2018年12月の新着図書紹介

1.宮前 忠夫著『あなたは何時間働きますか?』本の泉社

(198頁,四六判)

副題が「ドイツの働き方改革と選択労働時間」となっている。ドイツは、1950年代から長時間労働を見直し、産業別労働組合であるIGメタルが主導して、長い闘争の末、1995年より週35時間労働制が導入された。しかし、それと同時に、経営側は変形労働時間制をはじめとする労働時間の「フレックス化」を強く求め出た。IGメタルが組合員68万人を対象に実施した2017年の調査では、77.5%が週35時間より長く働き、24.4%は週40時間を超えて働いていたことが判明するなど労働者には厳しい内容だったと紹介。本書をめくれば、ドイツがどのように労働時間短縮を実現したかがわかる一方、現在の35時間労働の「パラダイム転換」がいかに起きつつあるかを理解できる。

請求番号:366.32/ana
書誌番号:JB00111201
ISBN:9784780719031

2.石塚 由紀夫著『働く女性 ほんとの格差』日本経済新聞出版社

(253頁,新書判)

政府が女性活躍推進を国の重点施策に定めてから5年。この間、女性の就業率は上昇し、育児休業取得者も増え、女性管理職比率も伸びた。一見すると、女性活躍推進が成果を上げているようだが、女性正社員を対象に実施した調査で、女性活躍が進んだ実感があるか聞くと、「実感あり」と回答したのは2割にも届かなかった。一方で、男性社員のガマンも限界に来ており、「なぜ女性ばかり?」と心中穏やかではない。本書は、女性を登用する目的は、経営戦略上、不可欠だからとの立場を貫く。子育て優遇にうんざりする独身女性、孤立無援なワーキングマザー、非正規社員や専業主婦のジレンマなど、あえて「輝けていない」事例を参考に女性社員活躍のための処方せんを明示。

請求番号:366.38/hat
書誌番号:JB00111238
ISBN:9784532263829

3.渋谷 昌三著『フラリーマンの心理を読む』毎日新聞出版

(190頁,B40判)

「フラリーマン」とは、著者が十数年前に造った言葉。当時は団塊の世代が一斉に定年退職を迎えるころで、家庭を顧みず、仕事一筋だった会社員が、夜の街を理由もなくフラフラする様を描写した。それが最近では、30代、40代のフラリーマンが急増しているという。政府による「働き方改革」「プレミアムフライデー」の導入で、労働時間が短縮され、急に時間ができた男性陣が、その時間をうまく使えずに持て余しているようだ。著者は、外で仕事をしている大義名分の下、家事や育児を妻に任せっきりにしているフラリーマンには女性から反発が出ていると指摘。黄色信号がともり始めた夫婦関係を円満に継続するため、心理学テクニックも用いつつ、具体的な解決方法を示す。

請求番号:367.3/fur
書誌番号:JB00111242
ISBN:9784620325309

4.NHKスペシャル取材班著『睡眠負債』朝日新聞出版

(187頁,新書判)

毎日1、2時間という睡眠不足が借金のように膨らんでいく「睡眠負債」。「キチンと寝ているはずが、仕事中につい、ウトウトしてしまう」「仕事や家事で、思わぬミスをしがち」「原因もなく疲れやすい」――。こうした症状が生じたら要注意だ。睡眠負債は知らず知らずのうちに脳のパフォーマンスを低下させ、仕事の能率を下げるほか、がん細胞の増殖にも加担するとの指摘もある。こうした結果、睡眠時間の不足によるわが国の経済損失が15兆円にのぼるという報告もある。専門家は理想的な睡眠時間としては、質のいい睡眠7時間前後を推奨。「働き方改革」でも重視する「勤務間インターバル」は、こうした睡眠負債による注意力、運動能力の低下を防ぐためにも有効とみる。

請求番号:498.36/sui
書誌番号:JB00111232
ISBN:9784022737632

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2018年9月~10月の労働図書館受け入れ図書

  1. 佐藤 留美著『仕事2.0』幻冬舎(198頁,四六判)
  2. 北村 貴明著『クールワーカーズ』合同フォレスト(206頁,四六判)
  3. 武沢 信行他著『「世界起業」のススメ:『和僑会』を創った男達』カナリアコミュニケーションズ(160頁,四六判)
  4. 管原 洋平著『朝イチのメールが残業を増やす』日本経済新聞出版社(202頁,新書判)
  5. ACE著『チェンジの扉:児童労働に向き合って気づいたこと』集英社(126頁,四六判)
  6. 中原 淳他著『女性の視点で見直す人材育成』ダイヤモンド社(215頁,A5判)
  7. 権丈 善一著『ちょっと気になる政策思想:社会保障と関わる経済学の系譜』勁草書房(xiii+357頁,A5判)
  8. 野村 正實著『「優良企業」でなぜ過労死・過労自殺が?』ミネルヴァ書房(iv+209+4頁,A5判)
  9. 高橋 賢司著『労働法講義 第2版』中央経済社(4+8+413頁,A5判)
  10. 脇坂 明著『女性労働に関する基礎的研究』日本評論社(viii+291頁,A5判)