2015年8月の図書紹介(2015年7月受け入れ図書)

1.広田照幸著『教育は何をなすべきか』岩波書店(vi+359頁,四六判)

 著者は、「第Ⅰ部 能力・職業・市民」では、雇用の空洞化や民主主義の機能不全が目立つ現代日本において、公教育の改革方向を、①教育のなかの能力観の問題②職業を入手するための教育③市民を形成する公教育の役割、の3つの面から取り上げて検討。公教育改革が大きく転換したのは、1980年代半ばの臨時教育審議会がきっかけであり、それまでは機会の拡充などの「平等化」に重点が置かれていたが、臨教審以降は「差異化」が基調になっていったという。「社会が大きく変容しているこの時代に、教育は何をなすべきか」を追究してきた論文集である。教育史の研究者として、「第Ⅱ部 歴史と現在との往還」には、大正期、戦前、戦後、ポスト震災についての論文を収録。

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請求記号:370/kyo

書誌番号:JB00105031

ISBN:9784000610377

2.今野晴貴著『ブラック企業2』文藝春秋(283頁,新書判)

 ベストセラーとなった前著の続編。ブラック企業の労務管理には、①大量採用②選別③使いつぶし、の3段階があると分析。被害にあう社員は「企業の誘い文句に意義を感じた」「労働条件がわからないまま入社した」などが原因とされる。本書では、ブラック企業が社員を使いつぶす事例を一部企業名もあげて紹介。「無限の要求」を突きつけられ、「激務で泡を吹いて倒れた社員」や「死ぬまで辞められない社員」もいたと指摘。後半では、なぜブラック企業を取り締まれないかを取り上げ、とくに労使交渉が企業別交渉一本である点が企業の利害に社員を一体化させていると強調する。労働市場の情報センターの設立案など、現場の事実に基づくブラック企業への対応策も提言。

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請求記号:335.21/bur/2

書誌番号:JB00105071

ISBN:9784166610037

3.大内伸哉著『労働時間制度改革』中央経済社(iv+ix+226頁,四六判)

 本書の目的は、労働基準法の基本的知識を解説することのほか、法律上の問題を考えるための情報提供、外国制度の紹介、改革案の提示、と盛り沢山。著者によれば、36協定と割増賃金を軸とする日本の労働時間制度は失敗に終わったという。それを認めるところから改革論議は始めるべきだと強調。なぜ労働時間を規制する必要があるのか、規制する場合には適切な手法は何か。残業代の支払いを法律で義務づける仕組みにフィットしない労働者が増えている現在、労働時間規制を再構築するためには、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入は必然だと主張。日本経済の競争力を維持し、労働者にも企業にも望ましい雇用社会を生み出すために必要な改革の一環と位置づける。

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請求記号:366.32/rod

書誌番号:JB00104952

ISBN:9784502130014

4.岸本裕紀子著『定年女子』集英社(207頁,四六判)

 安倍政権は、指導的役割に就く女性の割合を今後増やしていく方針だが、著者は、女性の管理職が増えるにつれて、彼女たちの定年後の立場や処遇がどうなるかはまだわからないと考察。社会全体としては、成果主義に基づく組織の若返りという潮流がある一方、高齢者の定年は65歳という流れもあり、年金の支給開始年齢が延長されれば、もっと先まで働く必要がある。このため、自分が満足する形で長く働き続けたいなら、40代くらいから自分の将来の働き方を準備しなければならないと主張。数十人の女性への取材からの発見は、定年後も何らかの形態で働き続ける女性の多さである。この結果、60代の仕事事情と仕事をしない生活の2部構成で定年女子をカバーしている。

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請求記号:366.38/tei

書誌番号:JB00105065

ISBN:9784087815597

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2015年5月-2015年6月に労働図書館受け入れ

  1. 康本アレックス著『ビジネスに必要なたった1つのこと』幻冬舎メディアコンサルティング(189頁,四六判)
  2. 藤沢烈著『社会のために働く』講談社(212頁,四六判)
  3. 須田敏子編『「日本型」戦略の変化』東洋経済新報社(xviii+277頁,A5判)
  4. 山口理栄他著『子育て社員を活かすコミュニケーション』労働調査会(186頁,四六判)
  5. 倉重公太朗他編『最先端の議論に基づく人事労務担当者のための書式・規定例』日本法令(456頁,A5判)
  6. 加茂善仁著『最新判例から学ぶメンタルヘルス問題とその対応策Q&A』労働開発研究会(xiv+253頁,A5判)
  7. 小口好昭編著『会社と社会』中央大学出版部(xv+413頁,A5判)
  8. 鷲谷徹編著『変化の中の国民生活と社会政策の課題』中央大学出版部(xii+331頁,A5判)
  9. 野川忍他編著『変貌する雇用・就労モデルと労働法の課題』商事法務(xxiv+483頁,A5判)
  10. 佐藤一麿著『日本における労働移動に関する実証分析』三菱経済研究所(121頁,A5判)
  11. 西成田豊著『近代日本の労務供給請負業』ミネルヴァ書房(v+367+13頁,A5判)
  12. 小林徹著『労働市場のミスマッチ問題に対する経済政策の検討』三菱経済研究所(111頁,A5判)
  13. 二見武志著『障がい者雇用の教科書』太陽出版(198頁,A5判)
  14. 水野操著『あと20年でなくなる50の仕事』青春出版社(221頁,新書判)
  15. 君嶋護男他著『セクハラ・パワハラ読本』日本生産性本部生産性労働情報センター(189頁,A5判)
  16. 安達巧編著『パワハラ裁判の教訓』ふくろう出版(vi+565頁,A5判)
  17. 溝上憲文著『2016年残業代がゼロになる』光文社(285頁,四六判)
  18. 小林敦子著『ジェンダー・ハラスメントに関する心理学的研究』風間書房(v+188頁,A5判)
  19. 大和田敢太著『フランスにおける労働組合の代表権能の動揺と再生』滋賀大学経済学部(xiii+253頁,A5判)
  20. 中沢彰吾著『中高年ブラック派遣』講談社(248頁,新書判)
  21. 小川慎一他著『産業・労働社会学』有斐閣(xv+339頁,四六判)
  22. 内藤和美他編著『男女共同参画政策』晃洋書房(vi+248頁,A5判)
  23. 岩上真珠編『国際比較・若者のキャリア』新曜社(vii+252頁,A5判)
  24. 原伸子他編『現代社会と子どもの貧困』大月書店(316+v頁,A5判)
  25. 川上憲人他編『社会と健康』東京大学出版(ix+326頁,A5判)
  26. 岩瀬達哉著『パナソニック人事抗争史』講談社(231頁,四六判)