2018年5月の新着図書紹介

1.小池 和男著『企業統治改革の陥穽』日本経済新聞出版社

(244頁,四六判)

コーポレートガバナンス(企業統治)といって思い浮かぶのは、外部からの監視、社外取締役の必要性だが、著者は果たしてそうだろうかと疑問を投げかける。単なる米国式の模ほうではないかとし、社外取締役より重要なメンバーとして各企業の従業員代表の経営への参加に焦点を当てる。とくに弱体化がささやかれ続ける労働組合にこそさまざまな成長力向上の知恵が潜んでいると分析。企業トップの交代を促した事例を参考に、発言・提案する労組がいかに有益であるかを強調する経営改革の書。最後に解雇を好まないのは日本だけではないとし、米国も実は多くが長期雇用だと指摘。解雇されれば他産業に移らざるを得ず、従来の技能が生かせなくなるからだと主張する。

請求番号:335.4/kig
書誌番号:JB00109766
ISBN:9784532134761

2.大久保 幸夫他著『働き方改革 個を活かすマネジメント』日本経済新聞出版社

(278頁,B6判)

官民で取り組みに向けた議論が進んでいる「働き方改革」。安倍内閣が掲げる「第三の矢・構造改革の柱」となる改革といわれているが、全体像はつかみにくいともされる。本書は、企業の管理職向けに新たな時代を迎える人事労務管理の全容に迫るとともに、日常業務遂行上、マネジャーが具体的に何をすればいいのかについてヒントを提供する。改革の源流である「同一労働同一賃金」「長時間労働の是正」などのテーマを平易に解き明かすだけでなく、豊富な事例で働き方改革に伴うマネジメントの変化に対応するためのノウハウも明示する。働き方改革を完成させるのは、ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)政策を取り入れたインクルージョン・マネジメントだと提唱。

請求番号:336.4/hat
書誌番号:JB00109778
ISBN:9784532321765

3.橋本 健二著『新・日本の階級社会』講談社

(305頁,新書判)

本書によれば、これまで日本の現代社会は「資本家階級」「新中間階級」「労働者階級」「旧中間階級」の4階級から成り立っていたが、ここにきてアンダークラス(非正規労働者)という新しい階級の登場により、5階級構造へと転換したという。このうちもっとも下層に位置するのがアンダークラス。現在その数929万人で就業人口の14.9%を占め、女性比率は43.3%、労働時間はフルタイムと同じ水準だが、平均個人年収は186万円と極端に少ない。アンダークラスがこのまま激増すると、社会にとっては不安定要因となるため、著者は問題解決に向けて、①最低賃金の引き上げなど賃金格差の縮小②徴税など所得の再分配③教育機会の平等化――の導入が必要になると強調する。

請求番号:361.8/shi
書誌番号:JB00109770
ISBN:9784062884617

4.国保 祥子著『働く女子のキャリア格差』筑摩書房

(234頁,新書判)

いまや夫婦共働き世帯は過半数を超えたという。女性が育児休業後復帰していかに活躍できるか、活躍の環境をどう整えるかが個人と企業の双方に問われている。しかし、職場では女性と上司の対立関係があり、働く女性の間でも短時間勤務制度や(昇進から遠ざけられる)「マミートラック」にハマることで、キャリア格差が生じていると指摘。こうした格差は、社会の変化に会社の制度や社員の意識が追いつかない場合や組織内の「ミスコミュニケーション」により生まれたと分析する。一方、大卒女子総合職が結婚や出産でいったん離職すると、2億円の生涯年収を失うと警告。長期に仕事を続けたいのであれば、「フルタイムで元の職場に戻る」のが一番のアピールになると説く。

請求番号:366.38/hat
書誌番号:JB00109779
ISBN:9784480071088

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2018年2月~3月の労働図書館受け入れ図書

  1. 加藤 諦三著『働き方が自分の生き方を決める』青春出版社(254頁,B6判)
  2. 竹中 平蔵他著『最強の生産性革命』PHP研究所(284頁,B6判)
  3. 福田 慎一著『21世紀の長期停滞論』平凡社(222頁,新書判)
  4. ジョージ・ボージャス著『移民の政治経済学』白水社(227+12頁,B6判)
  5. 桑原 晃弥著『トヨタだけが知っている早く帰れる働き方』文響社(221頁,B6判)
  6. 日本経済新聞出版社編『実践!テレワークで「働き方改革」』日本経済新聞出版社(111頁,A4変判)
  7. 西尾 太著『働き方が変わる、会社が変わる、人事ポリシー』方丈社(238頁,B6判)
  8. 白根 敦子著『新卒がすぐに辞めない採用方法』産労総合研究所出版部経営書院(212頁,B6判)
  9. 西垣 充著『ミャンマー人材雇用活用実践ガイドブック』日本実業出版社(189頁,A5判)
  10. 名古 道功著『ドイツ労働法の変容』日本評論社(xvi+417頁,A5判)