2020年1・2月の新着図書紹介

1.石川 弘子著『モンスター部下』日本経済新聞出版社

(2019年8月刊,230p,新書判)

SNS(交流サイト)で会社や取引先の誹謗中傷を垂れ流す若手社員、年下の上司に〝逆パワハラ〟するシニア社員などあり得ないトラブルを起こす「モンスター社員」が増殖中だ。こうした部下は話が通じず、話し合っても平行線に終わることが少なくない。しかし、だからといって相手を避けてばかりいては、他者に悪影響が及び、気づいたときには自分の部署が崩壊させられている、という事態になりかねないと本書は管理職層に語りかける。モンスター部下は ① 嘘つきモンスター ② 自己愛型モンスター ③ モラル低下モンスター――に類型されるが、接する問題部下がどのタイプなのか分析し、承認欲求など相手の言動の奥にある本心は何なのかを探ることが大事だとつづった。

請求番号:336.4/mon
書誌番号:JB00113070
ISBN:9784532264086

2.稲葉 振一郎著『AI時代の労働の哲学』講談社

(2019年9月刊,216p,四六判)

現代は「第三次人工知能(AI)ブーム」と言われている。「AI技術の発展が人間の仕事を奪う」――。本書は、こうした考えはこれまでも議論されてきた「古くて新しい問題」だと説く。AIが労働・雇用に対して与えるインパクトを整理すると、まず肉体労働が代替され、コンピューターの出現以降は精神労働の領域にまで拡大してきたと指摘。仮にAIが「道具」であることを脱して、自律的に行動し、人間を上回る能力を発揮するようになったとしても、それはただ単に新しいタイプの「人間」が増えたことにすぎないという。そのうえで本書は、AI技術の発展は社会に大きな影響を与えるだろうが、資本主義社会の構造を根本的に変えることはないとの見方を示している。

請求番号:366.2/aij
書誌番号:JB00113107
ISBN:9784065171806

3.田中 里尚著『リクルートスーツの社会史』青土社

(2019年9月刊,526+vip,四六判)

「就活」学生のスーツ姿は、季節の風物詩として見慣れたものとなっている。この背広を世間ではリクルートスーツと呼ぶが、なぜこんなものを着なくてはいけないのか、というつぶやきも漏れ伝わってくる。採用の現場では、服は無視できないが重要ではない。人格や熱意を見ずにどうして採用ができようとの意見がある一方、それなら私服でもいいかといえばそれではいけないとされる。就活生も服にとらわれている暇はなく、志望動機や自己PRに集中すべきで、労力を省くうえでもみんなと同じスーツのほうが無難だ。本書は、無個性の象徴とされ、否定され、ときに笑われるリクルートスーツの歴史を描写。なぜ就活スーツが黒一色に染まるようになったのかも解いている。

請求番号:383.1/rik
書誌番号:JB00113219
ISBN:9784791772063

4.藤野 豊著『「黒い羽根」の戦後史』日経BP社

(2019年9月刊,vi+374p,A5判)

終戦後、日本の復興のための基幹産業として位置づけられながら、1940年代末には合理化政策が推し進められた炭鉱産業。海外の石炭や石油の輸入といったエネルギー革命が加わり、多くの炭鉱労働者が失業し、深刻な不況に陥った。なかでも中小炭鉱が集まる筑豊は貧困と少女の人身売買の温床になったという。国が炭鉱離職者臨時措置法を成立させ、炭鉱労働者の救済に着手したのは1959年。著者は国がこうした施策を実施したのは、安本末子の日記『にあんちゃん』、土門拳の写真集『筑豊のこどもたち』などのメディアのほか、募金活動「黒い羽根運動」も原動力になったと振り返る。本書は臨時措置法成立までの15年間を精査することで、炭鉱産業の負の歴史を追究した。

請求番号:567.092/kur
書誌番号:JB00113113
ISBN:9784866170794

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2019年10月~11月の労働図書館受け入れ図書

  1. ダニエル・コーエン著『ホモ・デジタリスの時代』白水社(222+xvii頁,四六判)
  2. 福谷 尚久著『会社の終活』中央経済社(18+321頁,A5判)
  3. 水町 勇一郎著『詳解労働法』東京大学出版会(xxxiii+1,429頁,A5判)
  4. 飯村 大智著『吃音と就職:先輩から学ぶ上手に働くコツ』学苑社(132頁,A5判)
  5. 南雲 智編著『留学生の日本就職ガイド』留学生就職サポート協会(257頁,B6判)
  6. 本の雑誌編集部編著『働くわたし』本の雑誌社(186頁,四六判)
  7. 西岡 研介著『トラジャ:JR「革マル」三〇年の呪縛、労組の終焉』東洋経済新報社(615+viii頁,A5判)
  8. 樫村 愛子著『この社会で働くのはなぜ苦しいのか』作品社(244+vii頁,四六判)
  9. 結城 康博著『介護職がいなくなる』岩波書店(86頁,A5判)
  10. 小島 俊一著『会社を潰すな!崖っぷち社員たちの企業再生ドラマ』PHP研究所(373頁,文庫判)