2019年10月の新着図書紹介

1.アラン・シュピオ著『フィラデルフィアの精神』勁草書房

(2019年6月刊,vi+206頁,四六判)

国際労働機関(ILO)が採択した1944年の「フィラデルフィア宣言」は「労働は商品ではない」「一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である」など4つの根本原則で有名である。この宣言の成立から75年を経たが、本書は、ILOが掲げる精神の自由と肉体の安全との結びつきは、依然として経済組織を社会正義の原則に従わせていると説く。また現代社会のグローバル化の過程で支配的な考えは、フィラデルフィア宣言の理念とは正反対だと指摘。社会正義が目標となる代わりに、資本と商品の自由な流通が目標となり、手段と目的が覆されたとみる。本書は、こうした大転換を分析する一方で、フィラデルフィアの精神がいまも今日性をとどめていることを明示している。

請求番号:309.3/fui
書誌番号:JB00112764
ISBN:9784326451166

2.藻谷ゆかり著『衰退産業でも稼げます』新潮社

(2019年5月刊,217頁,四六判)

著者によれば、経済成長をもたらすのは、「ハイテク産業のイノベーション」だけではなく、衰退産業のような「ローテク産業」でも可能であるという。本書が取り上げる衰退産業「商店・旅館・農業・伝統産業」には、① 長く続き、今後も残すべき「価値」がある ② 新規参入が少なく比較的ローリスクだが後継者難 ③ 労働集約的である半面、生業としてやりがいがある――などの特徴がある。本書では、代替わり時や起業時にイノベーションを起こすことに成功した16社の事例を分析しているが、著者は「ビギナーズ・マインド(初心者の心)」「増価主義(時とともに価値を積む)」「地産外招(ローカルな強みを持つ商品で他の地域から顧客を招く)」という3つの重要性を説いている。

請求番号:335.35/sui
書誌番号:JB00112751
ISBN:9784103526414

3.前野 隆司著『幸せな職場の経営学』小学館

(2019年6月刊,221頁,四六判)

著者は働く人を「幸せ」にする職場を日々追究している。多くの研究者による研究成果を体系化し、幸せのメカニズムを解明。もはや宗教や心理学、哲学の領域のみならず、科学の分野からも語ることができると説く。海外の研究で、就業場所や労働時間、休日などをすべて自分で決定できる主観的幸福度の高い人はそうでない人に比べて創造性は3倍、生産性は31%高い傾向にあり、転職率・離職率・欠勤率はいずれも低いことがわかったという。また、本書では、カネ・モノ・地位による幸せは長続きしないと強調。個の幸せを目指す「個人主義的な因子」とみんなの幸せを目指す「集団主義的な因子」をバランスよく備えることが重要だと提起する。先進的4社の実践例も収録。

請求番号:336.3/shi
書誌番号:JB00112746
ISBN:9784093886901

4.平賀 充記著『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』アスコム

(2019年6月刊,203頁,四六判)

20代の部下を抱えるあるマネジャーは「若いヤツに気をつかうのはとにかく疲れる」とこぼす。パワハラやブラック企業といった言葉がニュースをにぎわす昨今、いつ自分が当事者になるかわからない。部下をちょっとキツく叱ったら思った以上に傷つけ、突然辞める。20代で4社目、5社目という人もめずらしくない。本書はそんな「扱いにくい職場の若者」に悩む中堅社員に、これを知っておくだけで若者マネジメントがグッと楽になるわずか20のキーワードを示す。例えば「タイムパフォーマンス」。若者は長々と説教されて時間を奪われるよりも、短い時間でビシッと激しく叱られるほうがマシと思っていると明かす。本書を通じて、職場の若者の深層心理が見えてきそうだ。

請求番号:366.29/naz
書誌番号:JB00112760
ISBN:9784776210238

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2019年6月~8月の労働図書館受け入れ図書

  1. 大谷 彰著『プロカウンセラーが教える対人支援術』金剛出版(230頁,A5判)
  2. 今野 晴貴他編『闘わなければ社会は壊れる』岩波書店(xv+236頁,四六判)
  3. 大和総研コンサルティング本部編『この働き方改革が企業と従業員を変える』中央経済社(ii+x+235頁,A5判)
  4. 川上 憲人著『ここからはじめる働く人のポジティブメンタルヘルス』大修館書店(xii+211頁,四六判)
  5. 佐野 薫他編著『アルバイトから学ぶ仕事入門』中央経済社(ii+V+158頁,A5判)
  6. 澤路 毅彦他著『ドキュメント「働き方改革」』旬報社(279頁,四六判)
  7. 水町 勇一郎著『労働法入門 新版』岩波書店(xxii+248+4頁,新書判)
  8. 白河 桃子著『ハラスメントの境界線』中央公論新社(262頁,新書判)
  9. 尾崎 孝史著『未和:NHK記者はなぜ過労死したのか』岩波書店(ix+228頁,四六判)
  10. 本田 直之著『50歳からのゼロ・リセット』青春出版社(187頁,新書判)