2017年12月の新着図書紹介

1.ジョーン・Ｃ・ウィリアムズ著
『アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々』集英社

（238頁，四六判）

2016年の米大統領選挙で異端の泡沫候補、ドナルド・トランプが勝利し、世界に衝撃が走った。その原動力になったのは、ホワイト・ワーキング・クラス（白人労働者層）。かつて米製造業を支えたブルーワーカーで、一つの会社でまじめに勤め上げ、家族を養うことを美徳としてきた人々だが、現在は居場所を失い、政府やメディアなどのエリート層からは軽んじられ、大きな怒りと失望を抱えている。本書は、これらの社会階級の分裂が生まれた背景を冷静にたどる。米国では白人労働者層が縮小し続けているが、こうしたミドルクラスの減少で国内的には排外主義的傾向、対外的には自国第一主義的傾向が強まると分析。トランプ大統領の誕生は必然だったといわれる所以だ。

2.檜山 敦著『超高齢社会2.0』平凡社

（203頁，新書判）

高齢者の経験、知識、技能を生かす著者の「高齢者クラウド」の研究は、人口ピラミッドの上下逆転の発想から生まれた。年長者が下の世代をバックアップする社会構造は実現できるのか。そのためには最先端の情報通信技術（ＩＣＴ）によって、高齢者の強みや活力を社会に還元し、活躍の場を創り出すことが前提となる。そこで著者は、ＩＣＴによる高齢者の新しい労働スタイル「モザイク型就労」と高齢者クラウドの実現で、現役世代とシニアが協働することを提案する。具体的なイメージは、インターネットを媒介にネットワーク上の膨大な数のコンピューターを活用し、高齢者が現役世代の仕事をバックアップする構図。いまや研究開発から実用化の段階に入りつつある。

3.ＮＨＫ取材班著『外国人労働者をどう受け入れるか』ＮＨＫ出版

（188頁，新書判）

日本で働く外国人労働者数は、2016年に初めて100万人を突破した。人手不足に苦しむ日本の産業は、いまや外国人労働者なくしては成り立たない状況に陥っている。外国人労働者は、農業や水産加工業、建設業、製造業といった日本人がやりたがらない肉体負担の大きい現場では、単純労働者として機能している。様々なトラブルも増大し、“駆け込み寺”としての「シェルター」が設置されている。その反面、日本人の雇用を脅かすケースもみられるようになった。本書では、こうした外国人労働者の置かれた厳しい実態を踏まえ、識者や企業への取材を織り交ぜつつ、日本人と外国人たちとが「共生」する未来像をめざす事例を紹介するなど、多角的な視点でまとめている。

4.アレックス・スジョン－キム・パン著
『シリコンバレー式　よい休息』日経ＢＰ社

（349頁，四六判）

著者によれば、多くの人は、いかに働くかには興味があるが、いかに休むかについてはあまり考えようとしないという。一方、休息に関する本は、労働の質や能力を高めることよりも、労働から逃げることに焦点を置こうとすると指摘。問題なのは、休息とは単に働かないことと思い込み、休息それ自体に独立した価値を認めようとしないことだと訴える。労働と休息は対立するものではなく、むしろ生活の波の異なるポイントと見なすことができると解説。本書では創造性を刺激するため、①本当に適度な1日の労働時間は3～4時間②できる人は「朝活」に全力を注ぐ③休息するために歩く④あえて仕事を中断し、ひらめきを待つ――などで「戦略的休息」を取るよう提唱する。