2019年5月の新着図書紹介

1.熊野 英生著『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』文藝春秋

(236頁,新書判)

日本企業の生産性はもはや先進国最低レベルにまで落ち込んでいる、と気鋭のエコノミストである著者は指摘する。個人に膨大な仕事の処理を求める組織体質、むやみに長い労働時間、定年延長時でも増えるワンオペ――。こうした就業構造が、生産性を上げるために日々努力している人々の10年後、20年後へのノウハウの継承を難しくすると危惧する。また、個人が生産性の向上を最大化しても、必ずしも組織全体の集団的な生産性を最大化することにはならないと強調。組織の生産性拡大のためには、① 効率化により新しい活動に投資するための余力をつくる ② 投資と試行錯誤を繰り返す ③ 失敗を通じて経験値が高まり、成果を生み出す――という道筋を経ることが王道だという。

請求番号:336.2/naz
書誌番号:JB00112373
ISBN:9784166612024

2.下田 直人著『人が集まる会社 人が逃げ出す会社』講談社

(174頁,新書判)

20年以上、社会保険労務士として数多くの企業の人事労務問題に取り組んできた著者が「人が集まる会社とはどんな会社なんだろう?」との自問に答える。「経験」とそこで得られる「感動」をキーワードに、業績や従業員数では表せないが、顧客も従業員も集まってくる「人の心を温める会社」を紹介する。こうした会社には「フェイス・トゥ・フェイスを重要視する」「多様性の受け入れに柔軟である」「個人を大切にする」などの特徴がある。また、忘れてはならない点として、利益を最優先にしない、との社風がある。利益は追求するものの、もうかることが一番大切な視点だとは考えていない。「利益より大切なものがある」という価値観に引き寄せられる社員は少なくないようだ。

請求番号:336.4/hit
書誌番号:JB00112493
ISBN:9784065143834

3.アンヌ=マリー・ギルマール著
『社会保障制度の高齢化への挑戦』ミネルヴァ書房

(viii+314頁,A5判)

わが国同様、人口の高齢化問題に直面していた欧州諸国では、約10年前から55歳を超えて働くことはまれだった。早期退職制度を大規模に実行した主要国では、こうした措置が引き起こす莫大なコストの問題に対峙し、同時に現役の就労者と年配の非就労者の間に生ずる年金制度のアンバランスにも気づいていた。本書では、欧州連合で実施されている多様な高齢化対策を分析。年配勤労者の早期退職傾向の反転に成功したオランダとフィンランドの2カ国について、年金を改革する以前に40歳以上の者を労働市場に再配置し、スキルと被雇用者能力を維持する積極的介入主義政策を実施することで、55-64歳の年齢層の就業率の引き上げに至った事例を提示している。

請求番号:364/sha
書誌番号:JB00112473
ISBN:9784623084920

4.小島 慶子編『さよなら!ハラスメント』晶文社

(390頁,四六判)

編者が大学教授や小説家、弁護士など第一線で活躍している人々とハラスメントについて考えるヒントを探った対談集だ。最近は企業や官界、スポーツ業界などでも様々なハラスメント問題が噴出しているとの共通認識のもと、「なぜハラスメントが起きるのか」「ハラスメントのない社会にするために何が必要なのか」「自分にできることは何か」などを11人の識者にたずねた。これに対して、「みんなが当事者性をもつというのはすごく大事な一歩」(精神保健福祉士の斉藤章佳氏)、「本当は職場に限らず、『すべてのハラスメントは人権侵害であり、いけないこと』という刑事罰がつくような法律があるといいが、それは今後の議論」(ジャーナリストの白河桃子氏)などの意見が出た。

請求番号:367.21/say
書誌番号:JB00112469
ISBN:9784794970688

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2019年2月~3月の労働図書館受け入れ図書

  1. ピョートル・フェリクス・グジバラ著『がんばらない働き方』青春出版社(238頁,A5判)
  2. 大谷 基道他編『現代日本の公務員人事』第一法規(viii+269頁,A5判)
  3. 清水 克洋他編『団塊の世代の仕事とキャリア』中央大学出版部(vi+327頁,A5判)
  4. 岩田 徹著『「事業を起こす」人になるための本』 生産性出版(243頁,四六判)
  5. 水町 勇一郎他著『どうする?働き方改革法』日本法令(199頁,B5判)
  6. 新谷 眞人編『労働法 第2版』弘文堂(xiii+244頁,A5判)
  7. 安藤 りか著『転職の意味の探求』北大路書房(viii+152頁,A5判)
  8. 佐藤 かおり著『セクハラ・サバイバル』三一書房(189+22頁,四六判)
  9. 文貞實編著『コミュニティ・ユニオン』松籟社(293+46頁,A5判)
  10. 鈴木 則之著『アジア太平洋の労働運動』明石書店(284頁,四六判)