2020年5月の新着図書紹介

1. 友原 章典著『移民の経済学』中央公論新社

(2020年1月刊,vi+222p,新書判)

海外から日本に移住し、長期的に生活する「移民」はいまや250万人にのぼる。また2018年時点の在日外国人労働者は146万人。著者は「現在の日本経済は、外国人の存在なしには語れない」と指摘する。18年12月末に政府は入国管理法を改正し、外国人労働者の受け入れを拡大した。本書は移民増により日本人の生活がどのように変化するのか、雇用や賃金、経済成長、物価、税、社会保障に至る幅広い論点で分析。例えば外国人による家事代行や育児支援などのサービスで社会進出できる女性は高学歴・高所得の人々にとどまるとみる。著者は「日本では、移民の経済学的な研究があまり進んでいない」とし、本書が今後目指す社会の方向性を考えるきっかけになることを願う。

請求番号:334.41/imi
書誌番号:JB00113422
ISBN:9784121025753

2.北野 唯我著『OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める』ダイヤモンド社

(2019年11月刊,255p,四六判)

経営問題の専門家として職歴を積んだ著者が、企業の業績に大きな影響を与えるのが「オープネス(風通しの良さ)」であることを紹介した1冊。オープネスとは「情報の透明性」であり、「戦略のクリアさ」であり、「リーダーの自己開示性」である。風通しが悪く、人事評価が適正でない会社であるにもかかわらず、「社員の士気が高い」という組織はわずかしかないと解説。職場の風通しを阻害する要因には ① 上司などにみられる言行不一致 ② 一方的なコミュニケーションによる「戦略のねじれ」③ 過度な成功事例の共有――の3つを指摘する。こうした問題に対し、経営者やリーダーは経営開放性や情報開放性を高める具体的施策を積極的に進める必要があるとの見方を示している。

請求番号:336.3/ope
書誌番号:JB00113352
ISBN:9784478108819

3.権丈 英子著『ちょっと気になる「働き方」の話』勁草書房

(2019年12月刊,viii+303p,A5判)

労働経済学者で雇用政策や社会保障に詳しい著者は「生産年齢人口が大幅に減少する日本社会では今後、労働力の相対価格が高まる『労働力希少社会』を迎える」と見通す。労働力が減る一方、65歳以上人口が増える2040年までが日本の雇用社会の困難な時期で、まずはそこまでしのぐのが課題だという。その間、労働市場への参加が進めば、2030年まで現在並みの6,000万人の労働力人口を維持できると予測。これまで就業率が低かった高齢者や女性の就労が一段と望まれると主張する。現在の日本は労働力活用を考えた場合、一人当たりの労働時間が長く、限られた人のみ働く「分業型」社会だと分析。今後は長時間労働を望まない人も働ける「参加型」に移行すべきだと説く。

請求番号:366/cho
書誌番号:JB00113373
ISBN:9784326701117

4.サンドラ・シャール著『「女工哀史」を再考する』京都大学学術出版会

(2020年2月刊,ix+495p,A5判)

「女工哀史」は作家の細井和喜蔵が大正時代に執筆したノンフィクション。紡績工場での女工の過酷な労働条件と生活状況を生々しく描き、まるで「奴隷」のように扱われていた女工の虐待を告発する内容に当時の日本社会は大きな衝撃を受けた。本書が執筆されたのは、「女工哀史」を軸に近代日本の労働問題とジェンダーとの関わりに関心をもった著者が、戦前日本の製糸工場の労働争議では国内最大級だった1927年の大製糸会社の労働争議を研究したのがきっかけ。女工の「糸ひき歌」の数々、当事者への聞き取り調査などからみえる女工たちの主体的な「声」によって彼女たちが抑圧に抵抗していたのがうかがえるとともに、彼女らの肯定的な労働観が明かされる。

請求番号:366.38/jok
書誌番号:JB00113367
ISBN:9784814002313

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2020年2月~3月の労働図書館受け入れ図書

  1. 島田 潤一郎著『古くてあたらしい仕事』新潮社(218頁,新書判)
  2. ユヴァル・ノア・ハラリ著『21 lessons』河出書房新社(466頁,A5判)
  3. 松久 玲子編著『国境を越えるラテンアメリカの女性たち』晃洋書房(iv+253頁,A5判)
  4. 山下 真一ほか著『社会保障法の法源』信山社(vi+197頁,A5判)
  5. 稲垣 久和著『「働くこと」の哲学』明石書店(iv+372頁,四六判)
  6. 日本弁護士連合会貧困問題対策本部編『最低賃金:生活保障の基盤』岩波書店(69頁,A5判)
  7. 桐畑 昴著『退職代行マニュアル』扶桑社(135頁,四六判)
  8. 姜美香著『外国人介護労働者の受入れと課題』晃洋書房(196頁,A5判)
  9. 小野 公一編『人を活かす心理学』北大路書房(ix+222頁,A5判)
  10. 芳賀 繁著『よりよい仕事のための心理学』北大路書房(xiii+258頁,A5判)