2019年3月の新着図書紹介

1.平康 慶浩著『人生100年時代の「出世」のカラクリ』日本経済新聞出版社

(233頁,新書判)

本書は、1990年代初めのころの日本人の働き方については、学校卒業→就職→引退という「3ステップ型」だったが、人生100年時代と言われる現在では働きながら選択肢を持てる「マルチステージ型」へ大きく変わろうとしている、と指摘。「転職したことがなくて、結婚して子供がいて、いまいる会社での仕事に打ち込んでいて、副業なんて自分とは縁がない」という典型的な3ステップ型の生き方が今後は当たり前ではなくなるという。社会人生活が大きく変化するなか、「出世」の波に乗ることも重要と主張。「いまいる会社が嫌になった」「社会人になってから学び直すのは正しいのか否か」「副業はやるべきか否か」などの選択肢と直面したときに、迷わずに判断するための軸を提示する。

請求番号:159/jin
書誌番号:JB00111979
ISBN:9784532263867

2.小林 美希著『ルポ 中年フリーター』NHK出版

(221頁,新書判)

働き方改革は、労働問題に対する人々の関心を向上させた。また、ここ数年は新規学卒者の雇用状況が改善し、就職状況は売り手市場一色。だが、そうしたなかで取り残されている重要な問題がある。「中年フリーター」の存在だ。アルバイトを3つかけ持ちして休みゼロの43歳男性、17万円で地方医療を支える臨時公務員の37歳男性、「妊娠解雇」でわが子の虐待に走った41歳女性――。非正規雇用で働く35~54歳の人々が増加の一途をたどっている。正社員になれない背景には、不況期に正社員の採用が絞り込まれる事実がある。若い労働力が減っているのに、なぜ安定した職につけないのか。フリーターを救う企業はないのか。豊富な取材から「見えざる貧困」の実態を探った。

請求番号:366.21/rup
書誌番号:JB00112086
ISBN:9784140885666

3.郝仁編『ストする中国』彩流社

(225頁,四六判)

深圳市など中国沿海部に位置する民間企業で労働者の抗議活動が規模、頻度、継続期間とも劇的に増大している。本書は、2010~12年にかけてのストライキの原因、過程、結果さらには波及効果までを労働者のオーラル・ヒストリーとしてまとめたもの。ストに参加した労働者は「ストを決行するときは、団体交渉するかしないかは関係ない。要求を曲げず、勝利できると信じることが重要」「(労組の)中心人物によってストが組織されても、念のため内部で〝予備幹部〟を決めておいたほうがいい。攻撃されても、闘いを続けることができるからだ」と証言する。本書は部数限定の非売品として発表された。統制の厳しい中国において、このような本が出版された事実だけでも驚きだ。

請求番号:366.66/sut
書誌番号:JB00109342
ISBN:9784779124006

4.首藤 若菜著『物流危機は終わらない』岩波書店

(xi+232頁,新書判)

物流業界は極めて労働集約的な産業で、現在約200万人が働いているが、深刻な人手不足などから「物流危機」に直面している。本書はその原因を労働の観点から明らかにする。著者は、物流企業や運送会社、業界団体、労働組合、荷主業者、関係省庁へのインタビュー調査と収集した資料から、ドライバーの働く姿を描写。規制緩和と過当競争、運賃の低下、労働者の権利よりも荷主や利用者の都合が優先される商慣習などの実態を検証し、長時間労働削減や処遇改善が進まない背景を浮き彫りにする。そのうえで、物流危機を克服するための解決策を考察。こうした課題を解決しない限り、いまのように当たり前に安く早くモノが届く生活が送れなくなるかもしれないと警鐘を鳴らす。

請求番号:685.6/but
書誌番号:JB00112082
ISBN:9784004317531

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2018年12月~2019年1月の労働図書館受け入れ図書

  1. 前田 正子著『無子高齢化:(出生数ゼロの恐怖)』岩波書店(xv+219頁,四六判)
  2. 仲 修平著『岐路に立つ自営業:専門職の拡大と行方』勁草書房(iv+214頁,A5判)
  3. ポール・R.ドーアティ他著『HUMAN+MACHINE : 人間+マシン』東洋経済新報社(15+329頁,四六判)
  4. 岸 政彦他著『社会学はどこから来てどこへ行くのか』有斐閣(iii+368頁,四六判)
  5. 橋本 健二著『アンダークラス』筑摩書房(250頁,新書判)
  6. 井手 英策他著『未来の再建:暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』筑摩書房(251頁,新書判)
  7. 牟田 和恵著『ここからセクハラ!』集英社(194頁,四六判)
  8. 荻野 登著『平成「春闘」史:未来の職場のため、歴史に学ぶ』産労総合研究所出版部経営書院(247頁,B5判)
  9. 桂福車他著『過労死落語を知ってますか』新日本出版社(127頁,四六判)
  10. 藤田 晃之編著『キャリア教育』ミネルヴァ書房(vii+194頁,B5判)