2019年7月の新着図書紹介

1.熊谷 徹著 『ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか』青春出版社

(2019年2月刊,187頁,新書判)

ドイツ生活29年の著者によれば、ドイツ人はわれわれ日本人に比べて、お金や消費に振り回されず、それ以外の価値を重視している印象が強いという。例えば静かな環境。仕事の疲れをいやすためには不可欠だと考える。また森や公園など自然を満喫することも重視。いずれもお金では測れない価値だ。さらにお金より大切に考えているのが「自由時間」。多くのドイツ人は、残業はしない。仕事はほどほどだ。企業や店は過剰にサービスを提供する必要がないので、自社の労働者の負担は軽減し、自由時間が増える。生活にかかるコストも低下する。年収が少なくても、自由時間、芸術活動、趣味、自然との触れ合いなどによって「心の豊かさと安定」を得ることは可能だと提言する。

請求番号:302.34/doi
書誌番号:JB00112489
ISBN:9784413045629

2.日経産業新聞編 『あの会社のスゴい働き方』日本経済新聞出版社

(2019年2月刊,230頁,文庫判)

2018年6月から同11月にかけて、日経産業新聞に連載した長期企画をまとめた。完全なリモートワークを認め、海外旅行をしながら働けるシステム開発会社。大阪のウェブマーケティング会社では、休み中や終業後には会社からのメールや電話に対し「つながらない権利」を行使し、心身を休める。働き方改革でも注目を集めた勤務間インターバル制度を先行導入した総合商社も取材。改革先進企業としては、副業を認める製薬会社に注目した。副業を解禁しているのは社会人経験3年以上の社員。解禁2年半で約1,200人中、約70人が届け出ている。内容としては調剤薬局が最も多い。このように本書は、日本の雇用文化が変わりつつあるなか、個人や会社はどうすべきかを例示。

請求番号:336.4/ano
書誌番号:JB00112518
ISBN:9784532198862

3.山口 周著 『仕事選びのアートとサイエンス』光文社

(2019年3月刊,244頁,新書判)

サブタイトルに「不確実な時代の天職探し」とあるが、本書は単なる転職ノウハウ本ではない。「天職」とは、予想もしない時期と場所で他者から与えられるものと定義し、そうした「いい偶然」をより良い形で起こさせるための思考様式や行動パターンこそが「天職への転職」に最も必要な技術だと指摘。そのために不可欠な5つの要件として「好奇心」「粘り強さ」「柔軟性」「楽観性」「リスクテーク」をあげる。また人脈の広さと信用の深さの「乗数効果」も重視。そのうえで、仕事選びを考える際には、まずはその組織が持っている文化や価値観をオープンに受け入れ、自分の強みや能力についていろいろと実際に試し、本来の自分であろうとする力を高める必要があるという。

請求番号:366.29/shi
書誌番号:JB00112572
ISBN:9784334044039

4.牧内 昇平著 『過労死 その仕事、命より大切ですか』ポプラ社

(2019年3月刊,341頁,四六判)

過労死やパワハラ死によって、大切な家族を亡くした遺族11人から聞いたやり場のない怒りや悲しみを紹介する。日本最大規模の公共放送機関の若い女性記者の場合、過労死を社会問題として報じるメディアの側の犠牲者だった。2013年に相次いで実施された大型選挙の取材で倒れた。母は「もう一生、心から笑える日は来ない」と語る。渋谷のステーキ店では店長を務めていた青年が自死。追いつめたのは、極度の長時間労働と上司からの暴行だった。パワハラした上司からの謝罪は現在も実現していない。著者は、過労で判断力を失う前に①あなたの代わりはいる②辞めるのは本人の自由③せめて1時間だけ現場から逃げてみる――と考え、自分で身の安全を守るよう提唱する。

請求番号:366.99/kar
書誌番号:JB00112565
ISBN:9784591162415

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2019年4月~5月の労働図書館受け入れ図書

  1. 堀江 貴文著『僕たちはもう働かなくていい』小学館(205頁,新書判)
  2. デービッド・アトキンソン著『日本人の勝算』東洋経済新報社(323頁,四六判)
  3. 木島 康雄監修『最新働き方改革法と労働法のしくみ:図表で早わかり』三修社(255頁,A5判)
  4. 村田 毅之著『労働法の再構築』晃洋書房(xi+283頁,A5判)
  5. 森岡 孝二著『雇用身分社会の出現と労働時間』桜井書店(309頁,A5判)
  6. 林 拓也著『職業間距離の計量社会学』ナカニシヤ出版(vi+162頁,A5判)
  7. マルクス、エンゲルス著『企業別組合とマルクス・エンゲルスの労働者組合論』共同企画ヴォ―ロ(251頁,A5判)
  8. 藤原 智美著『この先をどう生きるか』文藝春秋(190頁,四六判)
  9. 大江 英樹著『定年前:50歳から始める「定活」』朝日新聞出版(220頁,新書判)
  10. 水野 雅之著『サポート資源が進路選択および就職活動に及ぼす影響』風間書房(vi+188頁,A5判)