2020年3月の新着図書紹介

1.アニー・ローリー著『みんなにお金を配ったら』みすず書房

(2019年10月刊,214+27p,四六判)

副題は「ベーシックインカムは世界でどう議論されているか?」。国民が一律に最低限の生活を送れる毎月支給のベーシックインカム(UBI)が世界で注目され、ドイツやオランダ、フィンランド、カナダ、ケニアでは試験運用が開始されている。推進派は将来の技術進歩に伴う失業問題から導入を提唱。一方で実現には莫大な費用がかかるとの指摘もある。ジャーナリストである著者は世界のUBIの状況を考察した結果、その必要性は認めつつ、「本当に不平等拡大や大量失業が発生するのだとすれば、それをUBIだけで解決することはできない」「UBIの議論ばかりに拘泥せず、富と補償、仕事と労働に対して、わたしたちの理解をもっと広く変えねばならない」との結論に至る。

請求番号:364/min
書誌番号:JB00113297
ISBN:9784622088448

2.木村 勝著『知らないと後悔する定年後の働き方』フォレスト出版

(2019年10月刊,310p,新書判)

本書は「人生100年時代を迎え、高齢者が働けるうちは働くためには何をすればいいのか」という課題に対し、具体的で実践的な解決法を提供することが狙い。昨年明示された高年齢者雇用安定法の見直し案では、希望する高齢者が70歳まで働けるようにするため、これまでの①定年延長②定年廃止③契約社員での再雇用――に加え、「他企業への再就職支援」「起業支援」などの考えを打ち出した。今後高齢者は会社と対等な当事者として、現役時代から個人事業主マインドで仕事に取り組むべきだと指摘。従来のノウハウを生かし、インディペンデント・コントラクター(独立業務請負人)などの新しい働き方を視野に入れてキャリアを構築する必要性が高まっているとの見方を示す。

請求番号:366.28/shi
書誌番号:JB00113187
ISBN:9784866808048

3.元榮 太一郎著『「複業」で成功する』新潮社

(2019年11月刊,206p,新書判)

安倍政権の働き方改革の追い風もあり、著者は「副業ブームが到来している」と強調する。これまで多くの労働者が本業以外の仕事をすることに魅力を感じながら踏み出せなかった。就業規則に副業禁止を明記する企業が少なくないからだ。しかし、現在、厚生労働省は副業を許可するモデル就業規則を提示している。完全な方向転換だ。著者は今後必要とされるのは、本業の片手間の副業ではなく、本業を複数持つとの発想だと示唆。「複業」の意識を高めることで自分自身や企業を成功に導くのだという。著者は自らの複業経験に基づき、「副業を禁止する企業側とどう交渉するか」「損害賠償請求される副業とは」「会社を辞めて独立する際に注意すべきこと」など具体的に助言する。

請求番号:366.29/fuk
書誌番号:JB00113295
ISBN:9784106108389

4.藤田 孝典著『中高年ひきこもり』扶桑社

(2019年11月刊,255p,新書判)

2018年度の内閣府調査によれば、40歳から64歳までの中高年のひきこもりは推計で61万3千人とされ、若年層よりも中高年層のほうが数としては多いとも報じられ、社会に衝撃を与えた。著者は、いわゆる「8050問題」をはじめとするひきこもり当事者の家族の高齢化を問題視すると同時に、この現状に対する社会の無理解を嘆く。一度社会に出て、普通に仕事をしていた働き盛りの人がなるケースが多く、過剰に自責的になりやすい。やむを得ず退職し、経済的に追い詰められ、仕方なく年老いた親元に戻るものの、顔を合わせたくないので、昼夜逆転の生活になる。本書では、こうした中高年ひきこもりの実態に焦点を当て、当事者の声を聞きながら、とじこもる原因と支援のあり方を探った。

請求番号:367.7/chu
書誌番号:JB00113199
ISBN:9784594083182

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2019年12月~2020年1月の労働図書館受け入れ図書

  1. 古川 裕倫著『仕事を楽しめる人は「忙しい」と言わない』扶桑社(224頁,四六判)
  2. 平林 猛著『棘男:労働界のレジェンド武建一:評伝』展望社(318頁,四六判)
  3. 廣瀬 幹好著『フレデリック・テイラーとマネジメント思想』関西大学出版部(viii+285頁,A5判)
  4. 日本経済新聞編著『ミレニアル世代革新者たち』日本経済新聞出版社(300頁,文庫判)
  5. 伊藤 周平著『「保険化」する社会保障の法政策』法律文化社(vi+285頁,A5判)
  6. 島澤 諭著『年金「最終警告」』講談社(186頁,四六判)
  7. 野川 忍ほか編『実践・新しい雇用社会と法』有斐閣(xvi+330頁,A5判)
  8. 第一東京弁護士会労働法制委員会ほか編著『詳解働き方改革関連法』労働開発研究会(xiii+381頁,A5判)
  9. 菅野 和夫著『労働法 第12版』弘文堂(xxiv+1,227頁,A5判)
  10. 座波 淳著『発達障害でも働けますか?』花風社(211頁,四六判)