2015年11月の図書紹介(2015年10月受け入れ図書)

1.武井繁著『潜在ワーカーが日本を豊かにする』ダイヤモンド社(214頁,四六判)

 労働経済学では、日本が人手不足に陥った場合、「女・老・外」の労働力を有効活用すべきだと指摘されてきた。すなわち、「女性(または主婦)」「高齢者」「外国人労働者」である。本書は、こうした労働者を「潜在ワーカー」と名づけ、彼らの活躍レベルや将来性、ポテンシャルの高さを力説。短時間勤務制度のあるアパレル会社で仕事と育児を両立させる主婦や、「葉っぱビジネス」を生き生きと手がけるシニアワーカー、人材紹介会社の国際人材グループで働く外国人スタッフなどを紹介。さらに、柔軟な雇用機会を提供する企業の事例も取り上げ、人口減少による労働力不足時代において、潜在ワーカーの多様で柔軟な働き方が、日本に豊かさをもたらす救世主となると主張。

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請求記号:366.21/sen

書誌番号:JB00105972

ISBN:9784478083727

2.マーク・L・サビカス著『サビカス キャリア・カウンセリング理論』福村出版(221頁,A5判)

 現代キャリア・カウンセリング研究・教育・実践の第一人者である著者が、キャリア形成・ライフデザインを展望。コンピューター化やグローバル化の結果として現在、会社の規模が縮小、「就職や転職が、会社より個人に依存する度合いが大きくなっている」との見方を提示。人生設計とキャリア構成のためのカウンセリング方法は、個人の特殊性と価値に満たされた人生を選択する方法に焦点があると考察する。本書は、アメリカ心理学会企画「心理療法理論シリーズ」24巻の1冊。21世紀の世界経済の急激な変化の下で、キャリア理論は標準化されたコースから、多様で個別化されたものに転換していることを示し、探索・意思決定から試行・実行に変える重要性を説く。

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請求記号:366.29/sab

書誌番号:JB00105828

ISBN:9784571240553

3.岩田正美他編著『なぜ女性は仕事を辞めるのか』青弓社(233頁,四六判)

 日本女子大学現代女性キャリア研究所が2011年11月に25~49歳の女性5155人を対象にしたインターネットによるアンケート調査を基に、高学歴女性のキャリア形成や就業意識などについて分析している。日本の女性の就業の特徴としては、結婚や育児を理由に仕事をやめて、その後再び就職する「M字型カーブ」を描くとされているが、調査結果により、①正規雇用者で初職を辞めていないのはわずか12.6%②女性の職業中断は第一子の妊娠・出産より前である、ことなどを明らかにする。また、末子年齢による就労意識や資格の有用性いかんなども追究。さらに、女性がキャリアを追求していこうとする意欲を持ち続けるため、やり直しのできる社会の出現を展望する。

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請求記号:366.38/naz

書誌番号:JB00105562

ISBN:9784787233905

4.小池和男著『戦後労働史からみた賃金』東洋経済新報社(xi+191頁,A5判)

 労働経済学の大家が日本の戦後労働史からみた賃金を分析。日本の企業では伝統的に、標準化が難しく、担当者が工夫してこなす作業に関しても、ブルーカラーがその一部を担当する。このため、日本のブルーカラーの賃金は欧米のホワイトカラーにやや似てくるという(著者提唱の「ブルーカラーのホワイトカラー化仮説」)。さらに著者は「海外日本企業が勝ち抜くためには、その地の労働者が納得する賃金方式でなければ無理である」と強調。海外企業活動で得た収益の還流で、日本の雇用と暮らしを守ると力説。米労働統計局(BLS)の1963年調査や金子義雄の賃金論を援用するとともに、職務給や成果主義を反面教師として、海外日本企業が生き残る賃金方式を追求。

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請求記号:366.42/sen

書誌番号:JB00105834

ISBN:9784915947605

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2015年8月-2015年9月に労働図書館受け入れ

  1. 船橋洋一編著『検証日本の「失われた20年」』東洋経済新報社(vii+477頁,A5判)
  2. 五十嵐泰正他編著『「グローバル人材」をめぐる政策と現実』明石書店(251頁,A5判)
  3. グレゴリー・クラーク著『格差の世界経済史』日経BP社(517頁,A5判)
  4. 横山寛和著『公的年金の持続可能性分析』日本評論社(xii+235頁,A5判)
  5. 相原正雄著『読んで楽しむ“働くこと”』文芸社(219頁,A5判)
  6. 小山朝子著『ここまでできる働きざかりの介護』旬報社(85頁,A5判)
  7. 筒井淳也著『仕事と家族』中央公論新社(v+209頁,新書判)
  8. 出井智将著『派遣新時代』幻冬舎メディアコンサルティング(159頁,新書判)
  9. 早川佐知子著『アメリカの看護師と派遣労働』渓水社(vi+372頁,A5判)
  10. 寺尾沙穂著『原発労働者』講談社(203頁,新書判)