審議会会長、中央労働委員会会長として労使紛争の解決および労働政策の立案で大きな足跡を残すとともに、国際学会の会長を務めた。こうした経験を踏まえて、いまでも心がけたいのは、①洞察力を働かせて実態を把握する②歴史に学ぶ③国際比較によって立ち位置を確かめ、解決策を知る――ことだと説く。

請求番号:366/rod
書誌番号:JB00113709
ISBN:9784641243224

3.NHKスペシャル取材班著『ミッシングワーカーの衝撃』NHK出版

(2020年3月刊,214p,新書判)

非正規労働で働く人々が、中高年になって転職につまずくと、長期間働かず、求職活動を諦めてしまい、労働市場から消えて統計に表れない労働者(ミッシングワーカー)になる。その数2017年で103万人。本書は近年こうした労働者が急増しており、働き盛りの貴重な労働力人口である40代、50代の喪失につながる一方、「将来、社会コストに跳ね返るリスクのある危険な状態である」と警鐘する。ミッシングワーカーの定義は米国で誕生し、考え方は同国にならっている。親の介護や仕事の失敗、病気など様々な理由で中高年は労働市場から消えるが、本書では地域の人々や行政の後押しで、地元の介護施設に再就職を果たすことのできた55歳の男性の事例を取り上げている。

請求番号:366.021/mis
書誌番号:JB00113692
ISBN:9784140886175

4.今野 晴貴著『ストライキ2.0』 集英社

(2020年3月刊,254p,新書判)

日本のストライキは1970年代をピークに激減していたが、「近年、再び盛り上がりを見せている」と著者は指摘する。かつての企業別労働組合が主導した運動とは異なり、「保育士一斉退職」のように耐えがたい労働に抗議する社会運動が広がりを見せているのが最近の特徴。こうした新しいストで注目すべきなのはこれまでストに冷淡だった人々からも幅広い共感を得ている点だ。翻って世界に目を転じれば、ストは現在まで一貫して頻発。移民労働者や教育格差、AI(人工知能)など「新しい課題の解決」を図るためにストが先駆的に用いられている。日本でもブラック企業や非正規労働者など単に「賃上げ」を争点にしない社会正義を求める運動に移行しつつある現状を紹介する。

請求番号:366.66/sut
書誌番号:JB00113669
ISBN:9784087211153

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2020年5月~6月の労働図書館受け入れ図書

  1. 須古 勝志ほか編著『HRプロファイリング』日経BP社(243頁,四六判)
  2. 露木 恵美子ほか著『職場の現象学』白桃書房(xv+354頁,A5判)
  3. 野川 忍編著『労働法制の改革と展望』日本評論社(xii+368頁,A5判)
  4. 細野 大輝著『会社を変える障害者雇用』新泉社(253頁,四六判)
  5. 経済協力開発機構(OECD)編著『高齢社会日本の働き方改革』明石書店(155頁,A5判)
  6. マダム・ホー著『ポートフォリオワーカー』小学館(208頁,四六判)
  7. 細井 聡著『同僚は外国人。』CCCメディアハウス(237頁,四六判)
  8. 神原 文子著『子づれシングルの社会学』晃洋書房(viii+347頁,A5判)
  9. 岩山 治著『「教育労働者」という生き方』花乱社(349頁,A5判)
  10. 松永 伸太朗著『アニメーターはどう働いているのか』ナカニシヤ出版(ix+192頁,A5判)