2018年6月の新着図書紹介

1.波頭 亮著『AIとBIはいかに人間を変えるのか』幻冬舎

(262頁,四六判)

著者は、最近話題に上る人工知能(AI)と最低限所得保障(ベーシック・インカム:BI)がどちらも現在の世の中を根底から覆す可能性を持っていると主張する。AIによる最大のインパクトは「知的労働の価値の暴落」と「感情労働の価値の向上」。AIは経理や単純な情報処理作業と、弁護士や金融トレーダーなど高額報酬を得ている知的プロフェッショナルとの両面から代替されていく一方、医療やカウンセラーなどは代わることが難しいと説く。BIに関しては、従来の社会保障制度と比較して簡素でコストが小さいなど制度的な長所や経済的メリットで優れた点が多いと指摘。「働かざる者、食うべからず」の規範が「働かなくても、食ってよし」にひっくり返る可能性も見通す。

請求番号:007.1/ait
書誌番号:JB00109913
ISBN:9784344032606

2.赤川 学著『少子化問題の社会学』弘文堂

(176頁,四六判)

著者は少子化問題にはタブーが多すぎるとし、「現実はどうなのか?」「今後も続く人口減少社会はどのようになるのか?」を構想することが必要だと呼びかける。さまざまな統計・分析を用いて、実際これまで日本で行われてきた仕事と子育ての両立支援、ワーク・ライフ・バランス、長時間労働の抑制などの働き方改革という対策が効果を上げてきたかを社会学の手法で検証。その結果、これらの少子化対策が「結婚や育児への期待水準を高めるばかりで、子供を増やすことにつながっていない」との見方を示す。出生率の低下に寄与する要因としては、9割が非婚者の増加であるという研究を紹介。少子化対策としての実効性を高める正の循環として「雇用と収入の安定」を指摘する。

請求番号:334.31/sho
書誌番号:JB00109924
ISBN:9784335551901

3.阿部 正浩他編
『多様化する日本人の働き方 非正規・女性・高齢者の活躍の場を探る
慶応義塾大学出版会

(280頁,A5判)

少子高齢化に伴う人手不足が深刻化するなか、本書は「女性と高齢者の労働力にかつてないほど注目が集まっている」と指摘。人口減が進んでも、労働力率が低い女性や高齢者が働けば必要な労働力を確保できるとみる。しかし、日本的雇用慣行のある日本企業で働く際、正規雇用者には長時間労働や画一的で柔軟性の低い勤務体制、転勤を伴う配置転換といった働き方を余儀なくされることが多いため、女性や高齢者の希望する働き方とは一致しにくい。本書では非正規雇用者や女性、高齢者の働き方に焦点を当て、① ダイバーシティ経営は日本の労働市場で実践されているのか ② 実践するためには何を改善すべきなのか――などについて大規模パネルデータを活用して解明。

請求番号:366.21/tay
書誌番号:JB00109772
ISBN:9784766424942

4.玄田 有史著『雇用は契約 雰囲気に負けない働き方』筑摩書房

(256頁,四六判)

著者は「いまや正社員であれ非正社員であれ、雇用は契約という原点を踏まえる必要がある」と強調し、会社を信頼していればOKという時代は終わった、と述べる。本書は契約期間を軸に、多様化が進む現代日本の雇用の状況を分析。そのうえで、例えば雇用契約期間が不明な非正社員は、年収や賃金が低いだけでなく、契約更新の可能性も明らかにされず、雇用保険加入の有無もわからないなど、あらゆる面で不利な労働基準におかれていると指摘する。人手不足が深刻化するなか、従来の期間の定めのない労働者にとどまらず、今後は一定期間のプロジェクト遂行のための高度かつ専門的な業務を担う雇用の普及に期待を寄せるなど働き方の現状の理解し直しを提唱している。

請求番号:366.51/koy
書誌番号:JB00109767
ISBN:9784480016652

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2018年3月~4月の労働図書館受け入れ図書

  1. 内山 力著『ワーキング・イノベーション』産業能率大学出版部(xxiii+428頁,A5判)
  2. 中村 二朗他著『日本の介護』有斐閣(viii+244頁,A5判)
  3. 笹山 尚人著『ブラック職場』光文社(241頁,新書判)
  4. 鄒庭 雲著『派遣労働契約法の試み』日本評論社(xxi+350頁,A5判)
  5. 常盤 正臣著『知的障害者雇用を成功させる8つのポイント』ぶどう社(176頁,A5判)
  6. 森下 之博著『中国賃金決定法の構造』早稲田大学出版部(xii+316頁,A5判)
  7. 山口 俊一著『同一労働同一賃金で、給料の上がる人・下がる人』中央経済社(iv+v+211頁,B6判)
  8. 水町 勇一郎著『「同一労働同一賃金」のすべて』有斐閣(vi+224頁,A5判)
  9. 長尾 博著『多様化する「キャリア」をめぐる心理臨床からのアプローチ』ミネルヴァ書房(ix+200+21頁,B6判)
  10. 野口 功一著『シェアリングエコノミーまるわかり』日本経済新聞出版社(191頁,B40判)