2020年7月の新着図書紹介

1.ダリル・ブリッカーほか著『2050年世界人口大減少』文藝春秋

(2020年2月刊,381p,四六判)

国連の人口推計に基づき、将来は世界的規模で「人口爆発」が起こり、貧困増加や食糧不足、環境劣化が待ち受けていると警告されてきた。しかし、本書はこうした予測がすべて見事に間違っていると否定。いまから30年後に世界人口は90億人近くでピークを迎え、史上初めて減少に転換、その後増えることはないと見通す。すでに日本、韓国、スペイン、イタリアなど25カ国で毎年人口が減っており、中国ですらあと数年で人口減少に転じるという。本書は、人口を大幅に増やし続け、高齢化も緩やかな国であるカナダに着目。移民が高い教育を受け、あらゆる国出身の人々が社会で活躍している同国を好事例とし、日本が同じ選択を受け入れる日は来るのだろうかと問題提起する。

請求番号:334.3/nis
書誌番号:JB00113559
ISBN:9784163911380

2.尾野 裕美著『働くひとのキャリア焦燥感』ナカニシヤ出版

(2020年2月刊,v+188p,A5判)

本書は、若者の転職希望者の多くが自分のキャリア形成を急ぐあまり、漠然とあせる結果、逃避先として転職を考えているのではないか、とみる。そうしたキャリア焦燥感を「切迫感(八方ふさがり)」「キャリア構築への衝動(将来に向けたがんばり)」「キャリアの懸念(キャリアに関する気がかり)」の3項目にして分析。このうち、「キャリア構築への衝動」の回答が多かった人は、目標に向けて早くキャリアを構築しようというポジティブな面があると説く。切迫感は人間的成長に抑制的に働き、逆にキャリア構築への衝動の回答にはプラス効果があるとの見方を示した。また自分のペースでキャリア構築の努力をしている人は、人生を悲観したり、不安視したりしないとも考察。

請求番号:366.29/hat
書誌番号:JB00113564
ISBN:9784779514517

3.伊藤 るり ほか編著『家事労働の国際社会学』人文書院

(2020年2月刊,390p,A5判)

日本での家事労働をめぐる議論について編著者は、「家内」であると同時に「国内」、つまり二重の意味で「国内問題」と考えられてきたが、そうした状況にも変化が生じている、という。福祉国家の後退、女性の就労拡大、新自由主義的政策の台頭を背景として、世界的に「海外就労労働者の女性化」「国内家事労働への海外女性労働者の就業拡大」などの状況が現れ、その象徴として「家事労働者のためのディーセントワーク(人間らしい仕事)条約」を2011年に国際労働機関(ILO)が採択。日本でも家事労働が国際問題に浮上してきた。本書は、とくに有償労働の諸問題を探るため、日本を含むアジア、欧米諸国で現地調査し、各地の家事労働者の処遇と権利保障を明らかにした。

請求番号:366.38/kaj
書誌番号:JB00113642
ISBN:9784409241325

4.相馬 直子 ほか編著『子育て支援を労働として考える』勁草書房

(2020年2月刊,iv+225p,A5判)

次代を担う子どもの育成を社会全体で支えるため、国では子育てにかかる経済的負担の軽減や安全な育児が可能な環境の整備を実施できるよう様々な施策を推進してきた。しかし、子育ては長い間、家庭では女性の労働とみなされ、無償賃金や低賃金などの働き方の問題が指摘されてきた。本書では、保育労働と地域の実情に応じた地域子育て支援労働を総称する「子育て支援労働」という考えを打ち出し、支援に関わる人々の労働内容と身分保障の問題を検討。さらに調査や各種研究を通じて、家庭の周辺での地域の子育ての営みをはじめて労働として分析した学術書でもある。本書は、地域子育て支援を充実させることで、今後の家庭向けの子育て施策が向上すると見込んでいる。

請求番号:369.4/kos
書誌番号:JB00113435
ISBN:9784326603275

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2020年3月~5月の労働図書館受け入れ図書

  1. 伊東 昌子ほか著『職場学習の心理学』勁草書房(xii+218頁,A5判)
  2. 石嵜 信憲ほか編著『同一労働同一賃金の基本と実務』中央経済社(2+xv+466頁,A5判)
  3. 第二東京弁護士会労働問題検討委員会編著『働き方改革関連法その他重要改正のポイント』労働開発研究会(xiv+413頁,A5判)
  4. 和田 肇ほか編著『労働法・社会保障法の持続可能性』旬報社(xix+461頁,A5判)
  5. 橋本 陽子編『EU・ドイツの労働者概念と労働時間法』信山社(13+170頁,A5判)
  6. 桝田 智彦著『中高年がひきこもる理由』青春出版社(205頁,新書判)
  7. 片山 優美子著『一般企業への重度精神障害者の就職をどう支援していくか』ミネルヴァ書房(vii+203頁,A5判)
  8. 苅谷 剛彦ほか著『大学はもう死んでいる?』集英社(283頁,新書判)
  9. 日本経済新聞社編『トヨタの未来:生きるか死ぬか』日本経済新聞出版社(253頁,四六判)
  10. 碓田 のぼる著『一九三〇年代「教労運動」とその歌人たち』本の泉社(183頁,A5判)