2019年1・2月の新着図書紹介

1.玄田 有史編『30代の働く地図』岩波書店

(vii+350+2頁,四六判)

「大学などを卒業して一定の期間が過ぎ、いまや職場の中堅を担っている30代が新たな挑戦や選択をする際に、本当に信頼できる情報はどれだけ届いているのだろうか」――。労働経済学者で東大社会科学研究所教授の編者は、インターネットや書店をたずねればたくさんの情報や本が見つかるが、むしろ情報が多すぎて、どれを信じていいのかわからない面もあると指摘する。一方で、30代は従来の伝統的な日本型雇用システムが揺らいだ時期に就職した世代で、今後の見通しを立てにくい層ともいえる。そこで本書では、学識経験者や労働組合幹部など分野や立場の異なる専門家が30代を念頭に、信頼できるデータや資料などを活用し、これから働くうえでの「道標」を示す。

請求番号:366/san
書誌番号:JB00111663
ISBN:9784000612968

2.岡崎 淳一著『働き方改革のすべて』日本経済新聞出版社

(249頁,四六判)

安倍政権が目指す一億総活躍社会をつくるための最大の柱となった働き方改革。2018年6月に働き方改革関連の8本の法律が成立した。本書は、その実務に携わった著者が改革の狙いや実現の経緯、さらには改革によって何がどう変わるのか、各企業ではどのような対応が必要になるのかなどを明らかにしたものだ。働き方改革について筆者は「一億総活躍社会をつくるための最大のチャレンジであり、単に働き方改革にとどまらず、日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本の働くということに対する考え方に及ぶ、トータルで本格的な改革を目指す」としている。労働時間の上限規制の改正など2019年4月から段階的に施行される改正法のポイントを簡明に解説する。

請求番号:366.11/hat
書誌番号:JB00111726
ISBN:9784532322335

3.中沢 孝夫著『転職のまえに』筑摩書房

(206頁,新書判)

筆者の膨大なヒアリング経験をもとに、現在の転職や退職をめぐる議論を一刀両断する。「不本意な仕事をしている人が、より大きな達成感や幸福感を求めて転職するということは、これまでにも普通に見られた。そのような転職を、日本の労働市場や雇用慣行が妨げているという事実はない」と強調。転職を多角的に考察し、実りの多い転職とは何かを分析する。その過程で、日本が転職しにくい社会ではない点、諸外国も日本と同じ長期雇用が普通である点、技術革新があってもそれほど仕事が変わるわけではない点を解説。また、企業の職場配置と職業訓練を触れたうえで、ノンエリートである普通の労働者の転職事例を明示し、次の一歩を踏み出すための成功へのカギを探る。

請求番号:366.29/ten
書誌番号:JB00111695
ISBN:9784480071699

4.本田 由紀編『文系大学教育は仕事の役に立つのか』ナカニシヤ出版

(iii+202頁,A5判)

本書は、理系に比べて実社会で役に立たないと言われている文系(人文社会科学系)の大学教育が実際に無益なのかについて、様々なデータに基づき検討する。分析では、文系分野が「『役立っている』のではないか」「どのような『役立ち方』なのか」「なぜ『役立たない』と思われているのか」などに焦点を当てて切り込んでいく。具体的には「社会人調査」「大学生パネル調査」「卒業生インタビュー調査」という3つの調査データを駆使し、多様な角度から文系の大学教育が有益ではないのかを掘り下げる。大学教育は学んだ者に何をもたらし、教育のあり方によってどのように左右されるのか、どうしたら有益になるのかの問いが、さらに多角的に追究される必要があると説く。

請求番号:377.04/bun
書誌番号:JB00111731
ISBN:9784779513107

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2018年10月~11月の労働図書館受け入れ図書

  1. 馬奈木 俊介編著『人工知能の経済学』ミネルヴァ書房(viii+385頁,A5判)
  2. 飯島 大邦編『格差と経済政策』中央大学出版部(xiv+263頁,A5判)
  3. マイケル C.ブッシュ他著『世界でいちばん働きがいのある会社』日経BP社(269頁,四六判)
  4. 黒田 健一著『戦後日本の人事労務管理』ミネルヴァ書房(xii+285頁,A5判)
  5. 韓晏元他著『中国のビジネス実務』第一法規(xxii+511頁,A5判)
  6. コンスタンツェ・クルツ他著『無人化と労働の未来』岩波書店(vi+231頁,四六判)
  7. 川東 英子著『ジェンダー労働論』ドメス出版(206頁,A5判)
  8. レイ・ストレイチー著『イギリス女性運動史』みすず書房(374+16頁,A5判)
  9. 中嶋 郁雄著『残業しない教師の時短術』学陽書房(135頁,A5判)
  10. 神田 孝著『事例で分かる外食・小売業の労務戦略』第一法規社(313頁,A5判)