2015年12月の図書紹介(2015年11月受け入れ図書)

1.細川あつし著『コーオウンド・ビジネス』築地書館(x+212頁,四六判)

 普通のビジネスより利益も成長率も高くて、社員みんなもハッピー。会社の持続性も良く、創業者の事業承継戦略としても有効性が高い。こんなビジネス・モデルが、社員がその会社の株主になる「コーオウンド・ビジネス」である。会社が利益を上げるほど社員たちも潤うだけではなく、オーナー意識が、仕事にまい進し、お互いを助け合う共通意識も醸成してくれる。米国では、すでに民間雇用の10%をコーオウンド会社が支えているという。終身雇用型にかげりのみえた日本は、一気に株主価値極大化に舵を切ったため、このモデルは普及していないが、著者は人々が幸せに携われる事業を模索する。多くの事例を紹介する、従業員所有企業(ESOP)についての研究書。

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請求記号:335.4/koo

書誌番号:JB00105966

ISBN:9784806715023

2.ラズロ・ボック著『ワーク・ルールズ!』東洋経済新報社(558頁,四六判)

 「最も働きたい会社」として何度も首位に選ばれるグーグルの人事担当上級副社長を務める著者が、同社の採用や業績評価、学習組織の構築、報酬決定方法などを行動経済学や心理学のレンズを通して紹介する。入社当時は6千人だった社員が6万人に増えていく過程で、著者は人事システムを設計。それでも社員一人ひとりに自由裁量権を与える経営方針に変わりはない。同社の人事プログラムは、効率性の向上、コミュニティづくり、イノベーションに基づいているが、社員本人が死亡した場合、通常の死亡手当に加え、未行使のストックオプションに相当する金額を支払うほか、死後十年間、給与の50%を残されたパートナーに支給するなど、ユニークな施策を展開する。

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請求記号:336.4/wak

書誌番号:JB00105984

ISBN:9784492533659

3.河西宏祐著『電産型賃金の思想』平原社(260頁,四六判)

 第二次大戦直後に登場し、その後の日本の賃金制度に多大な影響を与える仕組みをつくった電力産業の産業別労働組合、電産。本書は、組合員約200人にインタビュー調査をするなど長年、電産を研究してきた著者が、若い一般読者を念頭に、電産労働運動の志を伝えるためにつづった。電産型賃金は「社会主義的給与体制」を組合員の間の「平等原理」により実現しようとする一方、賃金水準を「最低生活費」にまで高めるように取り組んだものと指摘。また、男女同一労働に対する同一賃金制を実現した、との見方を示している。電産の青春群像の「未熟にして高貴な輝きの瞬間」を描写した未発表原稿を含むとともに、「最終講義・労働調査40年の経験から」も収録している。

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請求記号:366.629/den

書誌番号:JB00106086

ISBN:9784938391584

4.小杉礼子他編著『下層化する女性たち』勁草書房(xv+266+vi頁,四六判)

 本書は、グローバル化に伴う労働市場の流動化やあらゆる分野での規制緩和などを背景に、若い女性の生活が脆弱になり、低賃金の不安定就業を続けざるをえない貧困女性の増加現象に焦点を当てる。貧困化する女性が増加していく社会は、①貧困化する母子世帯の増加をもたらし、子どもに生涯にわたる負の影響を及ぼす②家族などの身内を持てない低所得で社会的にも孤立する中年期・高齢期女性の増加につながると予測される、と指摘。日本学術会議社会学委員会とJILPT共催のシンポジウムをもとに書き下ろされた学際的な本書は、労働と家庭から排除された貧困女性を直視、政策を提言する。編者の一人は、限定正社員に可能性を見出し、給付付き税額控除に期待。

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請求記号:367.21/kas

書誌番号:JB00105821

ISBN:9784326653942

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2015年9月-2015年10月に労働図書館受け入れ

  1. 山形浩生監修『第三の産業革命:経済と労働の変化』KADOKAWA(275頁,A5判)
  2. 牧民雄著『日本で初めて労働組合をつくった男:評伝・城常太郎』同時代社(322頁,A5判)
  3. 中田亨著『理系社員のトリセツ』筑摩書房(204頁,新書判)
  4. リード・ホフマン他著『Alliance(アライアンス):人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』ダイヤモンド社(201頁,A5判)
  5. アンソニー・ギデンズ著『社会の構成』勁草書房(v+461頁,A5判)
  6. 久本憲夫著『日本の社会政策』ナカニシヤ出版(iv+361頁,A5判)
  7. 河本毅著『裁判例にみる解雇法理』日本法令(1,503頁,A5判)
  8. 北岡孝義著『ジェネレーションフリーの社会:日本人は何歳まで働くべきか』CCCメディアハウス(255頁,四六判)
  9. 中嶌剛著『とりあえず志向とキャリア形成』日本評論社(xiv+186頁,A5判)
  10. 杉田真衣著『高卒女性の12年:不安定な労働、ゆるやかなつながり』大月書店(239頁,A5判)