2020年6月の新着図書紹介

1.中里 桃子著
『自分の居場所をつくる働き方』日本能率協会マネジメントセンター

(2020年2月刊,189p,四六判)

「働き方改革や副業解禁などとよく聞くけれど、何をしたらいいのかよくわからない」「このまま同じ会社にいても先が見えているが、自分には起業できるようなスキルがない」――以前の著者は毎日こう感じていた。20代には1~2年ごとに転職を繰り返し、34歳で起業するまで7社を経験。資格取得や語学に挑戦したが専門性は身につけられなかった。そんな著者が見つけたこれからの時代の働き方が「コミュニティ・ワーカー」。限られたポストを誰かから奪うのではなく、自分らしく働きながら、仲間とともに成果を出せる「居場所」を自分でつくり出していく働き方だ。本書では、会社員でも個人事業主でもない「第3の道」ともいわれるこの新しい働き方を平易に解説する。

請求番号:159.4/jib
書誌番号:JB00113438
ISBN:9784820731948

2.石田 浩ほか編著『人生の歩みを追跡する』勁草書房

(2020年1月刊,viii+282p,A5判)

東京大学社会科学研究所は「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」と題する調査で若年者、壮年者を対象に10年以上の人生の軌跡を追跡調査した。本書はそのうちの「就業・キャリア・貧困」「生活・健康」「家族」「社会・政治に対する意識・態度」の4つの問題を追究。「就業・キャリア・貧困」では現在の日本社会で所得が上昇している就業者がどの程度いるのか、所得の高低の違いは何が関係しているのかを分析する。一方で貧困状態に注目し、どのように貧困に陥り、抜け出すのかを解明する。「家族」では職場のワークライフバランスとパートナーとの関係を調べ、男性の帰宅時間について「午後7時までに帰宅」できる割合がややプラスだったことがわかった。

請求番号:361.91/jin
書誌番号:JB00113448
ISBN:9784326603268

3.山田 久著『賃上げ立国論』日本経済新聞出版社

(2020年2月刊,271p,四六判)

労働問題に詳しい専門家である著者は「日本は『高賃金国』だというかつての常識は、いまや非常識になりつつある」と警告する。日本の製造業の賃金はドイツと比べて4割以上も低く、肩を並べつつあるアジア各国も、業種によってはいまや日本より高いケースもある。著者は「低賃金による低価格戦略はもはや限界」とし、付加価値創造経営への転換を促す雇用賃金システムの導入が不可避との見方を提示。今後は賃上げを軸にした社会経済モデルの国スウェーデンにならった社会経済を構築するのも一案だと主張する。日本が社会保障制度の維持と財政危機の回避ができるよう、賃上げを促す政府の第三者機関の設置を提唱。豊かな社会を目指し、「生涯賃金3割増」を示唆した。

請求番号:366.4/chi
書誌番号:JB00113459
ISBN:9784532358495

4.堀内 都喜子著
『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』ポプラ社

(2020年1月刊,224p,新書判)

有休消化100%、夏には1カ月以上の休暇を取得、週に1回以上在宅勤務する人は3割以上、残業ゼロで16時にはみんな足早に帰宅――フィンランドの大使館に勤務する著者はこうした働き方の背景に「オンとオフの切り替えをはっきりさせ、休みは生産性向上のために必要と全員が考える」ことが関わっているとみる。また平等でオープンな職場の人間関係も影響しているという。同国は2018、2019年と2年連読で国連発表の幸福度ランキングで世界1位となった。しかし、今後は少子高齢化、高失業率、グローバル化など急速な社会の変化への対応という課題も。専門家は将来の働き方に関し、就労時間や働き方、労働条件が各個人によりかなり異なったものになると予測する。

請求番号:366.7/fin
書誌番号:JB00113560
ISBN:9784591165904

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2020年3月~4月の労働図書館受け入れ図書

  1. トマ・ピケティ編『不平等と再分配の経済学』明石書店(225頁,四六判)
  2. 諸富 徹著『資本主義の新しい形』岩波書店(xviii+251頁,B6判)
  3. 酒井 正著『日本のセーフティーネット格差』慶應義塾大学出版会(xviii+331頁,四六判)
  4. 東京弁護士会労働法制特別委員会編著『新労働事件実務マニュアル』ぎょうせい(xxii+648頁,B5判)
  5. 渡邉 正裕著『10年後に食える仕事食えない仕事』東洋経済新報社(334頁,A5判)
  6. 下村 英雄著『社会正義のキャリア支援』図書文化社(342頁,B6判)
  7. 田中 翼著『働くコンパスを手に入れる』晶文社(225頁,B6判)
  8. 東京弁護士会法曹大同会編著『ハラスメント事件の弁護士実務』第一法規(x+329,A5判)
  9. 村田 晶子著『外国人労働者の循環労働と文化の仲介』明石書店(194頁,A5判)
  10. 岩波書店編集部編『私にとっての介護』岩波書店(xi+194頁,B6判)